臨床婦人科産科38巻12号

1984年12月発行

グラフ 胎児奇形の映像診断

Unilateral multicystic kidneyの出生前診断

著者： 堀栄一¹ 土岐尚之¹ 原賢治¹ 下川浩¹ 小柳孝司¹ 中野仁雄¹

所属機関： ¹九州大学医学部婦人科学産科学教室

ページ範囲：P.874 - P.875

　偏側性多嚢腎（Unilateral multicystic kidney）は稀な疾患であり，本邦では岸川らが1978年までに報告された本症症例をまとめたところ，僅か67例を認めるにすぎないと述べている^1）。また本症に対しては，従来より種種の診断名が用いられてきたが，近年においては，偏側性で腎は実質を欠き，種々の大きさの嚢胞の集塊で置換され，さらにしばしば尿管の欠如または閉鎖を随伴している場合に本症との診断名が付されるようになってきている^2,3）。
　一方，本症の病因に関しては，胎生早期における後腎の形成が広汎に障害されたgeneral dysplasiaと考えられている。なお，本症の予後は対側の腎機能に左右される。ここでは，超音波断層法によって出生前に診断できた本症の1例を報告する。