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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科4巻11号

1950年11月発行

雑誌目次

特集 性器捻轉の臨牀 症例研究

子宮の軸捻に就いて

著者: 各務勤

ページ範囲:P.425 - P.430

 子宮軸捻に關する我國の報告例は,非妊娠子宮の軸捻としては高橋,竹下,山田の3例,妊娠子宮の軸捻としては田口,高橋稲垣の外に,副角を有する單角子宮の戸野原,重複子宮の梅田,大塚,双角,子宮の吉川の6例,計9例の報告を看るにすぎない。日光電氣精銅所附屬病院在職中偶々双角子宮の右角妊娠7カ月子宮の頸部にての左方軸捻の例に遭遇したので,茲に其の一例報告をなすと共に,我國の報告例を通覧しつつ,子宮軸捻の概説を試みようと思う。
 患看—平○乙○,28歳,未産婦,昨年妊娠3カ月で流産。最終月經,昭和23年2月16日より4日間。胎動自覺7月下旬。何等之と謂う原因なく(普通の日常生活で特別に過勞したという記憶はない)昭和23年8月19日午前2時頃突然強度なる下腹部緊張感と共にしめつけられる樣な壓痛を訴え,緊張感は餘り甚しくなく,壓痛感は次第に疼痛となる。當直醫の往診を受け麻藥の皮下注射をうけ緊張感疼痛は一時輕減するも又激しくなる。次いで助産婦の往診を受け石鹸浣腸を受ける。患者は緊張感發生以來胎動自覺なしと云う。其後疼痛は激しくなるも,嘔吐惡心は共に全くなく,發熱性器出血もない。

自然離斷せる卵巣類皮嚢胞腫の大網癒着後莖捻轉を再發せる1例

著者: 明石政雄

ページ範囲:P.430 - P.432

緒言
 卵巣嚢腫の自然離斷は1748年Morgagniに依て屍體解剖時に1892年Martinに依て手術時に初めて發見報告された。その後報告例は相當多數に上るがVogtに依れば,卵巣嚢腫の莖捻轉は7.8%,Grotenfeltに依れば1.2%であつて稀なものである。而も自然離斷をした卵巣嚢腫が大網に癒着し,強度の捻轉を起した例は更に稀である。最近著者は下谷病院に於て自然離斷をした卵巣類皮嚢胞腫が大網に癒着し,更に捻轉を起した稀有なる例を經驗したのでここに報告する次第である。

妊娠第4力月に合併した卵管捻轉

著者: 田淵孫一

ページ範囲:P.432 - P.433

緒言
 卵巣嚢腫の莖捻轉は我々の比較的屡々遭遇する所であるが卵管を莖とする卵管腫瘤の捻轉は遙に少い。更に卵腫瘤もなく略々常態卵巣の場合の卵管捻轉は甚だ稀有なものとされている。余は最近妊娠第4ヵ月に於ける卵管捻轉を經驗したので之を報告する。

正常子宮附屬器急性捻轉の1例

著者: 今泉英夫 ,   淸水良倫

ページ範囲:P.434 - P.435

 子宮附屬器の捻轉と言えば殆んど卵巣嚢腫乃至は腫瘤の捻轉であるが,時には病的變化のある卵巣即ち卵管溜水腫,血腫或は膿腫に際しても遭遇することがある。然し正常子宮附屬器の捻轉は稀有なるものであり,而も其の多くは卵管或は卵巣の單獨捻轉であつて,正常卵管並に卵巣の兩者が共に捻轉するは極めて稀とされ,吾々の渉獵した範圍では黒川の1例とAuvary,Charbennier,Ogo—lek等の22例に過ぎない。最近吾々も格別認むべき原因なくして本症を招來した1例を經驗した。

原著

胎兒の心電圖に就いて

著者: 小國親久

ページ範囲:P.436 - P.438

緒言
 從來胎兒心臟に關する研究は主として發生形態學的又は組織學的に發達過程を追求したものが多く,1)其の機能に關しては殆んど未開拓といつてよい状態である。2)
 筆者は身長4.8cmより新産兒に至る胎生各期の心臟機能を40數例の人工流産胎兒に就いて,心電圖により器質的發逹過程に伴う機能的發展を追求した。

骨盤應形機能に關する臨床的觀察

著者: 野島美喜造

ページ範囲:P.439 - P.446

緒言
 分娩は兒頭,産道及び陣痛の3要素で左右される一つの複雜な機械的現象である。強力な陣痛及び腹壓によつて産道内に壓入される兒頭は,廻旋運動更に兒頭應形機能を行い自己を縮小させて産道を通過する。産道に就ては,軟産道は兒頭の壓迫により伸展擴大して通過管を形成するが,骨産道に就ては如何であるか。女性骨盤には2つの相對立する作用がある。1つは立位或は歩行時の靜力學的,動力學的支持作用であり,他は分娩時の産道としての作用である。支持作用からみれば骨盤,骨盤關節とその靱帶は強固強靱であるを要するが,産道としてみれば反對に弱く移動性を有することが好都合である。
 骨盤應形機能とは兒頭の骨盤腔通過に順應する骨盤腔の擴大である。輓近骨盤關節及びその附屬靱帶に關する妊娠分娩時の病理學的,レ線學的,比較解剖學的及び臨床的諸知見は多數集積され應形機能の存在に關する基礎的知見は強化された。私はこの機能の存在程度及び臨床的意義を知ろうとして産婦の骨盤外計測を行いいさゝか成績を得たので茲に報告する。

境界領域 精神科から

産婦人科領域に於ける精神醫學

著者: 鹽入圓祐

ページ範囲:P.447 - P.452

緒言
 比較的最近まで,精神病學は隣接の諸臨床部門と關係が薄く,産婦人科領域に對しても例外ではなかつた。併し乍らこの20年間にあつて,精神病學は長足の進歩を遂げ,不治であるとされた精神分裂病に有效な治療法が相次いで發見されると共に殊に,最近では精神身體醫學が登場し,隣接各科との接觸はとみに緊密を加えて來た。本稿ではこの新しい精神醫學の立場から,産婦人科とのつながりに概觀を與えたいと思う。
 從來この科で問題となつた精神疾患は,妊娠性精神病と月經性精神病並に子癇が主なものである。併しこれらの獨立疾患が存在するという考え方は段々と根據がうすくなり,それは妊娠等に際して 1)内因性精神病(精神分裂病,躁鬱病及び癲  癇)が誘發されたものか 2)内因性精神病が反應的に(換言すれば頓坐  的に)現われるものか 3)妊娠中毒による症候性精神病であるかのいづれかを考えねばならなくなつてきたからであり,更に 4)妊娠中毒或は退行期,月經期等の身體的變  調に關連して起つてきた精神症樣障碍ではな  いかということが重要な問題となつたからである。

診療室

Rooming-In Problem母兒同室問題に就て

著者: 長谷川敏雄

ページ範囲:P.453 - P.455

 アメリカの産科病院では一般に新生兒を母親から隔離して共同育兒室central murseryに收容し授乳時以外には一緒にしない方針であり,而も其の隔離が極めて嚴重であることは以前から聞いていたが,今度一寸あちらへ行つて見てそれが全く事實である許りでなく,豫て聞いていたよりも遙かに嚴重で,娩出後臍帶切斷,身體の清拭,Crede氏點眼等法の如く處置され次で親子の對面が濟むと直ぐに共同育兒室へ送られてしまい,其後は所定の授乳時以外は育兒室内に多數の新生兒と共に隔離され,掛りの醫師及び看護婦以外は家族や一般見舞人は勿論父親でさえ室内に入ることが許されず,備付の消毒衣,帽子,マスク等をさえ着ければ分娩室へでも自由に入れて貰える筆者等のような見學ゐ醫師でさえ,共同育兒室へ入ることだけは許されぬと云う状態である。
 何故そのように母兒を同室せしめぬかと云うことに就ては案内の醫師や看護婦に聞いて見てもはつきりした理由を云つて呉れる者は少く,中には「何故か知らぬが昔からの習慣だから」と簡單に片づけてしまつた者もあつて,其の隔離の徹底した嚴重さから恐らく新生兒の感染豫防が其の一つであろうと思われる以外確かな理由をつかむことが出來なかつたのであるが,孰れにしてもアメリカでは昔から分娩後から退院迄母兒を隔離して同室させない習慣になつていることだけは確かなようである。

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私の經驗では

ページ範囲:P.456 - P.460

問8
 1.子宮腟部糜爛の處置は 2.帶下の治療法は 3.どんな催乳法をおやりですか.

海外文献

ページ範囲:P.461 - P.462

術後處置に關する子宮頸部,腟の治癒に就て
 William Bickersは手術(電氣切除法,電氣凝固法,及腟會陰成形術)後の子宮頭部,腟の治癒に就て,鹽化セチルピリヂニウム("Ceepryn")腟坐藥の効果をAm.J.of Obst. & Gyn.59:1045(1950)に報じている。
 鹽化セチルピリヂニウム(C5H3N (C16H33) Cl)は電氣的陽性の強力な殺菌劑で,組織に對しては局所の粘膜面に用いる治療的濃度では比較的無害であり,その腟坐藥はゼラチン基劑の中に1:1000濃度に之を含有し,患者自身により容易に腟穹薩に挿入され得るもので(毎日2個使用)體温で直ちに溶けると,表面張力が低い爲に内部に迄擴散し,長く作用する。

時の話題

中絶の犧牲となつた胎兒の供養

著者: 安藤畫一

ページ範囲:P.463 - P.463

 今まで思いつきもしなかつた標題のことが,最近に事實となつていとも嚴肅に執行されたことは,正にニユースバリユー滿點と思へるので,その概況を發表して參考に供し,他の地方部會でもこれに傚はれる樣に推奬したい。先づ主催者側から發表された報告を再録する。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻5号(2015年5月発行)

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69巻4号(2015年4月発行)

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