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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科40巻4号

1986年04月発行

先進医療—日常診療へのアドバイス 特集

重症合併症妊娠

妊娠合併精神障害への対応

著者: 高橋三郎1 池本桂子1

所属機関: 1滋賀医科大学精神医学講座

ページ範囲:P.307 - P.309

文献概要

I.妊婦にみられる精神障害とその頻度
 今日まで「産褥期精神障害」があまりにも有名で,ICD−9でも妊娠,分娩および産褥の合併症の一つとして「648.4精神障害」が記載され,こうした患者の診断・治療に関する文献は多い1〜4)。しかし,妊娠中の精神障害については,産褥期に比べて精神的に安定しているとかなどの通り一ぺんの記載があるだけで,未だにまとまった症例報告がない。実際には,我々の経験から,こうした症例はかなりの数があり,またそのような精神障害を合併した妊婦の対応はなかなか難しい。
 我々の臨床経験からいえば,産後一定の期間に集中して発病する証拠のあるものは,裏返しにいえば,他の時期には頻度が低いといえる。精神分裂病の場合,その発病または症状増悪は,妊娠中にも産後6カ月の何時の時期にも散発的に見られる1,2)。以前我々の報告したように,妊娠20週を過ぎてから病像の悪化する例が多々あり2),その一因として,患者が服薬の継続を止めることも考えられる、産後2週間以内に急性に発病し,短い経過をとり寛解する非定型精神病は狭義の産褥精神病と考えられるが1),このような形は妊娠中にはなられない。躁病とうつ病を繰り返す双極性障障(躁うつ病循環型)の場合,産後6カ月に発病する危険が60%増大するが3)他の時期には安全であるという意味ではない。実際我々の経験した症例でも妊娠20週−39週で躁病を発病した3例がある(表)。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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