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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科4巻10号

1950年10月発行

雑誌目次

綜説

妊娠と子宮癌

著者: 三谷靖

ページ範囲:P.383 - P.386

はしがき
 子宮癌は割合に多い最も恐るべき疾患の一つであり,而も他部の癌,例えば消化器等の癌と異り,割合に若い人を襲うから妊娠と合併することもあり,その意義は輕視されない。

原著

妊婦結核と榮養

著者: 柚木祥三郞

ページ範囲:P.387 - P.389

 統計上春から夏にかけて腫々の病氣の發生率が多いことは周知のことである。特に結核性病の發病が多い。同樣に妊婦に於ても春から夏にかけて結核の發病率が高い。これには種々の原因があるであろうと思われる。例えば結核性の病氣の發病が多いのは,冬季の蟄居生活の間に結核に感染する機會が多く,春になつてこれが發病して來ることが多いと思われる。マントー反應が陽轉して後1年間,殊に最初の數ヵ月乃至半年間に發病の多いことは統計の示す所である。又性病等は春になつて感染する機會が多いことは當然である。勿論消化器傳染病等は夏から秋にかけて多いことは,夫々季節的の原因がある故である。これ等の季節的に發病率が高くなる原因には種々の要素があるから,それ等を分解して研究する必要がある。私が茲に述べたいのは,先づ主として結核,特に妊婦の結核が春から夏にかけて發病率が高いことと,婦人(妊婦)の榮養の季節的變動との間に何等かの關連があるか否かに就いて考えてみたいことである。秋には馬が肥えるという如く榮養には季節的の變動があるのではないか,又其の原因は何等か,從つて病氣の治療にも亦考えねばならぬ榮養の問題は多々あることと思われる。

母體身長と妊娠子宮底長との相關關係に就いて(その2)

著者: 明石政雄

ページ範囲:P.390 - P.396

第3節 妊婦の身長別妊娠時期別子宮     底の長さに就いて
 妊婦全體初妊婦及び經産婦の各々に就いて母體身長を  130cm〜148 cm………第1群  148cm〜154 cm………第2群  154cm〜170 cm………第3群の如く3群に分類し,その各群に屬する妊婦の子宮底長の平均値を15〜16週より43週まで各週別に求め,各群の子宮底長間に有意の差がありや否や,統計學的に差の檢定を行つた。

荻野學説による排卵期算定の新法

著者: 佐藤彰一 ,   村山茂

ページ範囲:P.397 - P.399

 成熟婦人において排卵の時期を推定することは,不妊の場合においても受胎調節の場合においても最も必要なことである。現在婦人の排卵を推定すべき方法としては,腟内容塗抹標本及び基礎體温曲線等種々なる方法をあげることが出來る。然るにこれ等の方法は一般に可成り手數を要するものであり,特に受胎調節を行う場合は,唯單に如何なる時期に排卵するものなりやを知れば充分であつて,正確なる時日を知るを要しないのである。これに關しては從來荻野學説を應用した荻野氏法が,一般に用いられていたのである。この方法は荻野學説に立脚し蒐集せる月經周期より推定するものにて,上述の排卵を直接椎定する確實な方法に比し,稍々簡單である點が利點と言うことが出來るのである。
 然るにこの荻野氏法を行うに當つては,かなりの例において實際上使用不能のものがあることは,一般に認められているところであり,またこの方法により受胎調節を行い失敗せる例を聞くは稀れなことではない。更にこの失敗例から荻野學説の信頼性を云々するものがあるが,これは荻野學説に信頼性がないのではなくして,寧ろ統計學的にみてこの荻野氏法に缺陷があるためである。余はこの方法より學説の批判せられるのを防ぎ,この學説のより正しい使用方法を考え,同氏法の不充分なる點を統計學的に指摘し,新たなる見地より推計學を基とする方法を提案し,諸家の批判を乞う次第である。

色素の子宮腔内注入に依る卵管疏通性檢査に於る注入色素の定量的考察

著者: 勝野六郞 ,   古谷博

ページ範囲:P.399 - P.404

第1章緒言
 微量定量が正確且つ排泄が迅速で毒性の殆どないP.S.P.test (フェノール,スルフオンフタレイン=C19H14O5S)は,1910年Rowntree Geraghtyにより腎臟機能檢査に用いられ,爾後該領域に於ける廣汎な應用研究は枚擧に遑がない。其の排泄開始は靜脈内注射時(0.6%P.S.P.1cc)には3〜5分後,筋肉内注射時には5〜10分後であり,その1時間後の排泄量は35〜60%,2時間後には更に15〜20%で,正常時には2時間迄に50〜80%が排泄され,腎機能不全時には一般にその排泄開始が遲延すると共に,排泄量も50%以下に留まるとされている。1948年G.Speckは木色素を以つて卵管疏通性檢査に應用し本邦でも三谷は0.1%インヂゴカルミンを用い該檢査法をChromotubationと命名したが,爾來追試者が續出している。(小國,渡邊,今丸,津久牛,高原),患側の判定が不可能と言う缺點がある爲,卵管造影法の補助的役割を演ずるに過ぎぬものであるが,操作容易且つ輕費である點で實地家にとつては甚だ便利である。然るに其の判定に關し,注入色素の定量的觀察を缺いており,且つ色素の腹膜以外の部分からの吸牧問題に就ても未だ異論があるので,余等は之等の點に就き基礎的實驗を試み,且つ本法と造影法との比較より卵管通否判定の境界となるべき排泄量を決定しようと試みた。

子宮腟部糜爛の治療に就いて

著者: 鍋島光雄 ,   中野文子 ,   大久保壽

ページ範囲:P.405 - P.407

 子宮腟部糜爛は婦人科外來に於て甚だ多數に認められる疾患であり,これに對する療法としては,從來より腐蝕法,物理療法,或は手術療法等種々のものが擧げられている。しかし之等療法の多くのものは長期の治療期間と忍耐とを以てしても,その效果を納めるに頗る難澁なるは周知の所である。余等も種々の上記療法を試みてはみたが,その治療效果は容易に擧げ得られなかつた。唯觀血療法を適應とする場合に,スツルムドルフ氏縫合を施して的確迅速な効果を認めているが,この種の疾患に對して觀血療法を行う場合は,實地醫家にとり限られた場合である。從つて從來より簡約にして的確な非觀血的療法をもとめていたが,最近偶々藥劑療法としてペニシリン局所投與を試みたところ,甚だ良好な治療成績を擧げ得た。よつて茲にその臨床實驗の概要を報告し,諸賢の御批判を乞う次第である。

卵胞ホルモン注射による妊娠早期診斷法

著者: 河邊昌伍 ,   田中徹

ページ範囲:P.407 - P.413

緒言
 Aschheim-Zondek反應を初め,Friedman反應,Mainini反應,Weisman-Coates等のfrog test(Xenopus leavis)等の動物を用いる妊娠反應はその陽性率は高く,優れた反應ではあるが,其の缺點として,動物の飼育,煩雜な手數,相當な設備等を必要とし,吾々臨床家が,手輕に何時何處でも行いうると云うわけにはいかない。又化學妊娠試驗は,今の所,信頼出來る成績ではなく,Falls-Freda等の初乳を用いる皮膚反應は簡單ではあるが,滿足すべき成績をあげているとは云えない。
 然るに最近に至つて,Wachtel and Hechterの所謂Prostigmin反應,GarrettのEstrogenによる妊娠反應,H.A.SchwartzによるEstrogen Progesteron併用による妊娠反應が發表された。然し,Prostismin反應は簡單ではあるが,その適用には相當な制限があり,既往月經の整調なものでなくてはならない,と謂われている。GarrettのEsrogen反應も,原法によれば,その適用範圍は同樣に制限されているから,實際臨牀上,利用價値が甚だ危惧されるものであるが,余等は同法を追試するに當り,その適用範圍を稍々廓大して,實際臨床上の利用價値を増大せしめる樣に努めた。

人胎盤絨毛内有核赤血球の出現とその意義

著者: 今尾孝 ,   加藤一男

ページ範囲:P.414 - P.416

緒論
  人胎兒の初期造血は胎兒外,即ち胎盤乃至卵黄嚢に於て行われる。續いて胎兒の腹莖部及びその間葉組織一般に於て非限局的に行われ,眞に胎兒固有の造血樣式なるものは肝臟に於ける造血であり,この肝造血は三轉して,胎生中期に發現する骨隨造血にその造血の中心を讓り渡すのであると。猶この造血の三舞臺は原則として赤血球の造血が主要内容をなすと言われている。この様な造血様式の變遷に從い,胎盤完成期を境としての胎盤絨毛内循環血液中に於ける有核赤血球の消長は甚だ興味がある。又Ryerson(1)難波(3)等はこの出現率により,妊娠前半期に於ては或る程度妊娠月數の推定は可能であるとし,Javert(3),尾河(4)等はこの出現率により未熟兒,早熟兒,成熟兒を判別し得ると言う。私たちは主として人工妊娠中絶により得た胎盤,胎兒心臟,肝臟,卵黄嚢等に就き追試を行い興味ある結果を得たので報告する。

卵膜用指剥離に依る人工早産法

著者: 田淵孫一

ページ範囲:P.417 - P.418

(Ⅰ)
 妊娠8ヵ月以後の人工早産法としてはアプレル氏法,及び其變法,メトロイリーゼ,ブージールング,腟及腹式帝王切開術,フツクス氏腟式子宮下部横切開娩出術等種々あり。之等は何れも器具を使用し煩雜である。余は妊娠8ヵ月以後の人工早産法として,從來餘り省りみられなかつた卵膜用指剥離法を追試したので,其成績を茲に發表する。

過去1カ年間の吾教室に於ける廣汎性子宮癌全剔出術後の骨盤結合織炎について

著者: 加來道隆 ,   團師鎭雄

ページ範囲:P.418 - P.420

緒言
 廣汎性子宮癌全剔出術後には種々の合併症が起り易いが,就中最も頻發し,我々婦人科醫を惱ますものは,骨盤腔の化膿,所謂骨盤結含織炎であろう。本合併症の豫防には之迄幾多の研究業績があるにも拘らず,何れも見るべき効果なく,全く萬策盡きた感があつたが,化學療法の進歩と共に,現今では本合併症も著滅するに至つたことは周知の事實である。又之とは別に,荻野,小林氏等は,本合併症の主因を術後骨盤腔内の潴溜液に求め,夫々特異の創液排除法を考案し,これによる好成績を報告し秦氏も亦化學療法と荻野氏ドレン法を併用して,優秀な成績を修めている。之等に關する最近の發表は,第1表に示した通りである。

症例研究

卵巣繊維腫の1例

著者: 山中弘一

ページ範囲:P.421 - P.422

Ⅰ.緒言
 卵巣纖維腫は比較的稀なものとされている.私は最近51歳5回經産婦に發生した小手拳大の卵巣纖維腫の1例を經驗し.組織學的に瀰蔓性卵巣纖維腫なることを確認し得たので,ここに追加報告する.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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