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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科37巻1号

1983年01月発行

文献概要

産婦人科医療--明日への展開 生殖のコントロール--不妊治療への展望

新しい精子機能テストと不妊

著者: 星和彦1 斎藤晃1 鈴木雅洲1

所属機関: 1東北大学医学部産科学婦人科学教室

ページ範囲:P.19 - P.22

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 男性の受精能力は,精液検査によって検討されるのが一般的である。すなわち精液中の精子数・精子運動率・奇形精子の有無およびその存在率などが男性不妊症の診断に用いられている。表1〜3は,Monash University,University of Southern Californiaで用いられている正常精液検査値の基準,およびわが国で引用されることの多いFarris1)の見解を示したものである。精液や精子の所見がこれらのいずれかの基準を満たしていないときは妊孕力に乏しいのは事実であるが,これらの要素は精液や精子の性状を表現しているにすぎず,直接受精能力を示すか否かについては疑問視されている。事実Mac—Leod2)の報告によると精子数が20×106/ml以下でも5%に妊娠成立例が認められており,逆に精液所見が全て基準値を満たしているにもかかわらず不妊であるヶースは日常臨床においてよく遭遇することである。
 精子の受精能力をみる最も確実な方法は,in vivoあるいはin vitroでその精子がヒト卵を受精させ得るか否かを調べることである。オーストラリアのMonash Uni-versityでは一部の原因不明不妊夫婦について腹腔鏡下に採取された複数個の成熟ヒト卵(過排卵操作による)を用いて,夫の精子およびdonorの精子との体外受精を行って卵機能・精子機能を実際に検討している。しかし一般の医療施設で新鮮なヒト成熟卵を得ることは極めて困難であり社会的問題も大きく,これを用いなければならないとすれば随時行う一般的な検査法としては適切でない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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