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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科39巻2号

1985年02月発行

ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 流産

流産と着床環境

著者: 富永敏朗1 麻生武志1 小辻文和1 紙谷尚之1 立山一郎1 堂庭信男1 後藤健次1 金嶋光夫1

所属機関: 1福井医科大学産科婦人科学教室

ページ範囲:P.79 - P.82

文献概要

 受精卵が分割を進め桑実胚から胞胚に達し,これが子宮内膜に着床して妊娠が成立する。この妊娠成立に至る過程では,この時期を過ぎてから臨床的に流産と診断される妊娠の中絶よりもはるかに高い頻度で卵の死滅が起こっているといわれている。その原因として卵そのものの異常が多いと考えられており,これは異常卵を排除する自然淘汰現象であるとも受けとれる。しかし広い意味での着床環境の異常によって妊娠の成立が阻害される場合も多いのではないかと考えられる。この場合にはその病態の機序が解明されれば医学的な治療によって妊娠の成立さらにその維持をはかることが可能になるであろう。
 さて着床という現象は妊娠成立の最初のきわめて重要な生理的過程であるにもかかわらず不明な点が多く残されている。ヒトの場合着床とは,透明帯を失った胞胚が子宮腔内の一定の部位に位置を定めたのち内膜上皮に接着し胞胚のトロホブラストが内膜上皮を慣通して間質に侵入しその浸潤の進むにつれ卵全体が内膜に埋没し内膜上皮欠損部が完全に修復されるまでの一連の過程をいい,およそ受精後6日目から始まり12日目頃に完了するものと考えられている。この間に胞胚の内細胞塊は胚へと分化し内膜間質にはトロホブラストの浸潤による原始子宮胎盤循環系形成と脱落膜反応がみられる。このように着床は胞胚と子宮内膜との直接の相互作用が中心となって進行するが,着床開始に至るまでの過程もまた着床を分析する上で重要である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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