文献詳細
特集 話題の感染症
ATLと母児感染対策
著者: 一條元彦1 安藤良弥1 森山郁子1 斉藤謙介1 古木和夫1 垣本和宏1
所属機関: 1奈良県立医科大学産婦人科学教室
ページ範囲:P.921 - P.923
文献概要
ATLは地球上限られた地域に分布し,カリブ海沿岸地域,西インド諸島,アフリカ,日本において多発するのが不可解な点である。日本における分布は日赤の昭和61年11月〜63年2月中の献血者の検査成績に基づくと,ATLの病因ウイルス(HTLV—Ⅰ)キャリア率は北海道1.38%,東北2.19%,関東1.38%,北陸・東海1.29%,近畿1.75%,中国・四国1.52%,九州・沖縄5.82%で,南西日本に高頻度に見られる。ATLは,ウイルスによる発癌が人類史上初めて明らかになった疾患である。ATLの病因ウイルスHTLV-Ⅰは形態学的にはC-type retro virusに属し2),逆転写酵素をもつRNAウィルスである。一般にHTLV-Ⅰは循環血液中にfree virusとしては存在せず,T-cellのDNA中にプロウイルスとして組み込まれている。それゆえにHTLV-Ⅰの感染成立には,HTLV-Ⅰ感染細胞による細胞接触が必要であり,free virusによる感染は通常起こりえない。
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