先進医療—日常診療へのアドバイス 特集
生殖医学の進歩
精子の機能テストとその有用性
著者:
柳沢洋二1
吉田竹郎12
津端捷夫1
高木繁夫1
所属機関:
1日本大学医学部産科婦人科学教室
2豊島中央病院
ページ範囲:P.195 - P.199
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臨床的には日常精液所見が,すべて正常値を満たしているにもかかわらず,不妊となるケースを時に経験することがあり,また逆に超乏精子症でも稀に妊娠することがある。そのため男子の受精能を確認するには,in vitroまたはin vivoで,その精子がヒト卵子先を受精させるかどうかのチェックをすることがもっとも確実である。しかし,ヒトで卵子の採取をすることは容易でなく,これに加えて倫理的にも不妊外来のルチン検査法として実施するには問題がある。1976年,柳町ら1)は,雌性性器内における受精能の獲得,すなわちcapacitationや精子が受精する直前にその運動能が変化するhyperactivationがあり,さらに先体反応(acrosome reaction)のすべてを終わったヒト精子は,透明帯を除去したハムスター卵子に侵入すると報告したが,この方法を用いると形態学的には確認することができないヒト精子のcapacitationやacrosome reactionを起こしたことの間接的な証明が可能であり,ひいては男子の不妊因子の機能的な一面を検索することが可能となる。
しかし本法は透明帯付着卵子でのテストではないので確実な精子の受精能判定とはならないし,また,その技術が煩雑であり,検査経費もかかるため.より正確に,また容易な検査法の出現が待たれてきている。