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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科4巻5号

1950年05月発行

雑誌目次

原著

妊娠、分娩及び産褥に於ける腹直筋及び肛門擧筋の離開に就て(その1)

著者: 高橋茂

ページ範囲:P.177 - P.188

緒言
 妊娠及び分娩時に於ける腹壁及び骨盤底の筋肉に見られる變化の中で腹直筋及び肛門擧筋の離開は最も著しい現象であつて,兩者が高度に生じた場合には分娩後に於ても恢復不充分であり將來性器脱垂,懸垂腹腹壁ヘルニア等の原因となることはHalban及びTandler (1906)以來着目せられている.肛門擧筋の離開に就ては既にAdolph,Pankow,Badwanskyその他に依る記載があり又近くはDe Lee等のTextbookにも記載されているが,腹直筋の離開に關する記載は極めて少く慶應産婦人科教室尾島の記載(臨床産婦13卷8號)を除いてはM.Schlee,Bossi等の報告があるに過ぎぬ.妊娠,分娩及び産褥の經過を追うて之等兩種の筋肉の離開及びその復古状況を觀察した文獻は未だ見當らない.併し之等の筋肉離開の現象は輕視することの出來ぬ事實であり,性器脱垂,分娩時腹壓微弱或は懸垂腹等の原因となり得ることを思えば,その状況を詳細に觀察し,その豫防及び治療策に就て研究することは産科臨床上緊要なごとゝ云わねばならぬ.

雄性蝦蟇を使用する妊娠反應(定性及定量)に就いて

著者: 久保博 ,   河野通夫 ,   藥師寺信一

ページ範囲:P.189 - P.192

緒論
 1928年Zondek及Aschheim兩氏に依りマウスを使用する生物學的妊娠反應,次いで1929年家兎を使用するFriedman氏反應が發表され生物學的妊娠反應は略々完成されたが,1940年Hogbinは雌性蝦蟇の産卵反應を應用し,更に1947年アルゼンチンのCarlos Gralli Mainini氏は雄性蝦蟇(Bufo arenarum Hensel)に妊婦尿を注射するとその尿中に精子の排出する事を認め,之を妊娠反應に使用して優秀なる成積を得た.本反應は妊婦尿に多量に含まれている所謂腦下垂體前葉ホルモンに依る雄性蝦蟇の排精子現像を見るのであつて,實施が非常に簡單で成積判定も明確であり,且つ判定迄の時間も短く實驗動物の入手も亦容易且つ安價であつて實用價値が大なる等利點が多い爲に外國に於いては既に多くの追試報告があり吾國に於いても國内に在住する蝦蟇についてその優秀性が確かめられつつあるが,主として定性反應による報告のみであつて,尿中所謂腦下垂體前葉ホルモンの定量に關する報告は文獻も少く殊にマウス單位と蝦蟇單位との比較は之を見ない.

症例研究

妊娠40週に蟲垂炎と誤診せる卵管溜水腫莖捻轉の1例

著者: 小澤五一郞 ,   長谷川雅亮

ページ範囲:P.193 - P.196

緒言
 卵巣腫瘍の莖捻轉は屡々遭遇するも之と臨床上殆んど同一の症状を呈するものに,卵管溜水腫の莖捻轉あり,されど此れが頻度は前者に比し遙に少なく,歐米に於ては1891年Bland-Suttonにより初めて報告されて依り,既に100例餘に達するも,吾が國に於ては,淺學なる余等の捗獵の小範圍に於ては,昭和7年橋本により初めて報告されて依り,今日迄20數例に過ぎず,就中之が妊娠と合併せる例に就きては尚少なく,中川(9ヵ月)廣田(4ヵ月)宇美(3ヵ月)の3例にして,歐米に於ても,Savage (38週) Stevens (8 1/2月)Eastmann (7 1/2月) Mc.Kerrow (6ヵ月) Hart—mann (5ヵ月) Pinard-Paquay (3ヵ月)等の10數例に過ぎす.余等は最近妊娠40週にして,分娩豫定日5日前の高年初産婦に於て,蟲垂炎の診斷の下に,帝王切開術を同時に施行せんとして開腹し,初めて右例卵管溜水腫の莖捻轉なりと判明せし1例に遭遇せるを以て並にその概要を報告する次第である.

婦人に於ける腎・腎孟及び尿管の重複症,特に尿管の膀胱外開口に就て

著者: 坂倉啓夫 ,   萩原信之

ページ範囲:P.196 - P.200

緒言
 腎,腎盂及び尿管の重複症を伴う尿管膀胱外開口の様な泌尿器異常は,泌尿器科領域に於ても珍しいものに屬するが産婦人科領域に於ては殊に稀有なものと思われる.特に尿管膀胱外開口に就いては西歐に於てはThomが191例を集計し(1928)更にGloorが86例を追加している.本邦に於ては昭和7年高橋,市川が第1例を報告して以來諸家の注目を惹き昭和23年志田は29例を集計しているにすぎない.余等は最近腎,腎盂及び尿管の重複症を伴い尿管が膀胱外に開口し且つ尿管の開口端に近く嚢腫樣擴張を呈する1例を經驗したので,泌尿器系異常の所見を稍詳細に且つ腫嚢腫との關係を併せ記述する次第である.

速報・豫報

新産兒の消化性白血球減少

著者: 塚田不二彦

ページ範囲:P.201 - P.204

 1920年Widalは,肝臟機能障害のある人又は動物では,食餌攝取後白血球減少,血壓及び血清屈折率の降下の起るのを認め,之をHaemo—klasische Kriseと呼んだ.氏に依ればこの現象は肝臟機能の正常なものでは起らず,却つて白血球増加,血壓及び血清屈折率の上昇が認められ,動物實驗の結果に依れば之は食餌中の蛋白質に特異な現象で,氏はこれを其の所謂Proteopexische Funktion der Leberに歸し,併せて,食餌攝取後の白血球數の變化を肝臟機能檢査に應用し得ると稱えた.
 氏の提唱は共後諸家に依り追試されたが大勢は否定説に傾いた.特に新産兒,乳兒を對象とした領域では,Gregor,Maro,Japha,Auricchio,秋山,Linzenmeier,Schiff und Steansky等の研究があるが,氏等に依れば,新産兒,乳兒では,食餌攝取後の一過性白血球球減少は寧ろ生理的のもので,必ずしも肝臟機能の健否とは關係なく,且種々な食餌を與えて實驗した結果に鑑み蛋白質のみに特異な現象ではないとしてWidalの説を否定した.

骨髓内輸血(新生兒)が網状赤血球に及ぼす影響

著者: 林基之

ページ範囲:P.204 - P.205

 最近の文獻に依れば,網状赤血球(以下レ球と略稱)は主として幼若新生細胞であり,一部破壞型があつて,骨髓刺戟(瀉血・貧血・溶血等)に加うるに鐵が不足している状態の時發現すると云われている.この可染性物質(0.05%ブリラントクレジール青染色)はポルフィリンであると云われ,フォイルゲル反應陰性から核酸ではないと云われている.ある學者は核分泌物で核質であるとも云つている.何れにしろ,最近の知見は幼若新生説が主位を占め,淸野,Widal等の退行説に傾く學者は少い.螢光赤血球とも違い,有核赤血球は可染物質を有するごとが多いが,同一のものではない.正常赤血球より大且つ比重は輕く,抵抗も大であり,熱に對して強く,凝集血清で凝集され難いのみならず錢積状形成をせず,異物に附着し易く,諸種鹽基性アニリン色素に超生體染色的に染出される網状線維状又は顆粒状の諸形相を有する可染性物質を含有する赤血球である.惡性貧血の恢復時,瀉血時,貧血時,溶血性黄疸時,消耗性疾患,胎生期,新生兒期,高層氣壓内,造血組織,レ・ラ線少量照射で増加し,妊娠中毒症のある時期に増加する.

診療室

妊娠5,6,7ヵ月頃の新妊娠中絶法

著者: 橋爪一男

ページ範囲:P.206 - P.208

第1案 臍帶結紮法
 妊娠5,6,7ヵ月頃は一番人工中絶のやりにくい時期である.色々な缺點のあるアブレル氏法が近時異常な流行を見せているのも從來の諸法にあき足らない所が多いために他ならない.それは此の時期は子宮頸管を急速に開大して胎兒をはさみ出すには少々大き過ぎる.止むなく陣痛を催起せしめて自然分娩の經過を取らせるのであるが,何分にも時期が中途半端なので,各種の方法に抵抗して子宮は容易に反應してくれないのである.一番多く使われて來たブージー挿入法は時に非常によく効くこともあるが,反對に4,5日かかつてもサツパリ効いて來ないことも珍しくないのである.アブレル氏法は奏効は100%に近い代り,時に突如として患者の生命を危殆に頻せしむる場合があり,廣く一般に推擧するには尚多分に考慮の餘地があるものと思われる.
 筆者はかねて從來の諸法に代る可き安全,確實な方法は無いものかと考えた末,臍帶結紮に依る兒の一次死亡に依り二次的に陣痛を誘發せしむる方法を考案,その詳細を記述して諸兄の御追試を希望する.

座談會

分娩誘發法について—長谷川教授・安井博士を中心にして

著者: 秦淸三郞 ,   佐々木計 ,   長谷川敏雄 ,   木下正一 ,   安井修平 ,   安藤畫一 ,   眞柄正直 ,   樋口一成 ,   中島積 ,   外川淸彦 ,   澤崎千秋 ,   藤井吉助 ,   柚木祥三郞 ,   山田康

ページ範囲:P.209 - P.216

 座長 分娩誘發法の問題は,その方法のこともありますが,殊にその適應,例えば母體が病氣であるとか,出産豫定日を過ぎた場合とかにどうするかと云う點で色々意見があると思います.先づ總論として,長谷川教授に皮切りをお願いしたいと思います.
 長谷川 まず,分娩誘發法の定義ですが,これは陣痛が自然に起つて來る前に人工的にこれを起させて分娩させると云うことで,謂はば人工妊娠中絶法と同意語であるわけですが,それはあくまで徐々に陣痛を起させる方法を云うのであつて,一擧に胎兒を出してしまう妊娠早期に於ける子宮内容除去術,或は後半期乃至末期に於ける膣式乃至腹式帝王切開術等は共の範圍外であることは云うまでもありません.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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