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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科4巻9号

1950年09月発行

雑誌目次

綜説

子宮頸癌に於ける骨盤内リンパ節の態度(2)

著者: 高木聰一郞

ページ範囲:P.341 - P.345

3.リンパ節の一般病理
 先ず最初に細胞成分について言えば第1にリンパ節が靜止状態の時には網状織細胞は少いが病的の時には増加する傾向にある.なほ共に内皮細胞も増加するが兩者の區別は形態學的には確然と區別出來ない.唯染色上網状織細胞の原形質中にはKarminkörnは見出されるが内皮細胞のそれは少い.プラスマ細胞は正常の状態でもリンパ節の中にあるか否かは未だ判然としない.此れは支配神經を切斷すると多くたり退行性の變化を起す.然し大體漫性炎症の際に見られるし,炎症が去つた後でも長い間存在するものである.通常しかしこれは髓索の中にあつて胚中心には見出されないものである.Russel氏小體についてはプラスマ紬胞と同様な考え方がある.
 これは赤血球の如く赤く染まる小體で細胞の原形質の中に出來る.Sternberg(14)は人間のリンパ節中には正常の状態で見られるが動物のリンパ節では稀であるとしている.これが全く正常の状態でも現われるか或は個體の變化を現わすものであるかはなわ疑問の存在する所である.然し病的の變化が感得される組織に現われることは一應確實である.

原著

神奈川縣下女學生の月經調査—戰爭が女學生月經に與えた影響に就て

著者: 松本淸一

ページ範囲:P.346 - P.352

1 緒言
 種々生活の變化が月經に變化を起す事は既に周知のことで,Mayer1)は若年婦人が就職した際機能無月經を招來することがあるのを,Nordmeyer & Howe2)は前大戰後のドイツで都市から田園に移住させて農業勞働を行わせた14-15歳の少女の61.9%に,又同時代の勤勞奉仕工場勞働者の39.5%に無月經發來を認め我國でも新谷3).佐藤4),梶川5),八木6),桐原7)等は女工その他の勤勞者で就職時の月經變化,就中無月經に就て報じている.一方戰時の我國では戰況の緊迫化に伴い,戰災,疎開,防空,勤勞動員,或ほ榮養不良等の社會生活上の變化或は惡生活環境が生じ,之が因となつて多數婦人に機能無月經を起させ,所謂戰時無月經なる著しい現象として認められた事は先に余8)9)の報じた所で,山本他3氏10),[井上11),高知12).花岡13)等も同様事實を認めている.又戰時惡環境下の勤勞者或ほ動員學徒等の月經に就ても多くの調査がなされ,山本等10)は女學生,余14)は看護婦及び女工,松岡15)は勤勞動員女學生井上16)は挺進隊員,畑瀨17)は勤勞動員女學生,塚田18)等は同樣動員學徒,挺進隊員及び看護婦,尼木19)は女學生に就て夫々月經の變化乃至無月經の多く見られた事を報じている.

騎袴麻醉(Saddle block Anesthesia)による無痛分娩(第1報)

著者: 森新太郞

ページ範囲:P.353 - P.357

緒言
 無痛分娩に關しては從來種々の藥劑や樣式があるが,何れも其の成績不定,技術困難或は母兒への副作用等のため一般的ではなかつた.特に本邦では産痛に堪えるを以て婦人の美徳なりとする觀念が根強く,之れに無痛法に對する資材の不完備不足及び分娩が主として助産婦に委ねられている等の不利も加わつて之等の研究も泰西より遙かに遲れ,氣輕に行われ而も安全且確實なる無痛法の發表には接せない状態であつた.
 1946年米國Neworlerns Charity HospitalのAdriani及Roman-Vegaは麻醉がsaddle(鞍)部分(内臟會陰を含む)に局限される一種の低位腰椎麻醉法を考案し"saddle block"なる名稱を付けた.此の手技は同年同病院のParmley及Adrianiにより分娩時無痛法に應用されその安全性と簡易性を提唱するに至り米國では現在盛んに追試せられ1949年始めまでに文獻例數丈でも約6,600例で現在では既に10,000例を突破していると思われる状態である.而して1948年末J.H.Waltonは之れの綜説を發表している.

母體身長と妊娠子宮底長との相關關係に就いて(その1)

著者: 明石政雄

ページ範囲:P.358 - P.366

緒言
 妊娠時期の診斷は産科學上極めて重要な問題であつてこの判定は問診より得られる最終月經受胎せる性交日,惡心,嘔吐の開始日,胎動の初感日或は檢査より得られる子宮體の大さ,子宮底の長さ,胎兒身長兒頭の大さ,硬さ,腹圍の大さ並に妊娠各月に特有と見られる其の他の内外診所見等々の總べてを綜合して初めて下されるべきものであつて單にその一二のみに拘泥すべきものでない事は勿論であるが判定の實際に當つて最も普通に用いられ且妥當な方法は最終月經を主な標準となし子宮體の大さを參考として判定する法である.而して最終月經が不明或は不詳の場合には子宮體の大さを主な標準として妊娠時期を判定しなければならない.然るに從來は移動性高い臍を基準とし然も子宮底の高さを以つて妊娠時期を判定しておつたのであるが獨のPiering氏本邦の今井氏以來安藤,白木氏等の賛同を得て移動性高い臍を棄て固定點たる恥骨結合上縁を基準とし然も子宮體の大さ即ち子宮底の長さを測定する法の最も妥當なる事が最近認められるに至つた.この方法に依る妊娠時期判定に就いてはその後藤井,木村,川北,國定,尼崎等に依る多くの研究報告がある.

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子宮腔の閉塞

ページ範囲:P.352 - P.352

 〔問〕 掻爬によつて子宮腔の閉塞が起る頻度は,妊娠しているもの又は妊娠していない子宮についてどの位でありましようか。
 〔答〕妊娠した又は妊娠していない子宮において,掻爬に原因する子宮腔の閉塞の生ずることは稀なことである。報告された例はすべて特異的なものであつて,その大部分は外國の誌上に發表されたものである。最近に,A humaba (Bol.Soc.de obstet.Y Ginec.de—Buenos Aires 28:394,1949)は二つの例を報告している。彼は文献をしらべた結果,60例の報告があることを知つた。この問題について最も價値ある報告は,S. Stomer (Aeta.Obst.et Gyn.Scamdinav.26:263,1946)のものであつて,それには24例がのせられている。勿論,子宮腔の閉塞の例は,報告されている數よりも實際には多く起つているものである。

優生保護法指定醫基準と醫師會の指定醫選定方法

ページ範囲:P.375 - P.375

 第2回國會を通過した優生保護法は,9月10日より全面的に施行されるが,同法における人工妊娠中絶は第12條の都道府縣の區域を單位として設立された社團法人たる醫師會の指定する醫師が行うことになっているので,日本母性保護醫協會では長谷川敏雄,安藤畫一,久慈直太郎,小畑惟淸,大畑仁男,平林俊一,中山盛祐の諸氏を委員に擧げ檢討の結果,優生保護法指定醫師に關する注意事項,指定醫の選定標準を決定し日本醫師會に意見書として提出したので,日醫では8月22日と同29日の2回に亘つて檢討の結果次のような成案を得た。日醫では該標準を直ちに都道府縣醫師會長に通達し9月11日より施行される指定醫更新にそなえる事となつた。
 指定醫を選定する場合には下の3條件を具備する者を選んで貫いたい1技術 官公立病院又は醫育機關に 於て2年以上産科の專門技術を修 得し,又は10年以上産科を專門に 事したる醫師を診療主任とする病 醫院に於て3年以上專門技術を修 得した者或は5年以上産科を標傍 して開業せるもの。

症例研究

興味ある經過を示したBroeq氏先天性魚鱗癬樣紅皮症の1例

著者: 本橋博文

ページ範囲:P.367 - P.371

緒言
 先天性魚鱗癬樣紅皮症Erythroclermia ichthy—osiformis congenitalisは出生時より全身皮膚に顯著な潮紅と角質増殖水泡形成等を發現する.極めて稀な失天性全身皮膚疾患である.本症はBrocq氏がその2例を得て,1902年に記載して以來一般に注意されるに至り,そのため特にBrocq氏先天性魚鱗癬樣紅皮症と呼ばれているものであるが,然しそれ以前UidalがHyperepiderotro—phie generaliseeとして報告している1例(1881)及びSangsterが"A case of congenital exfoli—ation"として報告している症例(1895),更にRaschが記述しているErythrodermia exfoliativa universalis congenita familiaris (1901)は何れも本症に屬するものであつたといわれる.その後の諸外國の報告例数は相當の數に逹しているが,本邦では極めて乏しく,後述する先天性魚鱗癬Ichthyosis congenitaを除けば西村氏のもの(昭8)を嚆矢として余は僅かに7例を知るのみである.余は最近,本症の異常經過を見せた1例を經驗したので,その實驗例を示し,且つ少しく考察を試みたい.

結核性子宮筋層炎(?)の1例

著者: 鈴木辰夫 ,   笠間ユキ

ページ範囲:P.371 - P.372

 性器精核の好發部位は卵管で卵管結核は,女子性器結核中約80%に逹し,子宮は之に次ぎ約11%を占むるに過ぎない.而してその殆んどすべてが結核性子宮内膜炎で,子宮筋層が結核浸潤を蒙ることは稀であると云われている.從つて子宮結核の場合はWeibelの云う如く,子宮の形及び大きさは殆んど變化せず.むしろ小さいことが多いのである.偶々吾が教室に於て子宮結核が筋層炎を併發して子宮が甚しく膨大したが,主としてレ線深部照射治療により殆んど治癒せしめ得た1例を經驗したので茲に報告する次第である.

診療室

帶下の治療について

著者: 藤井久四郞

ページ範囲:P.373 - P.375

 7月24日に東京地方部會でこのテーマをとりあげて座談會をした.この問題は古くから診療室での惱みのたねであつたが,化學療法やホルモン療法がかなり進歩した今日に於ては,どのように變化しておるであろうか,興味の必ずしも少くないことであろう.私は傍聽者として當日の記臆をたどりその大勢を讀者のかたにお傅えしようと思う,
 先ず帶下は多かれ少かれ,婦人に認められるものであろが,生理的と病的との限界はどこにおかれておるかの問題がある.眞柄教授は,Papanic—olaouの膣内容塗抹標本の研究によりSchroderの膣清淨度の概念がかなり改められねばならぬことを指摘し,また膣内容の酸度に對しては膣内杆菌よりもエストロジェンの重要視すべきことを述べられた.すなわちSchroderの第1度というのは白血球を含まず上皮細胞と膣杵菌だけが膣内容に證明される場合であるが,これだけが正常状態であるという考え方は正しくない,何故ならば膣内容の形態は月經周期によつて變化し,排卵前期には第1度の状態が見られるが,排卵後期には白血球がかたり多數あらわれ,上皮の形態も複雜になつて來る.そして細菌も必ずしも杆菌のみではなくなる.

海外文献

最近の産科界諸問題についての批判

著者: D.E. ,   M.E.

ページ範囲:P.376 - P.381

 最近産科患者と新生兒についての在來の考え方に對していろんな疑義が生じするどく批判される傾向が見える.たとえば分娩時の疼痛が生理的に必要なものであるという見解と,鎭痛剤ないし麻醉剤を用いる方がよいという説とが對立している.そのほか在來の妊娠と新生兒着護法では母體に心理的な惡影響を來すという様な意見も提出されるに至つた.
 これらはすべて近代,産科學の在來の傳統的な處置に對するちよう戰である.尠くとも過去20カ年間在來の常習處置によつてわが國における母體死亡率は,今世紀初頭の夫れの1/10に下つている2.その主要な原因は,産褥熱,妊娠中毒症および子宮出血に對する近代的治療法が進歩發逹したことにある3

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

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