先進医療—日常診療へのアドバイス 特集
免疫療法の評価
免疫性不妊の治療
著者:
香山浩二1
杉本幸美1
繁田実1
所属機関:
1兵庫医科大学産婦人科教室
ページ範囲:P.345 - P.347
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不妊症の原因となる免疫因子として,抗卵抗体と抗精子抗体が注目されている。前者に関しては.実験的に卵細胞を取り巻く透明帯に強い抗原性があり抗透明帯抗体を卵に反応させることにより透明帯への精子の結合と貫入が宮しく抑制されることが証明されているが,臨床的には未だ抗透明帯抗体が不妊婦人に特異的に検出されるという証拠に乏しく,したがってその治療法に関してうんぬんする段階に至っていない。後者に関しては,婦人が夫精子に反応して産生する同種抗精子抗体による女性不妊と,男性自身が自己の精子に反応して産生する自己抗精子抗法による男性不妊が含まれるが,両者において臨床的にも比較的抗体と不妊との因果関係がはっきりしており,また抗精子抗体による不妊症の発生機序が解明されてくるに従って,精子免疫による不妊症の治療法に関しても検討が加えられるようになってきた。現在試みられている治療法は大きく2つに分かれ,1つは抗原の刺激を絶ち,あるいは免疫抑制剤の使用により積極的に抗体の産生を抑制しようとする方法であり,他は精子免疫による不妊の発生機序を解明し,その障害機序を克服して,抗体の存在下で積極的に妊娠を試みる方法である。前者の治療法に相当するものとしてコンドーム療法とステロイド療法があり,後者の方法として人工授精(AIH)と体外受精—胚移植(IVF-ER)が試みられている。