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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科42巻9号

1988年09月発行

雑誌目次

特集 手術療法の進歩

子宮体癌

著者: 荷見勝彦 ,   平井康夫

ページ範囲:P.803 - P.806

 悪性腫瘍の治療には,手術療法,放射線療法,薬物療法,免疫療法などがあるが,各腫瘍によりこれらの治療法の重要度が異なる。子宮体癌では手術が基本的な治療法である。特に体癌のⅠ期とⅡ期では手術が主要な治療法であるが,その切除範囲,リンパ節廓清の必要性とその範囲,補助療法としての放射線治療の役割,術前の画像診断の価値,縮小手術の適用範囲など,多くの未解決の問題がある。
 本稿ではまずⅠ・Ⅱ期の代表的な治療法を総覧し,次いで体癌手術療法の問題点につき論ずる。

子宮頸癌

著者: 園田隆彦

ページ範囲:P.807 - P.809

Ⅰ.根治性向上目的の手術の進歩
1.進行癌における手技的根治性の向上
 癌手術の根治性は,癌巣を遺残させないため,切除の境界が正常組織で囲まれていることである。したがって,癌占居部位の正確な診断,換言すれば,進行期〜TNM分類の正診が可能であることを前提とする。CT—scan〜超音波断層法,すなわち画像診断が近年加わったことは,この意味からすれば,大きな進歩である。進行癌がまだ充分に切除可能な正常組織で囲まれていれば,当然そこへの到達法と切除後の欠損修復法が工夫される。
 骨盤除臓術では子宮頸部が膀胱に近接しているため前方除臓術が多いが,膀胱合併切除は比較的容易な手技であり,むしろ,併施する尿路変向法が従来問題であった。one stomaですむ回腸導管造設が各施設でかなり安全に成功していることは進歩であると考えられる。

卵巣癌—後腹膜リンパ節郭清術を中心として

著者: 寺島芳輝 ,   横山志郎

ページ範囲:P.811 - P.814

 卵巣癌の治療として手術療法,化学療法,放射線療法等を用いた集学的治療がおこなわれ,かなりの効果をあげつつある。特に卵巣癌化学療法へCDDPが導入されて以来,奏効率の上昇や進行例中でのCR,PR例の増加も期待できるようになり,卵巣癌は着実にTotalの治療効果としては改善をなしとげつつある1,2)
 しかし,延命効果として見れば,依然として進行癌例の予後は充分なものとはいえず,その取り扱い方や現在までの卵巣癌に対する集学的治療のあり方への見直しの議論もたかまりつつある。最近FIGOより卵巣癌の新臨床進行期分類3)が提唱されたが,その中にも後腹膜リンパ節および鼠径リンパ節への転移の有無の確認という新しい項目がとりあげられている。つまり傍大動脈リンパ節郭清を含めた後腹膜リンパ節郭清術がstagingに必須となるばかりでなく,新しい卵巣癌の標準手術術式ともなることを示唆していると思われる。卵巣癌の治療法の中でも最も主たる治療法である手術療法はこのように,内性器全別出術+大網切除術を中心とした古典的術式から,骨盤内臓器の合併切除を含むmaximal debul-king surgery+後腹膜リンパ節郭清術いう新標準術式へと大きく転換の時期を迎えつつあるように思われる。そこで本縞では1987年東京で開催された3rd interna-tional symposium:Gynecologic Oncology,Surgery and UrologyでのBurghartら4〜7)の論文を中心にこれらの問題点も含め述べることとする。

卵巣性不妊

著者: 藤井明和 ,   小林善宗

ページ範囲:P.815 - P.817

 卵巣性不妊に対する手術療法には,腹腔鏡下の卵巣手術と,開腹による卵巣手術があげられる。不妊症領域における卵巣手術の問題点は,あくまで目的が妊娠成立にあるという立場で論じられなければならない。したがって,まず,いかに卵巣実質を多く残して術後の排卵障害を防止するか,さらに術後の癒着をいかに防止するかが最も重要なポイントであろう。また,さらに付け加えるならば,同様な治療効果をあげられるなら,いかに患者にとって侵襲の少ない方法を選択できるかも重要なことである。
 不妊における卵巣手術の進歩はmicrosurgeryの進歩と決して無縁ではない1,2,3)。卵管性不妊に対してはmicrosurgery手術により,その成績は飛躍的に向上したが,同時に卵巣に対してもその概念が導入された。すなわち,組織の損傷を極力少なくすることと,いかに卵巣漿膜面つまり卵巣表面を侵襲なく手術縫合しうるかが重要な点である。本稿では,卵巣性不妊に対する手術療法の進歩として,患者侵襲の最も少ない腹腔鏡下手術療法と,microsurgery概念を用いた卵巣手術を中心に述べたい。さらに最近不妊症領域で重要な問題となっている子宮内膜症に関連して,そのchocolate cystに対する我々の治療法の根本的な変化についても述べたい。

最近の外陰癌の手術療法

著者: 梅咲直彦 ,   須川佶

ページ範囲:P.819 - P.823

 外陰癌に対する治療法は手術療法,化学療法,放射線療法および,これらの併用療法である。しかし予後を考慮すると手術療法が最も優れている。そして従来術式として表皮内癌にはsimple vulvectomyが,浸潤癌に対してはradical vulvectomy with inguinal lymphadenec-tomyが選択されていた。しかし近年,表皮内癌の病態が明らかになるにつれその術式としてのsimple vulvec-tomyに対し批判的な意見が出され,また性成熟期の婦人においては外陰癌の手術が表1に示すように性感を著しく損なうこと1),また美容上も大きな問題があり手術術式の縮小化が考慮されるようになってきた。一方,根治性を高めるため手術術式の拡大もはかられ,それに伴う副作用を減少させる目的で皮膚移植を併用したり,また筋皮膚弁を用いる方法も試みられている。
 本論文では外陰癌の手術術式に対するこれらの試みにつき,我々の経験に文献上での考察をくわえて記述し参考に供したい。

手術療法および術前術後管理の新しい動向

産科

著者: 岩崎寛和 ,   是澤光彦

ページ範囲:P.795 - P.797

 産科手術といわれているものは,子宮内容除去術から帝王切開まで多くの種類があるが,術前術後の管理が問題となるのは主に分娩に関連した手術である。産科の特徴は母体内に胎児が存在し発育することである。このことは母体へは妊娠の経過とともに機械的圧迫・循環血液量の増大・ホルモン環境の変化などにより多大な負荷として働き,術前術後管理を難しくする。また,母体に加える治療はかならず胎児になんらかの影響をあたえるので常に胎児への影響を念頭において管理しなければならない。
 また,最近の産科学および社会の意識として,従前より胎児を重視する傾向が強くなってきている。その結果,従来は経腟分娩を指向していたものが今日では帝王切開の適応と考えられるに至ったものが増し,帝王切開率が上昇している。さらに超音波診断装置その他の診断法発達により,胎児そのものの異常を非常に早く発見できるようになった結果,胎児にたいしても異常を分娩後に見つけて治療を開始するのではなく,妊娠中から治療を開始する方向に進んできている。

婦人科

著者: 江崎洋二郎 ,   小澤満

ページ範囲:P.799 - P.802

 近年細胞診,コルポスコピーなどの進歩普及により子宮頸部異形成や初期癌の段階で発見される患者が多くなったが,老健法の実施によってこの傾向はますます顕著になりつつある。と同時に従来にくらべて,いわゆる癌の専門家でない産婦人科医がこのような患者の第一発見者となることが多くなったこともここ数年の新しい動向といえよう。
 一方,老齢化社会を迎えて癌の治療後の生存期間も長くなり,治療後のquality of lifeが重視される方向に進みつつある。`

新手技の導入

レーザー

著者: 塚本直樹 ,   加来恒寿 ,   藤伸裕

ページ範囲:P.825 - P.828

 Laserとはlight amplification by stimulated emis-sion of radiationの頭文字を連ねてつくられた合成語であり,直訳すると"放射(電磁波)の誘導放出による光増幅"ということになる。レーザーは1917年にEinsteinにより理論的に予測された人工的な光であり,1960年にMaimanが初めてrubyレーザーの発振に成功した。以後,種々のレーザーが開発され医学に応用されるようになったが,現在臨床にもっとも応用されているのはCO2レーザー,Nd-YAGレーザー,Arレーザーである。
 婦人科手術へのレーザーの導入は,1973年のKaplanら1)によるCO2レーザーを用いた子宮腟部びらんの治療が最初である。1974年にBellina2)は腟腺症と外陰尖圭コンジローマの治療に,また1977年にStaflら3)は子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)や腟上皮内腫瘍(VAIN)の治療にCO2レーザーを応用した報告を行っている。以後,婦人科領域におけるレーザーの応用は欧米で急速に普及してきた。わが国で婦人科にレーザーが導入されたのは,1977年以後のことである。

超音波外科用吸引装置

著者: 桑原慶紀

ページ範囲:P.829 - P.831

 超音波外科用吸引装置は超音波周波数で振動するTipを組織に当て,それを細分・乳化し,術野に流出する生理食塩水と共に吸引除去する装置であり,最近では多くの施設に設置されるようになってきた。本装置はUltra-sonic surgical aspirator,Ultrasonic Knife,Ultrasonically Powered instrument,(ultrasonic scapelなど種々の呼称があり,日本語では超音波メスとか超音波(外科用)吸引装置,超音波手術器などと呼ばれている。最初に開発されたのがCUSA (Cavitron Ultrasonic Surgical Aspi-rator,米国クーパーレーザーソニックス社製)で,国産の装置としては超音波手術器ソノップ(アロカ社製)などがある。本稿では筆者がこれまで使用してきたCUSAを中心として述べる。

進行子宮頸癌に対する一時的血流遮断下動注療法について

著者: 山田龍作 ,   大門幹子 ,   川端衛

ページ範囲:P.833 - P.835

 子宮頸癌の治療は現在,手術と放射線によって行われており,良好な治療成績が得られている。しかし,再発癌および放射線感受性のない手術不能の進行癌に対し,従来,有効な治療法はなく,化学療法が主なる治療法となっている。しかし,全身投与では抗癌剤の腫瘍局所濃度を選択的に高めることは困難で,良好な治療成績は期待できない。腫瘍局所薬剤濃度を高めるために,one shot動注療法が行われてきたが,さらに効率よく抗癌剤を投与することを目的として,我々は一時的血流遮断下抗癌剤動注化学療法(balloon occluded arterial infusion,BOAI)2,3)を開発し,行ってきた。すなわち,担癌臓器動脈の血流をballoon catheterにより一時的に遮断した上で,その末梢側動脈に抗癌剤を注入するものである。この方法では,担癌臓器の動脈血流が途絶しているため,注入した抗癌剤溶液は希釈されることなく腫瘍に到達し,局所に長時間滞留し作用することになる。
 本稿では,子宮癌に対するBOAIの方法および治療成績について報告する。

グラフ 不妊症

III.精子洗浄濃縮法と培養法

著者: 星和彦

ページ範囲:P.784 - P.787

●精子洗浄濃縮法
 体外受精・胚移植(IVF-ET)や配偶子卵管内移植(GIFT)を行う際の精子回収法として,あるいは人工授精時の良好精子分離回収法として行われる方法である。

指標

陣痛の調節—基礎からみた臨床の問題

著者: 坂元秀樹 ,   忽滑谷綾子 ,   高見雅司 ,   田根培 ,   高木繁夫

ページ範囲:P.789 - P.794

 臨床産科において,最大の問題の一つは早産である。早産に原因する未熟児分娩は,児の周産期死因のトップにあげられ,この傾向は開発途上国はもとより,我国を含めた先進諸国においても変わらない。周産期統計によれば,全分娩中の1割弱に早産が起こり,通常2,500g以下の未熟児分娩となり,その2割弱は生後死亡する一方,生存児についても集中医療センターでの長期のケアーが必要で,その場合でも多くの合併症を伴うのみならず,経済的に見ても多大の負担を医療側と家族側にかけているのが現状といえる。早産は,その発生原因については未だ充分に理解されていないが,古くから臨床経験に基づく,いろいろなリスク因子が知られている。
 その代表として最も頻用されるCreasyのスコアー系1)を表1に示すが,Mainらは最近このスコアー系(妊娠18週の時点でスコア10点以上)に基づく早産ハイリスク患者を2分し,一方は通常の妊婦検診を行い,一方には子宮収縮の自己検知法などの教育を十二分に行った上で,両群の早産頻度を比較し,その両者の間に差が無かったと報告している2)。この報告では予防的な薬剤使用は行っていないが,そのような子宮収縮抑制薬剤の使用が果たして早産予防に有用か否か未だ充分な統計的裏付けを欠いているため,その臨床的な意義を容易には判断出来ないが,少なくとも十分な患者の教育と緊密な監視のみを主体とするケアー("よく気をつけてね"方式の管理)では早産の予防は出来ないということになろう。さて,いわゆる"prcterm labor"の成因についてはほとんど知られていないわけであるが,この早産の予後,すなわち子宮収縮の抑制の成功,不成功の鍵として破水の合併の有無がある。事実,破水(prcmature rupture of membrane:PROM)が早産に先がけて発生する率は30%とも40%ともいわれており(図1),PROMあるいはPROMそれ自身の成因が早産の発生原因の一つとする考え方が最近の大方の見方であろう。

臨床メモ

喫煙は子宮外妊娠の頻度も増加させる

著者: 貝原学

ページ範囲:P.809 - P.809

 喫煙は人体に対して種々の害をもたらすが,産婦人科領域においても喫煙による多くの弊害が報告されている。妊婦の喫煙によって胎児発育障害や周産期死亡の頻度が増加し,前置胎盤,常位胎盤早期剥離あるいは前期破水なども起こりやすいといわれている。さらに,流産や先天性奇形の原因ともなり,児の生後の肉体的ならびに精神的な発育が遅延する場合があることも報告されている。
 喫煙によって子宮外妊娠が発生しやすいという報告もある。Campbelland GrayやLevinら1)は,喫煙婦人の子宮外妊娠の発生頻度は非喫煙婦人に比較して1.5〜4.0倍も高率であると述べている。Matsunagaand Shiota2)も,子宮外妊娠が発生した婦人のなかで喫煙者の占める割合は29.2%を占めているが,筋腫合併妊娠や人工妊娠中絶をうけた妊婦(いずれも子宮内妊娠)における喫煙者の割合は9.4〜15.1%にすぎず,喫煙者の子宮外妊娠発生率は有意に高いと述べている。

トピックス

頻産婦—危険はまだ大きい?

著者: 広井正彦

ページ範囲:P.828 - P.828

 一般に頻産婦とは妊娠20週以上の児を5回以上出産したことのある婦人をさし,このような場合には母体に多くの障害を来すことが知られている。
 50年以上も前にSolomons1)は危険な多産婦という語を用い,このような妊婦が出産や育児などを完全に行うことはむずかしいと指摘しているほどである。このような頻産婦には母体の死亡率や罹病率も増加し,さらに胎児の死亡率や罹病率も増加させることが多くの国の報告2)より行われていることからも,頻産婦の問題は独り産科学の問題のみならず社会問題であるといえる。

生涯研修セミナー PCO

成因と病態

著者: 森崇英 ,   泰井俊造

ページ範囲:P.836 - P.839

 多嚢胞卵巣症候群(PCOS)は無排卵症の中でも代表的なものであり,不妊症の原因疾患の一つとしても重要である。しかしながら症候群としての概念が始めて確立されたのは必ずしも古くなく(Stein & Leventhal,1935年)1),その成因も今なお不明と言わざるを得ない。
 後述するように本症は,病態学的な多様性のために,その概念規定自体に混乱を生じたことがあり,それが本症の理解をさらに複雑にした面がある。著者は以前よりPCOSの概念規定を整理することが本症の成因,診断基準さらには治療方針を決定する上で重要と考え,著者なりの見解を明らかにしてきた2-4)。本稿ではそれらに基づき本症の病態と成因について解説を加えたい。

形態学

著者: 椎名一雄 ,   渡辺肇 ,   小島栄吉 ,   大村剛 ,   平川舜

ページ範囲:P.840 - P.845

 進行性病変であるPCOは,その診断基準のうち,卵巣の腫大,特徴的多嚢胞像は超音波検査により,さらに内視鏡検査の施行で,卵巣の表面性状の観察所見から白膜の肥厚度をはじめ病態の進行度が的確に診断される。内視鏡下生検組織診は診断を確定する。本項では,PCOの診断に必要な形態学について解説し,鑑別を要するmultifollicular ovaryについても触れる。

ホルモン動態と診断基準

著者: 青野敏博

ページ範囲:P.846 - P.850

 多嚢胞卵巣症候群は,臨床的には1)無月経または稀発月経,2)不妊,3)男性型多毛,4)肥満を伴い,卵巣は両側性に多?胞性変化を示す疾患として,SteinとLeventhalにより1935年に報告された1)。初期には卵巣の楔状切除術により排卵性月経周期が回復することから手術療法が広く行われた。近年,間脳—下垂体—卵巣系の内分泌異常が精力的に検討され,また副腎皮質の機能異常の関与も明らかにされ,本症の病態が次第に判明してきたが,未だ真の病因については未解明の部分が多い。
 本稿では,多嚢胞卵巣症候群症例におけるホルモン動態と本症の診断基準について概説する。

治療法

著者: 中村幸雄 ,   吉田圭子 ,   生方良延 ,   山田春彦 ,   南野智徳

ページ範囲:P.851 - P.855

 PCOの治療法としてclomiphene無効例に対しては従来楔状切除が行われてきたが,現在われわれはhMGの律動的皮下投与法を行っている。bromocriptine療法も最近注目されているが周期別排卵率は必ずしも良くない。LHRHの律動的投与法も当初有効との報告もみられたが,われわれは10例に試みて1例も排卵をみていない。最近話題のpure FSHも試みているが,OHSSの発生が必ずしも低くなく,さらに検討を要すると思われる。以下われわれの経験を中心にPCOの治療について述べてみたい。

PCOと不妊症

著者: 高橋克幸

ページ範囲:P.856 - P.861

 女性の不妊症は,その原因から卵管・排卵・子宮・頸管,その他の因子に大別される。その頻度は卵管因子が最も高く30〜40%,次いで排卵因子が20〜25%,子宮因子が15〜20%,頸管因子10〜15%,原因不明が10%以下とされているが,この数値は報告者により若干異なることは勿論である。この中の無排卵症の原因の1つとしてPCO (polycystic ovarian syndrome或いはdisease:多嚢胞卵巣症候群)があげられる。無排卵症の原因に占めるPCOの割合も又報告者によって異なるが,東北大の成績では無排卵症婦人52人の卵巣の病理組織検査で,PCOは23例,44.2%の高率となっている1)。しかし欧米の報告では全不妊症婦人の0.6〜4.3%にPCOが認められたという報告もある2,3)。この数値を我が国の無排卵症の頻度に換算すると,無排卵症の3〜24%にPCOがあるという計算になる。いずれにせよPCOの頻度は相当に高いということがうかがわれる。

原著

VUE(Villitis of Unknown Etiology)の周産期における意義

著者: 今井史郎 ,   中山雅弘

ページ範囲:P.863 - P.867

 1,999例の胎盤病理検索から原因不明の絨毛炎(VUE)82例を抽出し,VUEの周産期事象を検討し以下の結果を得た。
1) VUEの発現頻度は4.1%であった。
2) VUEの平均分娩週数は37.1±3.6週であり,流産は1例(1.2%),早産29例(35.4%),正期産52例(63.4%)であった。
3) VUEの平均出生体重(±1SD)は2,078±690mg,2,500mg未満の低出生体重児は70.6%(60/85)であった。
4)出生体重でみたVUEの発育度は−1.5SD以下が70.2%(59/84)を占め,胎児発育障害の割合が高かった。またプラスの発育度を示す率は17.9%(15/84)にすぎなかった。
5) VUEの帝切率は43.9%(36/82)と高値を示した。
6) VUEの妊娠中毒症合併率は34.1%(27/82)であり非VUEと比べ有意に高かった(P<0.005)。
7) VUEの児奇形合併率は21.2%(18/85)であり,非VUEと比較し,有意に高率であった(P<0.01)。
8) VUEの胎児・新生児死亡率は10.6%(9/85)と高値であった。

薬の臨床

子宮筋腫に対するブセレリン療法の試み

著者: 福間啓造 ,   松尾勇 ,   大場隆 ,   岡村均

ページ範囲:P.869 - P.872

 子宮筋腫を有する9人の婦人にブセレリンを経鼻的に1日900μg,月経周期2—5日目から原則として4カ月間投与した。子宮体積は投与前383.8±46.8cm3から4カ月後194.0±35.3cm3と50.7%の縮小を認めた。血中E2は投与1ヵ月目に一過性に上昇したが,その後は投与開始時のレベルに抑制された。副作用はhot flush,不正性器出血,肝機能低下が1例ずつ見られたがいずれも軽微であった。ブセレリンは子宮筋腫に対する縮小効果が著明であり,かつ副作用が少なく長期投与が可能であり,閉経に近づきつつある婦人では手術療法を回避できる可能性を有する薬剤と考えられる。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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