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産婦人科医療--明日への展開 卵巣がんの治療をめぐる諸問題
卵巣がんの制癌剤感受性テスト
著者: 泉陸一1 長阪恒樹1 川端正清1 新居隆1
所属機関: 1富山医科薬科大学産科婦人科学教室
ページ範囲:P.481 - P.486
文献購入ページに移動卵巣悪性腫瘍に対する治療法の主体をなすものは,現在のところ手術療法と化学療法であり,進展様式からみて進行癌のみでなくいわゆる早期癌にも化学療法が適応と考えられている。しかしその治療効果はなおはなはだ不十分であることは他の多くの悪性腫瘍におけるのと同様である。その原因には制癌剤の面からは使用の対象となる制癌剤の種類がまだまだ不足していること,各制癌剤での最適投与法が確立していないことなどであり,腫瘍細胞の面からはheterogeneity,薬剤耐性などさらに複雑な要因がからんでくることは周知のとおりである。なかでも,感染症に対する化学療法と同様に,対象となる症例の腫瘍に感受性の高い制癌剤を選択して使用しない限り確実な治療効果を期待できないばかりか,ほとんどの制癌剤は抗菌化学療法剤と異なって,有効量と中毒量の差が少ない(化学療法係数が大きい)ため,感受性の低い制癌剤を使用するとadverse effectのみを生ずるという点が最も根本的な原因となっている。しかし,この難問には今まで多数の基礎的・臨床的研究が挑戦しているが,なお解決には程遠いのが現状である。同一臓器由来の腫瘍あるいは組織学的に同型の腫瘍に対する各種制癌剤の臨床成績から経験的に感受性薬剤を選定する方法・たとえば絨毛癌に対するMTX,Actinomycin D,卵巣のemgryonal carcinomaに対するVAC療法など,によって選択されたり,卵巣類内膜癌ではsteroid recep-tor assayにより黄体ホルモン剤が選択されることなどが現在,実地臨床で行われている方法である。しかしここでいう感受性テストとは形態的に同一の分類に属する腫瘍であっても個々の腫瘍で腫瘍細胞に試験的に各種制癌剤を作用させて,抗腫瘍性の強弱を判定し,それによって臨床での薬剤有効性を個別的に予知しようとする方法である。これには表1のような方法が検討されている。
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