薬の臨床
産婦人科領域の各種抑うつ患者に対するアモキサンの効果
著者:
青木孝允1
堀好博2
杉山正子2
浅井光興3
成田収3
所属機関:
1愛知県総合保健センター婦人科
2名城病院産婦人科
3名古屋大学分院産婦人科
ページ範囲:P.745 - P.748
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近年Masked Depression1〜5)の概念について理解が進むにつれ,臨床各科にわたって広く「うつ病ないしうつ状態」が存在することが知られるようになった。産婦人科領域に於いても,産後のいわゆる「血の道症」,更年期障害,子宮剔除手術や人工妊娠中絶後にこのような抑うつ症状をしばしば認めることができる。こうした患者の治療に際し,訴えの表面的な事象にのみとらわれて,その根底に存在する抑うつ状態を見逃した場合には必然的に治療は難渋し,時として患者の家庭生活の破たんを招いたり,本人を自殺に追い込んだりする危険性すら内蔵している。このような失敗を避けるためには速やかに精神科医の援助を求めることが大切であるが,一方産婦人科領域で経験する抑うつ患者の多くは比較的軽症であり,産婦人科医が直接治療に当たった方が患者にとって有益である場合も少なくない。今回我々は,三環系抗うつ剤の1つで,これまでの同種抗うつ剤に比べて速効性旦つ抗コリン様作用が少ないとされるアモキサン(一般名アモキサピン)カプセル25mg (日本レダリー社)を産婦人科領域の各種抑うつ患者に使用する機会を得たので,治療成績と共にその概要を報告する。なおアモキサンは三環系ではあるが,化学構造上dibenzazepine(imi-pramineなど)やdibenzocycloheptene(amitriptylineなど)と異なり,neurolepticであるloxapineに近いが,薬理作用はimipramineに類似している(図1)。