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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科38巻2号

1984年02月発行

文献概要

明日への展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 卵管

卵管のマイクロサージェリーとその限界

著者: 長田尚夫1 松浦真彦1 赤嶺和成1 津端捷夫1 高木繁夫1

所属機関: 1日本大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.102 - P.110

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 最近,卵管性不妊症の治療法としてIn vitro fertiliza—tion & embryo transfer (以下IVF・ETと略す)が脚光を浴びてきている。しかし,それの成功率は低く,種々の問題もあり,必ずしも理想的治療手段であるとはいい難い。一方,卵管性不妊に対しては,マイクロサージェリー(以下MSと略す。図1)を応用することによって卵管形成術が著しく進歩し,その治療成績も非常に改善されてきている。すなわち現時点においては前者の成功率が2〜15%であるのに対し,後者は約25〜35%と明らかに優れている。しかし,卵管の炎症後の通過障害に対しては,MSによって仮に卵管の疎通性が回復しえたとしても,その後の妊娠率に多くの期待が持ちえないとされていることもまた事実である。したがって,手術療法の適応に対しては,十分なる術前検査を行ったうえでその治療方針を決定する必要がある。我々の卵管性不妊症に対する治療方針としては,あくまで自然妊娠を目的とするMSであり,またこれによる卵管形成術を行うことが主体であると考えている。そしてこの種の手術療法によってもなお妊娠に至らなかった症例においてのみ最後の治療手段としてIVF & ETを行うようにしている(図2)。そこで本稿では,我々が日常行っている卵管性不妊の術前検査法,MSによる手術術式および最近我々が経験したMS後の妊娠例の術中写真を紹介し,卵管のMSによる機能回復術の限界についてふれてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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