明日への展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 子宮
Ⅱ.内膜
子宮内膜の生理—月経周期における子宮内膜細胞内代謝酵素活性の変動とその生理的意義
著者:
前山昌男1
宮崎康二1
所属機関:
1熊本大学医学部産科婦人科学教室
ページ範囲:P.485 - P.492
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1978年のSteptoeとEdwardsによる体外受精卵での最初のベビー誕生以来,既に約500名にも及ぶ体外受精(in vitro fertilization)卵のベビーが出生し,1984年にはオーストラリヤで,提供卵子を夫の精子で体外受精させたベビーも誕生したと報告されている。これらの事実は,卵管の欠如や閉塞による不妊婦人の治療法としては,医学的,社会的,倫理的並びに法律的な問題を別として,画期的なものであろう.しかしながら,受精卵の着床,胎児の成育,出生に至るnatural internal envi—ronmentとしての子宮の機能の重要性は,いささかも変わるものではない。子宮は,子宮内膜と子宮筋層から構成されており,妊娠—分娩の全期間にわたり生理的に機能しているが,子宮内膜は,受精卵の着床期に,子宮筋層は,胎児の分娩期に重要な役割を演じている。一方,子宮の各組織は,エストロゲン,プロゲステロンの影響下に直接的あるいは間接的にその機能が修飾されている。
本稿では,生体内でリン酸化反応を通じ種々の酵素活性を調節しているprotein kinase,エネルギー源としてのg1ycogen量を制御しているglycogen代謝関連酵素および種々のsteroid sensitive productsがエストロゲソ,プロゲステロンの影響下にいかに変動し,それがどのような生理的意義を持つかという問題について最近の報告や著者らの成績などを紹介する。