グラフ 胎児奇形の映像診断
嚢胞性二分脊椎
著者:
久保隆彦1
橋本雅1
相良祐輔1
武田佳彦1
所属機関:
1高知医科大学産科婦人科学教室
ページ範囲:P.834 - P.835
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二分脊椎は,頭側神経溝の閉鎖不全のため,脊椎間の背側を形成する椎弓の形成不全をみる先天性疾患群である。神経組織が椎管腔外に脱出するか否かにて,嚢胞性二分脊椎と潜在性二分脊椎に分類される。発生頻度は諸家の報告によれば,1,000人出生に0.2〜4人であり1),欧米に比し我が国の発生率は低い。発生部位は,腰部,腰仙椎移行部が最も多いが2),脊椎のいずれの部位にも発生しうる。嚢胞性二分脊椎では,90%以上にArnold—Chiari malformationを随伴し3),先天性水頭症を呈する。児の予後はこの水頭症の程度にかかわり,V-P shuntの可否による2,4)。被膜の破損による感染により容易に髄膜炎となるため,生後24時間以内に閉鎖術を施行することが必要である4,5)。この2点より,胎児期に二分脊椎,水頭症の程度を診断し,児娩出方法,生直後の治療を計ることが,児の長期予後,機能保全に重要である。妊娠後期に超音波にて二分脊椎と診断した症例を呈示する。
症例は,妊娠38週,32歳高年初産,骨盤位のため,超音波検査を施行,先天性水頭症を認めた。さらにオクトソン検査にて,二分脊椎と診断した。被膜の破損による感染を回避するため,帝王切開術にて児を娩出した。児は,超音波診断同様,腰仙椎部の嚢胞性二分脊椎を有したため,ただちに脊髄再建術,皮膚閉鎖術を施行した。CT検査にて,水頭症,充分な脳実質の残存を確認し,日齢1日にV-P shunt術を施行した。早期治療のために,児は1歳時まで,下肢運動性も良好で,神経学的な発達も損なわれていない。