症例
AFP産生性子宮内膜腺癌の1例
著者:
加藤潔1
細川仁1
川端正清1
栗栖久宣1
泉陸一1
所属機関:
1富山医科薬科大学産婦人科学教室
ページ範囲:P.617 - P.620
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AFPは胎児性癌(樋口・加藤),肝細胞癌,肝芽腫の腫瘍マーカーとしてよく知られているが,胃癌・肺癌・腎癌などでもAFP産生例が報告されている。しかし,子宮内膜腺癌での報告はみられないようである。今回AFPを産生していると考えられる子宮内膜腺癌を経験した。症例は65歳,4G3P。血性帯下を主訴として来院。子宮体癌Ib期の診断にて,準広汎性子宮全摘術+両側付属器摘除術+骨盤内リンパ節郭清術を施行した。組織学的には低分化腺癌であった。術前血中AFP値は1,950ng/mlであったが術後速やかに正常値に復した。また,酵素抗体法にて組織内でAFPの局在を証明し得た。さらに教室における子宮内膜腺癌例について検討を加えたところ本例以外にも1例において,AFP値が40ng/mlと軽度高値を示した。この例では免疫病即組織学的には組織内AFPの存在は証明できなかったが,術後,血中AFP値は正常域に復した。以上のことより,特異的マーカーの少ない子宮内膜腺癌において,血中AFP値を測定することは価値があることと考える。