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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科42巻7号

1988年07月発行

文献概要

特集 腫瘍免疫療法の試み

癌治療におけるモノクローナル抗体の応用

著者: 金沢浩二1 高橋完明1 竹内正七1

所属機関: 1新潟大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.645 - P.649

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 1975年KohlerとMilstein1)によってモノクローナル抗体の作製法が発表されて以来,数多くのモノクローナル抗体がつくられてきた。婦人科腫瘍に関連するモノクローナル抗体だけで少なくとも数10以上報告されており,代表的なものを表2)に示す。モノクローナル抗体は,癌の診断にはすでに用いられているが,治療にはまだほとんど用いられておらず,せいぜいphase I studyの段階にすぎず,特に婦人科癌領域では我々の知る限りイギリスのグループからの報告があるのみである。治療に応用されない理由としては,第1に,癌細胞一つ一つの多様性heterogeneityのため1種類のモノクローナル抗体では癌組織内のすべての癌細胞に反応することができないということである。第2には,例えば漿液性卵巣癌の診断に用いられているOC−125(CA−125キットに使われているモノクローナル抗体名)は診断に有用であるが,子宮内膜症や妊娠でもしばしぼ陽性となることがあるように,表に示したモノクローナル抗体のほとんどが非癌組織あるいは正常組織にも反応することが多いということである。第3の理由としては,これらのモノクローナル抗体はマウス抗体であり,ヒトに投与すると抗マウス免疫グロブリン抗体を産生するということである。抗マウス抗体はモノクローナル抗体が癌細胞に到達するのを阻害する他,アナフィラキシーショックの原因ともなりかねず,反復投与することが不可能なわけである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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