明日への展開 ADVANCED TECHNOLOGY
II.生殖・内分泌
モノクローナル抗体の応用
著者:
香山浩二1
川島千加子1
礒島晋三1
所属機関:
1兵庫医科大学産科婦人科学教室
ページ範囲:P.259 - P.263
文献購入ページに移動
抗体はその対応抗原との反応性において非常に特異性が高いので,従来から生殖現象や内分泌動態の解明に頻用されてきたが,通常の方法で精子や卵子を動物に免疫して作製した抗血清中にはいろいろな抗原に対する多数の抗体が含まれるため,詳細な受精現象の解明には不適当であった。また,たとえ単一抗原で免疫して作製した抗血清であっても,その中には異なった抗原決定基(エピトープ)に対する特異性の異なった複数の抗体が含まれるため,用いた抗血清の種類によって実験結果が異なってくることがあった。単一の抗原決定基に対する単一の抗体を作ることは長い間免疫学者の夢であったが,ついに1975年イギリスのKöhlerとMilstein1)がヒツジ赤血球で免疫したマウス脾細胞とマウスミエローマ株化細胞を細胞融合させヒツジ赤血球に対する抗体産生ハイブリドーマの確立に成功したことによって,その夢が現実のものとなってきた。
ある抗原に反応して抗体産生細胞へと分化した1個のプラズマ細泡は1つの抗原決定基のみを認識する1種類の抗体しか作らず,これを単一クローン(モノクロナール)抗体と呼ぶ。モノクロナール抗体(Moab)を得るためには1個の抗体産生プラズマ細胞を分離して培養増殖させる必要があるが,非腫瘍性プラズマ細胞をin vitroで培養維持することは出来ない。