特集 腫瘍マーカー
癌・胎児抗原の基礎—2種の癌・胎児(盤)酵素を中心として
著者:
野澤志朗1
木口一成1
宇田川康博1
青木大輔1
久布白兼行1
矢島正純1
飯塚理八1
成沢園子2
所属機関:
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
2慶応義塾大学医学部婦人科病理研究室
ページ範囲:P.31 - P.39
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現在腫瘍マーカーと定義されるものの中には数多くの物質が包含されるが,代表的なものに癌・胎児抗原がある。これはCEAやα—fetoproteinに代表されるように「胎児期には産生されているが,成人体内では殆ど検出できなくなる物質の中で,癌細胞で再び産生されるに至った物質」であり,その発現機序としては「発生の段階では発現していた遺伝子が,細胞の分化・成熟に伴い発現が抑制repressされ,癌化に伴う脱抑制derepressにより再び遺伝子が発現してきた」ためと解釈されている。そこで本論文では腫瘍マーカーとして臨床的有用性の期待できそうなガラクトース転移酵素(galactosyl transferaseの頭文字をとり以下GTと略)のアイソザイム2(GT−2)と胎盤型アルカリフォスファターゼ(placental alkaline phosphataseの頭文字をとり以下PLAPと略)という2種の酵素をとり上げ,その臨床的意義,癌・胎児抗原的性格の有無,更にはその発現機序等について述べてみたい。
なお癌・胎児抗原という単語中で使われている胎児の概念には,発生途上にある組織という意味合いが大きく,従って同じ受精卵から出来る胎盤もその概念中に含まれていると考えられるので,本論文では胎児抗原に胎盤より産生される物質も含める意味で,胎児(盤)抗原という術語を使用したい。