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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科4巻12号

1950年12月発行

雑誌目次

原著

腟塗抹標本に癌細胞の現われた原發卵管癌の1例

著者: 櫻井健吉 ,   牧野德榮

ページ範囲:P.465 - P.469

緒言
 原發卵管癌の發生は左程稀なものではないが臨牀的に診斷を下すのは相當困難なものである。
 1941年G.N.PapanicolaouのVaginal Smear Testに依る子宮癌診斷法が發表されて以來諸家の追試に依つてその信頼性が承認されると共に子宮癌以外の性器惡性腫瘍の診斷にも利用せられる樣になつた。

月經困難症の治療に就て

著者: 赤須文男 ,   山口順

ページ範囲:P.469 - P.472

緒言
 月經時に精神的或は肉體的に不快な症状が發現するのは或る程度迄は生理的と稱する事が出來,從つて之を一つの月經困難症と診斷するには,この病的状態が相當程度に亢進した場合に限らるべきであるが,その限界は甚だ漠然たるものである事は止むを得ない。私(赤須)が醫局にいた頃,磐瀨教授から,月經困難症というのは,月經時の苦痛のために,鎭痛劑の注射をするとか,就床するとかの場合を云うのであると教えられたのを記憶している。從つて月經困難症の頻度などを調査する時は,この定義を充分にきめてかからなければならない事になる。然し,本症自體を主訴として外來へ,來る患者もあるし,又,他の主訴で來て,問診時にはつきりと月經困難を訴える患者もあるから,生理的と病的との限界にある患者を除外すれば,月經困難症の患者を治療の對照として研究する事は非常に意義の大きいものと云わねばならない。

アブレル氏人工妊娠中絶術に關する基礎的研究

著者: 片山壽

ページ範囲:P.473 - P.477

(本論文要旨は昭和24年11月第1回近畿産科婦人科醫會總會,昭和25年第2回日本産科婦人科學會總會に於て各その一部を發表した)

妊婦の子宮底の長さと最大腹圍との相關關係に就いて

著者: 明石政雄

ページ範囲:P.478 - P.481

緒言
 妊娠月數の進行に從い之に伴う母體子宮内容物の増大に依り妊娠子宮底の長さは増大しそれと同時に最大腹圍も増大する事は明かなる事實である。從つて妊娠子宮底の長さは最大腹圍に比例してその間の相關關係も極めて高い様に推定されるのである。事實,増田等に依れば分娩期に於ける子宮底の高さと腹圍との相互關係に於いて大なる相關關係ありと云う。然しながらこれまでの研究は何れも分娩期に於ける場合であつて妊娠子宮底の長さと最大腹圍との關係に就いて各週別に研究したものは極めて少い。ここに於いて著者は妊娠子宮底の長さと最大腹圍との相關關係に就いて各週別に研究し聊か見るべき結果を得たのでここに報告する次第である。

卵巣出血に就て

著者: 馬淵學

ページ範囲:P.482 - P.483

緒言
 卵巣出血は比較的稀有であつて出血量も自覺症状を發現するものに於ても比較的少量の數10c.c.より一立以上に及ぶものまで種々存在し,内莢膜血管より出血するも其の原因はホルモン作用に起因する卵胞周圍血管の抵抗滅弱の素地の下に何等かの誘因即過動性交等加わり惹起するのであろうと言うも今日未だ不明の域を脱しない。
 出血部により卵胞出血と黄體出血とに分つも,前者よりも後者の方が多い様である。卵巣出血による大量の腹腔内出血は其の症状より,他科に於ては子宮外妊娠中絶と同様急性虫垂炎と診斷される事多く,産婦人科に於ては眞に性的關係を否定し得ぬ限り子宮外妊娠中絶に於ても月經又は月經樣出血を缺く事なき場合多き故子宮外妊娠中絶と誤診される事が多いのは當然である。

症例研究

諸種の稀有畸形を有する臍帶ヘルニヤ兒の1例

著者: 萩原晃 ,   中村實

ページ範囲:P.484 - P.486

緒言
 本例は慶應義塾大學病院産科にて,帝王切開術を行い娩出した新生兒に約小手拳大のヘルニヤを認め,直ちに外科的還納手術を行い保護を加えたが.遂に2日目に死亡したため,之を剖檢した所興味ある各種の畸形を發見したので報告する次第である。

腹膜僞粘液腫の1例

著者: 伊集院久進

ページ範囲:P.486 - P.488

緒言
 腹膜僞粘液腫は卵巣又は虫垂或はその兩者に原發し,腹腔内の處々に黄褐色粘稠膠樣の物質を發現すると共に,特異な腹膜處見を呈する比較的稀な疾患である。1884年Werthが卵巣嚢腫を伴つた症例を報告し腹膜僞粘液腫と命名してから,1901年にはFraenkelが虫垂の變化を伴つた症例を報告している。その後高松(1949)(2)によると外國では凡そ83例,我が國では37例の報告があるが,私も最近その1例を經驗したので報告する。

乳幼兒の卵巣顆粒膜細胞腫

著者: 藤井吉助

ページ範囲:P.488 - P.492

 私は昭和24年6月6日昭和醫科大學に於いて,生後6ヵ月の乳兒の卵巣顆粒膜細胞腫を發見した。本例は世界文獻上,第二番の若年者の卵巣顆粒膜細胞腫であり,臨牀上の所見から,略々卵巣顆粒膜細胞腫の診斷を下すことが出來た。手術前後の腟脂膏研究によつて,著明なエストロゲン作用が證明され,又尿中エストロン量を測定して幼女には見られない多量のホルモン量が證明された。且つ剔出腫瘍については詳細な組織的檢査が行われ確實に卵巣顆粒膜細胞腫と診斷された。なお若年者の効果的手術的治驗例である。
 以上の通り本例は極めて興味あるものであるから,本年四月,日本産科婦人科學會總會に於いて研究協力者である樋口教授と連名で,私は之を發表した。又これに關する要點を産婦人科の世界第2卷第2號に發表した。

速報・豫報

ナイトロヂンマスタードAの惡性絨毛上皮腫に對する態度に就て

著者: 德永幹雄

ページ範囲:P.493 - P.494

緒論
 ナイトロヂンマスタードの惡性腫瘍に對する治驗例は,すでに數多く報告せられている。然し婦人科領域に於ける報告はいまだ數多くはない。當科に於いては數十例の性器癌に使用,その經過を觀察中であるがいまだその成績を報告するに至つていない。その間,二例の惡性絨毛上皮腫に十劑を使用,内一例に著效をみとめたので病状報告を兼ねて同劑の同疾患に對する態度に就て記述しようと思う。
 44才の5回經産婦。昭和25年7月6日惡脉の未期のものとして地方の開業醫より送院せらる。同患者は昭和24年6月胞状鬼胎の掻爬手術を受け其の後時々不正出血があつたが更年期の爲と思ひ放置してあつた。所が本年5月初旬より持續的の性器出血あり加ふるに呼吸困難を伴ひ7月初旬始めて醫治を乞ひ前記の診斷のもとに當院におくられたものである。來院時歩行に耐へず。榮養状態著しく低下す。胸部は全面的に罹音を聽取し呼吸數1分間40を越へた。心に著變をみとめず,下腹部を觸診するに子宮は恥骨上三横指にふれ可動性なし。内診するに右尿道下部,腟壁に過鳩卵大の暗紫赤色の表面滑なる轉移をみとむ。子宮は手拳大に肥大し惡臭のある出血を多量にみとむ。血色素80ザーリー白血球5400,赤血球369萬血沈1時間平均50粍,血壓118〜70フリードマン2萬單位強陽性。胸部寫眞至る所に肺轉位をみとむ(第1圖)。

診療室

若年婦人のホルモン性月經障碍と其の治療

著者: 佐藤美實

ページ範囲:P.495 - P.498

 婦人の一生のうち最も華な活動的な時代である生殖年齢時代は妊娠授乳の時期を除いて常に月經を見る。そして女性身體に何か異常があると月經に變調が見られることが少くない。それだけに女性一代の健否と月經とは密接不可分の關係を有つのである。余は嘗て月經は女性身體を窺う窓のようなものであると述べたことがあるが此の月經を通して女性身體の内部を或程度のぞき見ることが出來ると思う。恰も男女を問わず發熱が現れた時に之が身體に異常のあることを豫告するが如きもので月經なき男性は身體障碍を先驅的に豫知する徴候を女性よりも一つ缺くこととなり此の點は不利なことと思う。
 さて急性傳染病,結核,中毒等による全身障碍からの月經異常はここに除外して女性性器に基く障碍に就て探索して見ると1.ホルモン障碍によるもの,2.性器の形態學的變化によるもの,3.植物神經系障碍によるものに分けられる。是等は單獨に又二つ或は三つが合併してをることがある。故にいずれの障碍に基く月經異常であるかを先づ明にする必要がある。そのために先づ第一に臨牀的に診査して全身の發育状態,女性性器並に其の周圍の状態を明にする。例えば性器の發育の状,形態的器質的變化の有無,殊に妊娠初期に於ける診斷は特に注意して之を明にせねばならぬ。又場合によつては診査掻爬,子宮卵管浩影法を應用して直接子宮の状態を見る。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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