指標
卵胞内における卵の成熟抑制機序に関する知見
著者:
鈴木秋悦1
倉沢滋明1
窪川優子1
所属機関:
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
ページ範囲:P.209 - P.215
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胎児期に卵巣が形成されると,卵祖細胞は有糸分裂を行って急速に増殖し,卵巣皮質に集落を形成するが,やがて卵胞細胞(顆粒膜細胞)が卵祖細胞をとり囲んで,卵胞という単位が作られる。哺乳動物の生殖は,受精を起点とするが,その前に生殖細胞は減数分裂によって染色体数を半減する必要がある。減数分裂は第1分裂,第2分裂に区分され,第1分裂は前期,中期,後期,終期に分けられる。前期はさらに細糸期,接合期,太糸期,複糸期,移動期の5期に細分される。第1分裂において,相同染色体は互いに対合し,多くの場合,その一部を交換して娘細胞に分かれるが,第2分裂では染色体の重複はなく,分裂様式も有糸分裂と同様である。哺乳動物では,出生時にほとんどの卵祖細胞は有糸分裂を終了し,減数分裂の第1分裂前期に進んでいる。しかし前期の後半,複糸期に続くと考えられている網糸期に至って卵の減数分裂は停止し,その後排卵直前までの長期間,その段階でとどまることになる(第1次減数分裂休止)。休止期にある卵胞内の卵は,胚胞(germinal vesicle)と呼ばれる増大した核が偏心性に存在しているのが特徴である。排卵直前になって,卵は第1分裂を再開,これを完了して第1極体を遊離後,第2分裂中期で排卵する。排卵した卵は卵管膨大部に達して,精子が卵に進入すると,卵は第2分裂を終了し,第2極体を放出する。