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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科42巻12号

1988年12月発行

雑誌目次

特集 生殖免疫

免疫学的不妊症

著者: 佐治文隆 ,   谷澤修

ページ範囲:P.1073 - P.1077

 挙児を希望するにもかかわらず,約10%の夫婦は不妊症である。さらにこれら不妊夫婦の10〜20%は原因が特定できない不妊症であり,おそらく精子機能異常,受精不全,初期胚発育不全あるいは着床不全などに起因するものと考えられている。これら原因不明不妊症のうち,約20%が免疫因子によって起こる「免疫学的不妊症」と推定される。
 女性の生殖器である腟,子宮内膜,卵管,卵巣あるいは腹腔は,その生涯を通じて種々の抗原刺激にさらされる。女性生殖器に侵入する抗原には,少なくとも以下の4種がある。

免疫学的流産

著者: 八神喜昭 ,   青木耕治

ページ範囲:P.1079 - P.1083

 近年の新しい免疫理論によって,「免疫とは,外来抗原が侵入したときのみ発現する一時的な外向きの反応ではなく,リンパ球が常に自己標識(自己classⅡ抗原)を認識しつつ,動的平衡状態を保っている内向きの反応で,1つの閉鎖したネットワークである」ということが明らかにされてきた1)
 このような巧妙かつ複雑な免疫応答調節機構をもつ母体中に,異物としての胎児が拒絶されることなく免疫学的平衡状態を維持している「妊娠現象」とは,更に難解かつ魅惑的な現象といえる。

胞状奇胎

著者: 金沢浩二 ,   本間滋 ,   竹内正七

ページ範囲:P.1085 - P.1089

Ⅰ.胞状奇胎に関する免疫学的概念
 正常な妊娠物conceptusが,精子と卵子の1対1の受精により形成されるのに対し,全胞状奇胎total hydatidiform mole (以下奇胎)は細胞遺伝学的解析により,精子の核成分と卵子の細胞質より発生するいわゆる雄核発生androgenasisであることが明らかになっている。すなわち,Q—,R—分染法による染色体分析から,奇胎染色体には母親由来の染色体は存在せず,父親の相同染色体の一方にのみその由来が求められることが判明した1,2)
 従来より奇胎の発生に関し,trophoblastの腫瘍性増殖がprimaryな病態であり,奇胎,侵入奇胎,絨毛癌からなる絨毛性疾患を一連の腫瘍であるとする説も提唱されてきたが,今日では,この雄核発生による胎芽死亡あるいは胎芽発生欠如に続発する一種の自然流産あるいは稽留流産であるとする考え方が一般的となっている3)。多くの自然流産のconceptusに染色体異常が見出されることは周知の事実である。しかし,奇胎では胎芽死亡後conceptusは比較的長期にわたり子宮内に存続し,付属する絨毛組織には絨毛間質の水腫変性hydrop-degeneration,絨毛内血管の欠如avascularity,troPho-blastの種々の程度の増殖trophoblastic hyperplasia等の形態上の特徴があり,自然流産において,胎芽死亡後間もなくconceptusが子宮外に排出され,絨毛組織が変性壊死に陥っているのとは対照的である。また奇胎では,転移奇胎,侵入奇胎という病態が存在し,さらに絨毛癌を高率に発生する等の点で自然流産とは著しく様相を異にしている。

生殖機能と自己免疫

著者: 森崇英 ,   野田洋一 ,   神崎秀陽 ,   井田憲司

ページ範囲:P.1091 - P.1095

 免疫応答は自己を認識することにより始まるリソパ球ネットワークにより構成されている。生体の細胞は内外の諸因子により絶えず変化しているため,自己の組織に起こる異常に対して反応し,それを排除していく自己免疫反応は自己防御にとって必須の生体反応といえる。自己免疫は生体にとって重要な生理的反応であるが,通常は免疫ネットワークに組み込まれて巧妙に調節されているため表面に現われないと考えられている。この調節機構になんらかの破綻が起き,通常では応答を引き起こさない自己抗原までもが排除の標的となり,その抗原に対する抗体産生が認められるようになり,臨床的にも病的現象(組織破壊など)が現われた場合がいわゆる自己免疫疾患である。
 生殖生物学の領域においても,生殖細胞に対する自己免疫によって生殖機能が著しく侵されるという可能性が考えられている。動物実験では,精子抗原で能動免疫を行ったり,あらかじめ免疫しておいた動物よりの免疫細胞や血清を移入することで実験的アレルギー性睾丸炎が引き起こされる1)2)。また卵子を抗原として実験動物を免疫すると,妊孕能が著しく低下することも知られている3)。このような知見は,卵子や精子には自己の免疫応答を起こし得るに充分な抗原性があることを示している。

妊娠中毒症,IUGRと免疫

著者: 近藤泰正 ,   千島史尚 ,   秋山邦久 ,   早川篤正 ,   早川智 ,   今井一夫 ,   高木繁夫

ページ範囲:P.1097 - P.1107

 Human reproductionは生命科学のなかでも最も基本的な問題の一つであるが,これらにはさまざまなミステリーが含まれており,また,多くの考察,展開もなされてきている。すなわち,古くより妊孕現象を移植免疫学的に考察しようとする考え方がある一方,life scienceの急激な進歩に伴って,これらの問題にも画期的側面をもたらされてきており,特に免疫生物学の進歩はlife sci-enceの概念すらも変えつつある。そこで,これらの状況のもとで,妊孕現象を免疫生物学的に考察した多くの報告をみるが1〜8),これらは正常妊娠に止まることなく,妊娠中毒症11,12),流産9,10),子宮内胎児発育不全36,43)などの,さまざまな疾患の病態解明にも応用され注目されている。そして,これらを発展的に考察すると,妊孕現象の免疫学的理解においても,癌細胞の発育と阻止,臓器移植における臓器の生着と拒絶などの問題が,いずれも自然のモデルとして包括されており興味が深い。一方,妊娠中毒症は学説の疾患とも言われているが,その本態についてはなお明らかではない。しかし,近年,妊娠中毒症の病態解明に免疫学的概念を導入し,これよりする研究が報告され注目されている。事実,その発病と病態に対してなされた免疫学的検討は,その病態の解釈とともに,多くの免疫学的関連の可能性があることを示唆している。そこで,私共は妊娠中毒症の病態解明の一環として,私共の知見の一部も加味し,これらの歴史的変遷も含めその可能性につき以下に考察を行う。

免疫学的にみた妊婦感染の特徴

著者: 一條元彦 ,   斎藤滋 ,   斎藤真実 ,   辻祥雅

ページ範囲:P.1109 - P.1112

 妊娠中,母体は胎児という同種移植片を寛容しており,一般には細胞性免疫が低下していると考えられている。事実,妊娠時にはウイルス感染症が重症化しやすいという報告もある1)。妊娠中の母体の感染症では常に胎児への影響を考えなくてはならない。直後,胎児の感染の原因となる場合もあるが,あるいは母体の全身状態の悪化が胎児死亡,流産の引きがねとなることもある。ここでは妊娠時における免疫系の特徴について述べ,妊婦感染について考察を加える。

Overview

生殖免疫—序論

著者: 竹内正七

ページ範囲:P.1069 - P.1071

 免疫学は近年最も急速な進展を示した研究分野である。異物の認識排除という免疫学の基本理論は不動であっても,その機序は複雑にして多岐にわたり,それぞれの亜分野における研究の進歩はまさに日進月歩の感がある。生殖に関する免疫学,生殖免疫学についてみても,それは生殖内分泌学,生殖神経学などと密接な関係をもって,生殖の生理,病理に関する研究分野において重要な位置を占めつつある。生殖にはそれが生理的に運ぶために必須の免疫機序があり,その破綻はいくつかの臨床的病態につながりうることが解明されてきた。また,生殖とは直接関係のない免疫的病態あるいは疾患が,生殖そのものに重大な影響をおよぼしうることも判明してきている。本特集においては,生殖に関連する代表的な臨床的病態がとりあげられており,それぞれ専門的な立場から解説されると思われる。筆者は,その序論として,総論的に関連事項を概説したいと考える。

グラフ 不妊症

Ⅵ.腹腔鏡検査法—不妊症に関連した8症例の供覧

著者: 岩田嘉行 ,   鄭琤琤 ,   栗林靖 ,   斉藤寿一郎 ,   友松守彦 ,   林保良 ,   坂倉啓一 ,   関賢一

ページ範囲:P.1056 - P.1059

 腹腔鏡検査の意義を端的に表現すれば,腹腔内の状態を視覚情報として伝達してくれるところにある。不妊症に関していえば子宮,卵管,卵巣など内性器の形態とその周囲の状態,腹膜病変の検索などがその中心をなす。
 診断への過程からみると,特異な形態から一見して診断が可能なものと,色素注入,剥離,生検,穿刺など操作を付加して後に診断が可能となるものとに大別できる。後者は更に内視鏡下治療へと発展する性格をもつダイナミックな診断法といえる。

指標

妊娠とプロラクチン

著者: 宮川勇生

ページ範囲:P.1061 - P.1068

 この十数年間の生殖内分泌学の進歩のひとつに『Pro-lactinに関する研究』が挙げられる。これは,Flückiger and Wagner (1968)によるprolactin (PRL)分泌抑制作用のある2-bromo-α-ergocryptine[bromocriptine (Br)]の開発,そしてLewisら(1971),Friesenら(1971)によるヒト下垂体からのPRLの分離精製,これに続くHwangsら(1971),Sinhaら(1973)によるPRLのradioimmunoassayの確立によるところが大きい。PRLの生物作用については,Strikerら(1928)がウシ下垂体前葉抽出物質中に偽妊娠家兎の乳汁分泌促進因子を発見したことに始まり,これまでに100種類に及ぶ多彩な異なった作用が報告されている。その主なものは生殖機能への作用,乳腺の発育促進と乳汁分泌作用,皮脂腺などの成長への作用,水・電解質調節作用,steroid hormoneとの協調作用などである。
 私達は,これまでPRLの生殖作用に関するいくつかの研究を報告してきた1-10)。ここでは主に母体,胎児,羊水の3つのcompartmentsにおけるPRL動態およびその生物作用を中心とした研究について述べる。

トピックス

胎盤機能不全による胎児発育遅延例に少量のアスピリン療法を/妊婦に投与したrelaxinの子宮頸管熟化作用

著者: 広井正彦 ,   田部井徹

ページ範囲:P.1089 - P.1089

 近年,種々のME器械が開発され胎児の発育状況を時々刻々にとらえることが出来るようになった。胎児の臍帯動脈の血流速度を測定し,胎児の発育を知ろうと試みる方法もその一つである。この血流波型は胎盤における血管壁床の抵抗や胎盤機能の低下とも関連し,動物実験ではthromboxane類似物質の注入により異常波型が出現することから,thromboxaneが血管壁の収縮や血小板の凝集を促進するために惹起するものと推察される。一方,少量のaspirinは母体に投与することにより母児の循環系に作用し,cyclooxy-genase酵素によりarachidon酸がらthromboxaneの形成を抑制することが知られている1)。そこでTru-dingerら2)は臍帯動脈血流波型から異常と判定された胎盤機能不全患者にaspirinを投与し,その効果を検討した。

生涯研修セミナー 絨毛性疾患

絨毛性疾患の日産婦分類

著者: 山辺徹

ページ範囲:P.1113 - P.1118

 1982年に日本産科婦人科学会では日本病理学会との合同による絨毛性疾患に関する分類と診断基準を提示した。臨床的には,①胞状奇胎,②絨毛癌,③存続絨毛症に大別されたが,胞状奇胎については,より正確を期するために全奇胎,部分奇胎,侵入奇胎がそれぞれ独立して分類された。本項ではこの新しい日産婦分類と診断上の注意点について解説する。

胞状奇胎の診断

著者: 川島吉良

ページ範囲:P.1119 - P.1124

 胞状奇胎の診断に際しては,妊娠初期に不正子宮出血を起こした場合,本症の可能性も考慮して診察を進めることが肝要で,これに強度悪阻症状,妊娠中毒症状を合併しておればその可能性は否定できない。双合診所見として過大妊娠子宮,胎児徴候の欠如,卵巣ルテイン嚢胞,強度リビド着色,子宮出血を認め,超音波断層法で子宮内嚢胞エコー像,尿中hCG値100万iu/l以上を証明すれば本症と確診される。
 以上は全胞状奇胎の典型的所見であるが,数年前より地域登録において部分奇胎が明示されるようになって以来,奇胎の約30%が部分奇胎と報告されている。これらは妊娠初期の人工中絶例や自然流産例に絨毛の一部が直径2mm以上に腫大嚢胞化して認められたものが大多数である。稀れに妊娠末期まで継続し胎児と共に胎盤の一部に嚢胞が散在して認められるものがある。

存続絨毛症—特に侵入奇胎と絨毛癌との鑑別診断

著者: 友田豊 ,   石塚隆夫 ,   後藤節子

ページ範囲:P.1125 - P.1131

 1986年に日本産科婦人科学会による絨毛性疾患の新しい分類が採用され1),絨毛性疾患は胞状奇胎,絨毛癌,存続絨毛症に分類されることになった。その詳細については別稿に述べられているので,ここでは存続絨毛症について,特に侵入奇胎と絨毛癌の鑑別について述べたい。

絨毛癌の予後診断

著者: 友田豊 ,   石塚隆夫 ,   後藤節子

ページ範囲:P.1132 - P.1136

 Hertzが絨毛癌と侵入奇胎の組織分類と予後とは無関係であると報告1)して以来,欧米では絨毛癌と侵入奇胎を区分しないで予後診断を行うことが一般的である。この目的で作成された分類や予後スコアとしてHammondの分類,Bagshaweの予後スコアなどがある。
 一方,日本においては予後に本来差のある侵入奇胎と絨毛癌を厳密に区分した上で,治療成績を論ずる報告が多い。

胞状奇胎の管理

著者: 竹内正七 ,   金沢浩二 ,   鈴木孝明 ,   八幡剛喜

ページ範囲:P.1137 - P.1141

 正常妊娠の絨毛細胞は妊娠終了後に体外に排出されるが,胞状奇胎の絨毛細胞は体内に遺残しやすい。絨毛細胞が長期にわたって遺残すると癌化の機会を増すことになる。そこで奇胎の適正な管理により続発絨毛癌の発生率を低下させることが必要である。奇胎の管理は一次管理と二次管理に分けて考えられている。一次管理とは奇胎組織の体内からの完全消失までをいい,二次管理とは続発してくる絨毛癌の早期発見・早期診断を目的とするものである。以下,その実際について述べる。

絨毛癌の治療

著者: 松井英雄 ,   小林治 ,   高見沢裕吉

ページ範囲:P.1142 - P.1145

 有効な化学療法のなかった時代の絨毛癌の治療法は,手術療法,放射線療法であった。しかし絨毛癌は高率に血行性転移をきたす疾患であり,画像診断上転移巣が確認されない症例でもミクロのレベルでは転移,ことに肺転移が存在すると考えるのが妥当である。このため手術療法,放射線療法などの局所的治療には一種の限界があり,この時代の寛解率は20〜30%にすぎなかった1)
 その後MrX (methotrexate),Act-D (actinomycin-D)などの有効な抗癌剤の導入,奇胎登録管理制度の充実による絨毛癌の早期発見・早期治療,hCG (human chorionic gonadotropin)測定法の進歩などにより絨毛性疾患の寛解率は年々向上し,70〜80%の完全寛解も報告されている。しかし再発症例,薬剤抵抗性症例の予後は十分ではなく,これら難治性絨毛癌に対する治療法の確立が望まれている。

トピックス

奇胎に合併する肺塞栓症

著者: 相馬廣明

ページ範囲:P.1146 - P.1148

 胞状奇胎においては絨毛細胞が母体血中に遊離して肺動脈血行流域に塞栓を起こすことが,ときにみられる。この場合胸痛やチアノーゼ,咳嗽,頻呼吸,頻脈などが出現するが,さらに肺動脈・末梢血管の閉塞が起これば急性呼吸不全症状を伴って死に至ることもある。本項では当教室で経験した症例に即して,その発症と経過,さらに治療の実際について言及する。

Placental site trophoblastic tumor

著者: 小幡憲郎

ページ範囲:P.1149 - P.1152

 本症は1976年Kurmanによって絨毛性偽腫瘍trophoblastic pseudotumorと呼称されて以来注目されるようになった。この呼称は本疾患が極めて良性の経過をたどること,また,その本態は合胞細胞性子宮内膜炎でみられる絨毛細胞が異常増殖したもので合胞性子宮内膜炎または合胞性子宮筋層炎の特殊型で真の腫瘍とは考え難いところから由来する。しかしその後,本症の中に悪性の経過をとるものがあるなどの理由から腫瘍であるとする考え方が一般的となり,胎盤付着部絨毛性腫瘍placental site trophoblastic tumorと呼ばれるようになった。以下,その診断と治療について概説する。

hCGの糖鎖構造変化と診断

著者: 望月眞人 ,   西村隆一郎

ページ範囲:P.1153 - P.1156

 ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は絨毛性疾患においても活発に産生,分泌され,その腫瘍マーカーとしての高い有用性が絨毛性疾患の診断や治療を高度に体系化させ,その予後を飛躍的に向上させてきた。と同時に絨毛性疾患におけるhCGは妊娠時のものと果たして同じものなのであろうかという質的な面での疑問もまた古くから投掛けられてきた。近年,細胞の癌化に伴い,産生される蛋白や糖の構造に変化の生じる場合のあることが次第に明らかとなりつつあるが,糖蛋白ホルモンであるhCGについては古くからその糖成分における変化が荷電性やホルモン活性などから間接的に推察されてきた。1981年我々は1)1例の絨毛癌患者の尿中よりシアル酸を全く含まないhCGを抽出,精製したことで,癌性糖鎖変化に関する研究の緒をつかみ,さらに具体的な構造解析へと研究を進めた。ここでは,絨毛細胞の腫瘍性変化に伴うと考えられるhCG糖鎖の構造変化とその臨床応用における意義について述べる。

部分胞状奇胎と鑑別を要する胎盤中隔嚢腫

著者: 小幡憲郎

ページ範囲:P.1157 - P.1159

 全胞状奇胎と部分胞状奇胎の定義・診断基準は肉眼的所見によることが明記された。絨毛性疾患地域登録成績によれば,胞状奇胎を全奇胎と部分奇胎に分けて登録を開始した昭和56年の部分奇胎の比率—部分奇胎×100/(全奇胎+部分奇胎)—は19.5%であるが,この比率は増大し,昭和61年には39.5%である。一方,胞状奇胎(全奇胎+部分奇胎)の発生率は女性人口10万対でみると明らかに減少しているが,出生1,000対比あるいは妊娠1,000対比でみると昭和46年〜61年の16年間ではほぼ一定の割合で推移している。このような部分奇胎の相対的増加の理由の一つに胎盤・絨毛の観察がより注意深く行われるようになったことがあげられよう。
 胎盤を詳細に観察すると,胎盤実質内に嚢胞性病変を認めることはそれほどまれでない。このような胎盤内嚢胞性病変の内,部分胞状奇胎との鑑別を要する病変に胎盤中隔嚢腫がある。本稿では胎盤中隔嚢腫の臨床病理学的特徴と胎盤内奇胎絨毛(部分胞状奇胎)との鑑別診断の要点につき概説する。

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「臨床婦人科産科」第42巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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