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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科40巻8号

1986年08月発行

先進医療—日常診療へのアドバイス 特集

胎児心拍数曲線の考え方—発現機構とその調節 Current concept

胎児心拍数曲線の臨床的意義

著者: 前田一雄1

所属機関: 1鳥取大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.569 - P.579

文献概要

 胎児心拍数図記録は,古くから分娩時胎児監視に使われ,わが国ではその装置を分娩監視装置と名づけて広く用いてきた。その結果,分娩時の胎児仮死(fetal distress)が判明するようになり,急速遂娩がこれに対して行われ,胎児予後を改善し,周産期の死亡や罹病が減少するようになった。この成績から,最近では妊娠中にもNSTとして胎児心拍数図検査が行われ,妊娠時胎児仮死の診断と処置が可能になり,胎児予後はさらに改善された。
 胎児心拍数図は以上のように胎児管理に有用であり,その使用はさらに普及拡大されねばならないが,一方最近では胎児仮死の病態の主体が胎児低酸素症(fetal hy—poxia)であり,この際に急速遂娩術が甚だ有用なことが明らかになった。しかし以前の胎児仮死の定義では,本症は胎児胎盤系における呼吸循環不全を主徴とする症候群とされたため,広い意味では先天心疾患による心拍律動異常まで含まれて解釈されることがままある。胎児の心血管系奇形や律動異常は最近の超音波診断法の進歩によって診断可能になっているが,これらの疾患には胎児心拍数図異常を伴うことが多く,したがって広義の胎児仮死に含めて取り扱われる場合があるが,このような先天心疾患では必ずしも急速遂娩や早期娩出を要しない例があり,胎児低酸素症とは治療上同一に取り扱うことは困難で,したがって両者は区別して診断することが必要である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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