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思い出の写真
思い出のスナップ写真5葉
著者: 尾島信夫1
所属機関: 1聖母女子短期大学
ページ範囲:P.762 - P.763
文献購入ページに移動 故安藤画一先生御夫妻が平泉の中尊寺を訪ねられた時,私がとったスナップ(写真1)。先生は没後今年で18年,咋年は生誕100年にあたったが写真は1941年で岡山大学から慶応の産婦人科教授に御着任後7年目,東京の産婦人科学界に独自の地歩を占めて安藤流の活動が軌道に乗った頃である。私は卒業後先生御着任と同時に入局,5年間教えていただいたが日蘇の国際関係が険悪化して北樺太の炭坑を管理していた兄が抑留されたりして,私が働く必要が生じ,当時の岩手県黒沢尻町(今は新幹線もとまる北上市)の済生会病院に赴任して2年後であった。町は啄木を生んだ北上河畔で冬は寒さがきびしいが春から夏にかけての緑と一度に開く花々は美しく,新家庭にもなれ,外来患者もゼロからボツボツ賑かになり,ただ医学の本流から離れて行く淋しさからそろそろ望郷の念を覚え始めていた頃であった。だから御夫妻の来訪は嬉しくて,喜んで平泉に御案内した。拙宅では縁側に腰かけられてホームメイドのアイスクリーム(町にはなかった)などあがって上機嫌であった。先生は初期の頃,夏になると詰め襟を着られたが,その村長風なところが,素朴謹厳で,また卒直豪快な当時の御性格にマッチしているように感じられた。奥様も明るく優しくて,私も後年のように意見のくい違いも感じなかった。
1951年に飯能方面に医局ハイキングした時の安藤先生と私である(写真2)。
1951年に飯能方面に医局ハイキングした時の安藤先生と私である(写真2)。
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