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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科4巻2号

1950年02月発行

雑誌目次

原著

ペニシリンの胎兒及び羊水への移行について

著者: 齋藤達郞 ,   中山博之

ページ範囲:P.49 - P.52

緒論
 産科的なペニシリンの使用については,從來,種々の報告がある.その適應として,腹式及び腟式帝王切開術,早期破水,鉗子分娩,胎盤用手剥離等,子宮内感染を起し易い産科處置があり,之等に對してPc (以下ペニシリンをPcと略す)を豫防的に用いて著効がある.R-Gordon Douglas,Jone F.Davis等は分娩時感染及び産褥感染にPcを使用し,Wolzは早期破水に用いて豫防効果を上げた.即ちPcを使用しない對照例の發症率21.4%に比して6.9%の發症率であつたと云う.使用方法は何れも2〜3時間間隔筋注法に依つた.
 以上の所謂,産科的感染症のみならず,妊婦梅毒にPcを使用して偉効を奏することは更に重要なことと思われる,從來の砒素系統の治療劑で不治であつたものにPcを用いて良果を得ることや,副用作の少い點,治療目數の短い點等で有利である.

妊娠に合併する腸チフスの臨床觀察

著者: 水野重光

ページ範囲:P.53 - P.61

緒言
 腸チフスは終戰後幸に其の數減少したが尚本邦に於ける急性傳染病中四季を通じて主要の位置を占めて居り,且つ妊婦が本症に罹患する場合屡々中絶を來し,其の豫後も中絶よつて惡影響を蒙ることが内外の文献に認められる.
 余は駒込病院6年間の勤務中20例の妊娠・腸チフス合併例に遭遇し詳細にその經過を觀察することが出來たので,これと就任前の昭17年度迄18年間に於ける同院腸チフス入院患者病歴から得た妊婦128例に就ての調査成績とを綜合して臨床觀察を行い,妊婦腸チフスに對する治療方針を檢討した.

症例研究

乳腺下移植卵巣の嚢腫變性例に就て

著者: 戸澤策郎

ページ範囲:P.62 - P.63

緒言
 卵巣自家並びに同種移植に就いてはKnauer(1895)以來,動物實驗を經,又人體移植に就いてはMorris (1896)以來,多くの實驗を重ね,現在,卵巣缺落症状防止の一方法として確認されて居る.さて卵巣乳腺下移植に關しては,大野教授は1928年以來,獨自の見解の下に約400例に就いて取り行われ,而も夫等の中に今回計らずも移植後5年9ヵ月を經て,移植卵巣が鶏卵大に腫大した卵巣嚢腫例が見出され,甚だ珍稀なると其に,移植卵巣の研究上,極めて貴重な材料ともなると思われるので茲に症例を記録し,其大要を述べる次第である.

癌のシューハルド氏切開瘢痕部への移植輸移の1例

著者: 佐藤彰一 ,   荒井信造

ページ範囲:P.64 - P.67

緒言
 癌腫の蔓延は原發竈に連續的に擴大蔓延する事が多いが,又非連續的に遠隔部位へ所謂轉移として現る.その轉移は更にリンパ道,血管道,接觸移植の4轉移法が考へられる.其の中リンパ道性が最多で接觸及び移植轉移は非常に稀の事とせらる.我々は子宮癌根治手術後の斷端再發の剔出手術の時,加えられたシューハルド氏側切開の瘢痕部への移植轉移と思われるものを經驗したので此に報告する.

子宮惡性絨毛上皮腫の脊髓轉移と思われる例

著者: 原口哲之 ,   伊集院久雄

ページ範囲:P.68 - P.70

緒言
 絨毛上皮腫は比較的早期に血行を介して殆んどあらゆる身體の組織,又は臟器に轉移する惡性の腫瘍で,1832年Netzelより始めて觀察されてから次々に詳細な研究がなされ,諸所に轉移した貴重な症例も幾多報告されている.然し絨毛上皮腫が脊髓を侵した例は轉移性のものでも,變位性のものでも極めて稀で僅かに數例を數えるに過ぎない.
 我々は最近當教室で轉移性に脊髓を侵したと思われる子宮絨毛上皮腫の1例を經驗したからここに報告しようと思う.

所謂破壤性胞状奇胎の1例

著者: 水野哲義

ページ範囲:P.71 - P.72

 一般に胞状奇胎は,子宮腔内に向つて發育増殖するものであるが,絨毛細胞の増殖力旺盛なるものでは,子宮筋層内に破壤侵入し,或は子宮周圍に腫瘤を形成し,稀には腹腔に穿孔することがある.
 Volkmann.は斯る,脱落面から筋層へと連續的に破壤されている胞状奇胎を,破壤性胞状奇胎と稱した.

子宮腫瘤及び性器出血を主徴とする白血骨髓肉腫症

著者: 落合時典

ページ範囲:P.73 - P.77

まえがき
 元來白血病は内科方画に於ても一般に比較的稀れな疾病とされており,殊に吾が産婦人科領域に於て之に接する事は稀有なるものの一つである.試みにHalban-Seitzのソウ書をひもどいて見ても白血病に關しては,それと妊娠及び中絶又は胎兒白血病に關する記載が見當るのみである.私は偶々骨髓性細胞浸潤の著明な子宮腫瘍及び頑固な性器出血を主徴とする白血骨髓肉腫症の1例を經驗し,文献に徴すれば極めて興味深いものと考えられるので報告することにした.
 緖方(知三郎)教授は白血病を含めた造血臟器の増殖を腫瘍として取扱い,これを系統立て18種の病型に區別しておられる.その分類に從えば白血骨髓肉腫症(Leukaemio-myelosarkoinatosis)とは次の如く定義される.すなわち白血骨髓肉腫症とは主として骨髓系を多發性に侵す造血組織腫瘍の一つで,周圍組織への腫瘍細胞の浸潤を起し,肉腫としての性状をあらわしている未熟型(惡性)の腫瘍で,白血病性の血液像を呈するものといい得るのである.以上の事は次に述べる觀察例及び剖檢所見に依り一層明らかになる事と思う.

外出血を缺く子宮外妊娠

著者: 鈴木辰夫 ,   田中睦

ページ範囲:P.78 - P.79

 子宮外妊娠は之と鑑別を要する疾患とその治療が對蹠的であるため,その誤診は吾々婦人醫に思わざる苦杯をなめさせる.しかも本症の診斷は必ずしも容易ではなく,臨床家にとつて子宮外妊娠の診斷はまことに興味深いものがある.子宮外妊娠も,月經閉止,激烈な一過性下腹痛及び外出血等典型的症状があれば容易に診斷されるが,この内の何れかを缺くときは,時々疑診さえも困難となる.殊に主症状である外出血のない場合に於て然りである.野口によれば,外出血を缺く子宮外妊娠は9.63%に存在するから,診斷の適中率を高めんとすれば,この方面の檢討が一層必要となる.

境界領域 整形外科から

乳兒の先天性股關節脱臼

著者: 靑池勇雄

ページ範囲:P.80 - P.84

 先天性股關節脱臼が産科とは尠なからぬ連がりをもつていて,屡々産科の方で發見され早期に治療開始の出來る場合がある.斯樣な患者は治療が甚だ簡單に濟んで大變得をして幸福なわけで,今後は出來る限り新産兒か幼若乳兒のうちに本症が發見されるようにならなければならない.
 ところで先天性股關節脱臼は隨分多い疾患で,女兒に多く,新産児の0.5〜1.0%に發見出來る高頻度の疾患であるから,早期に治療開始の出來るためには,一般の醫師,特に産科の方々の協力に頼らなければならない.

診療室

私達の行つている人工授精法

著者: 安藤畫一

ページ範囲:P.85 - P.85

 私達の實施している人工授精に關し,多數の人々から問合せがある.その都度要點はお答へしているが,直接問合せのない人々の中にも,知りたいと思われる人も少くないと推定して,茲にその概要を,實施の順序を追つて叙述することゝした.

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海外の動き

ページ範囲:P.86 - P.87

産婦人科患者の早期離床
 R.de Soldenhoffは早期離床と云う言葉の意味は各國及び各學者によつて可成の差異があるとし,先ず北米合衆國では手術後或は分娩後24時間内に離床することを意味し,ヨーロツパの或る國では患者が手術室或は分娩室から直ぐに歩いて室に歸ると云うことを云つている.著者自身は早期離床とは分娩後又は手術後の第3日目に床を離れることを意味するとしている.勿論この場合に著者は,Leithauser氏法で手術後8時間以内に寢臺の傍に起立して3〜4回咳嗽をさせる,殊に呼吸器合併症の發生の惧れがある時には,その様にさせると云つている.
 著者はその樣にして,1年間の早期離床を試驗した2735名の入院患者及び1878回の分娩に就て調査した結果を,前年度の結果に比較しているが,帝王切開術,子宮筋腫剔出術及び其他の手術の際に,早期離床の心理的影響は非常に顯著であつて,特に前に帝王切開術を受けておつた婦人では,以前には術後14日間も就床させられておつたので,一層その様であつた.患者は何れも迅速に正常状態に復したと云う事實に深い感銘を表しておつた

第4回日本産科婦人科學會東京地方部會の記

ページ範囲:P.88 - P.89

 12月16日午後2時から神田駿河臺日本大學病院講堂で開かれた.今回から座談會をはじめることになり,特にこの日はAburel氏人工流産法がテーマになつているので來會者が多くせまい講堂ではあるがあふれるばかりであつた.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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