icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科39巻2号

1985年02月発行

ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 流産

自然流産の病態

著者: 竹内正七1

所属機関: 1新潟大学医学部産婦人科学教室

ページ範囲:P.67 - P.70

文献概要

胎芽とトロホブラスト
 自然流産の病態は近時急速に明らかになり,今や日常臨床において,この正しい理解は欠かせないものとなった。従来,尿中HCGのみを測定して,5,000IU/L以下になったら流産の可能性が高いという立場から自然流産を取扱っていた頃は,臨床の事実と必ずしも一致しないことが多かった。しかし,超音波断層法の技術の導入と,その性能の向上により妊娠初期の胎芽(胚) embryoの生死を判定できるようになって,自然流産の病態が臨床レベルでかなり解明できるようになった。
 勿論,自然流産の病態はHertigら(1940)以来の病理学的研究や,Carr (1971)らやBoūéら(1975)以来の染色体学的研究により,かなり明らかにされてきたが,いずれも排出された流産物を材料としての研究であるため,どのような過程で流産に到るのかは推定にとどまらざるをえなかった。この点,超音波断層法やHCGの測定法の進歩によって,臨床レベルで流産にいたる過程を追究された知見と従来の基礎的研究により推定されていたことが,非常に良く一致することが明らかとなった。すなわち,自然流産の多くにおいて,かなり早い時期に胎芽の死亡が起こるが,トロホブラストの機能は直ちに低下せず,数週の後HCGが急速に低下して自然流産に到るものであることが明らかになった。逆に,胎芽の生存が確認されたものからの流産は極めて少ないことも明らかとなった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら