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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科43巻1号

1989年01月発行

雑誌目次

特集 Fetal behavior

胎児発達と心拍数制御

著者: 福原正生 ,   小柳孝司 ,   中野仁雄

ページ範囲:P.25 - P.28

 1958年,Honら1)によって分娩時におけるFetal heart rate (FHR) monitoringの重要性が指摘されて以来,胎児心拍数パターンの解析は,世界の研究者の耳目を集めることになった。その結果,late decelerationと称される一群の心拍数変動が胎児低酸素症に関連する表現であることが判明し,このことを基礎に,その後,fetal distress (胎児仮死)の概念が確立された。
 一方,1960年代後半,Hammacher2)の報告に端を発した心拍数細変動の研究は,それを周波数成分から,あるいは振幅成分から定量的に解析する幾多の指標を生み出した3〜6)。しかしながら,その後,久保ら7)によって,これら諸種の指標は形こそ違え,数理的にはほぼ同義であることが判明した。

胎児循環とその制御

著者: 村上雅義 ,   千葉喜英

ページ範囲:P.29 - P.33

 循環とは必要な血液を各臓器の毛細血管に供給することである。それ故に神経性および液性の制御が存在し状況に応じて臓器への血流分配の調節が行われている。胎児においてもその制御が存在することは,解剖学的神経線維の証明や種々の状況下での循環系パラメータの変動をみた生理学的実験系での多くの報告から明らかである。しかしながら子宮内のヒト胎児において,その制御については未だ不明な点が多い。その理由には次の点が挙げられる。第1に成人では肺が全身血行に直列に配置するのに対して,胎児循環ではガス交換の場である胎盤が並列に位置するという,血行動態上の相違があり,成人のデータをそのまま当てはめることができない。第2に非侵襲的な検査が求められるが故に子宮内でのヒト胎児に対してデータ収集に制限を受ける。さらに発育,成熟過程という要素が制御の理解に複雑さを増しているためである。
 一方,超音波ドプラー法により非侵襲的に血流動態の把握が可能となってきた。子宮内のヒト胎児において循環の制御の詳細な記述とはいかないまでも循環の変動を現象としてとらえた多くの報告がなされている。そこで本稿では,題目の循環の制御を種々の状況下での循環の対応と理解し,超音波ドプラー法でとらえられた血流変動の面から述べることにする。

中枢機能の成熟と胎児行動

著者: 上妻志郎 ,   岡井崇 ,   水野正彦

ページ範囲:P.35 - P.38

 中枢神経系はあらゆる生命現象を統合する機能を有することから,個々の器管系が本来の機能を発揮するにはそれぞれに対応する中枢神経機能の発達が必要である。行動に関してももちろん例外ではなく,肉眼的に観察しうる運動のほとんどすべてが中枢神経系の統御を受けている。特に胎児期は母体・胎盤により栄養補給や排泄が行われ,子宮内という閉ざされた環境の中で外的な刺激も最小限に押さえられた状態であるため,胎児の行動は生命維持のためのものではなく出生後の行動に対する準備運動であり,中枢神経機能が各種要因から修飾を受けずに表現されたものであると考えられる。
 大脳および小脳機能は出生後に著しく発達することが知られているが,新生児は出生時から既に独立して生存するための基本的な機能を獲得しているため,胎児期においても中枢神経機能は相当な発達を遂げていることが推察される。近年,超音波新層法の発達に伴い生理的な胎児の行動を観察できるようになり,呼吸様運動をはじめとする各種運動が妊娠経過と共に変化することが知られるようになった。この変化は胎児期における中枢神経機能の発達と密接に関連するものと推察される。本稿では当教室において超音波断層法を用いて観察した胎児行動について,中枢神経機能の発達という観点から概説する。

胎児行動とその臨床

著者: 佐藤郁夫

ページ範囲:P.39 - P.44

 胎児心拍数図・胎動図や超音波断層法により,子宮内での胎児の行動を直接あるいは間接的にキャッチすることが出来るようになってから10年以上経過してきている。その種類も呼吸様運動,嚥下運動,眼球運動などに始まり,頭部,躯幹,四肢の伸展・屈曲・回旋運動など極めて多い。
 しかしながら現在われわれが得られるものは部分的な情報に限られ,胎児が一つの個体として,その行動がどこに位置づけられたものであるかといった総合的な判断はむずかしい。またわれわれは妊娠後半期になると,胎児の行動をinactiveとactiveのstageに分類することもできるが,行動評価上,inactiveとactiveのstageがいわゆる睡眠・覚醒という概念とどの程度かかわりあいを持ち得るかといった問いかけに対する解答が得られるにはなおかなりの時間を要すると思われる。さらに種々の行動の合目的性から考えた場合,例えば呼吸様運動や嚥下運動などの行動パターンが胎児と新生児が同一のものであっても,双方には本質的な相違点,すなわち胎児ではその行為が直接生命維持につながらないといった問題も存在する。したがって胎児behaviorを言及するに際して,新生児の行動論理から単純に胎児の行動を推測することは適切でないことを念頭において議論しなければならない。

胎児の発育と行動

著者: 夏山英一

ページ範囲:P.45 - P.50

 胚子,胎児の行動は,両親から受け継いだ遺伝的素因優位の下で,その形質的な発生学的分化発達に伴って出現するものとされており,胎児の発育に応じて単純な動きから,より複雑な動きへと発達と変化を遂げながらも,各時期に特有な一定のパターンを示しつつ出現している。これらの動きは身体的運動,呼吸様運動,吸啜運動など,出生後の個体生命維持のための動きの形成を示すのみならず,胎児期における中枢神経系の発達に沿った様々なヒトとしての動きが含まれているものと考えられる。従来,胎児の行動は,中枢神経系の発生分化に従った脊髄期,延髄—脊髄期,中脳—菱脳—脊髄期,間脳—中脳—菱脳—脊髄期における動きとして発生学的に区分されてきた。そして,動物実験における除脳処置など,中枢神経切断下での動きや母胎外における流産児など非生理的環境下での動きの観察結果をこれらの区分と対比させ論じられている。しかるに,近年における超音波電子スキャン検査の登場は,より生理的環境下での胚子,胎児の動きの観察を容易に可能とし,妊娠初期から末期までの胎児の発育と行動の発達についての研究は急速な進展を示してきた。
 筆者も1974年以来,産科外来における超音波検査の中でこれらの観察を行い,観察結果については既に幾つかの報告をしてきたが,妊娠各時期に示される胚子,胎児の行動の中には中枢神経系の分化発生区分に厳密に従ったもののみではなく,何れの時期においてもそれらの区分より上位の中枢の未熟ながらも様々な程度の影響を受けていると思われる動態が示されているものがあった。これは胎児の中枢神経系の分化発達が,いかなる部位においても分離切断された状態で行われるものではなく,脊髄より上位の様々な中枢が分化発達の進行の度合を異にしながら平行して発達していくためとも考えられる。一般的には,胎児は妊娠末期でも皮質下動物として位置付けられているが,神経発生学,生理学的所見では大脳皮質のニューロンは既に妊娠8週から発生分化が始まっており,生物学的活性を示す活動電流は妊娠10週より認められると報告され,それより下位の間脳−中脳−菱脳部位の中枢にも同様の現象が妊娠初期から認められている。

Overview

胎児行動の意義とその評価

著者: 前田一雄

ページ範囲:P.21 - P.24

 胎児行動(fetal behavior)には広義と狭義があると思う。広義には妊娠初期胎児のごく単純な動きからはじまる。狭義には胎児神経系発育ののちの,統御,制御のある胎動に限る。ただし,これは非常に観念的なわけ方であって,具体的な証明にはさらに多くの年月が必要であろう。したがって本稿ではそのすべてを含んで述べることにする。胎児行動検出法にもいろいろある。筆者の超音波胎動計では羊水中で一定の速度範囲の動きがあればスパイクとして記録する。このとき母体の呼吸や胎動,あるいは胎児心拍数はこの速度範囲から除かれる。客観的連続的胎動検出には圧電素子によるもの,電磁波によっているもの,外測陣痛計もある。体表面での検出よりも,超音波によって胎動を直接検出する方が高感度である。胎児の動きに意味をもたせ,解釈しようとすると,超音波モード電子スキャンによるのが普通である。またこのときはマルチチャネルを必要とし,VTR記録を反復再生して観察し判定する。
 また,胎児行動判定の基礎として新生児行動の分類や行動の状況が参考にされることが多い。胎児はその神経性発育過程の表現として行動を示すという考えが多い。したがってその目標として新生児胎動があり,さらに胎児行動は新生児の行動をめざして準備をすすめているという考えもある。そのような場合もあるであろうし,また一方では胎児の生存状態には独自の生理学的環境があるのであるから,すべてを新生児の行動から判定し新生児行動と同じ名称を与えるのは検討を要する。

グラフ 生殖生理と走査電顕

Ⅰ.卵子の発育過程

著者: 久保春海 ,   臼井彰 ,   片山進

ページ範囲:P.4 - P.5

 卵子は個体の発生3週末に卵黄嚢壁に出現する原始生殖細胞より発生する。原始生殖細胞は女性の生殖腺に到達すると,卵祖細胞(oogonia)に分化,間接分裂を繰り返し,卵母細胞(primary oocyte)となる。卵母細胞になると,ただちにこれらの細胞は第1減数分裂の前期にいたる。出産時に減数分裂は網状期(dictyotene stage),すなわち休止期となり思春期になるまで,この状態(第1休止期)にとどまる。出産時の卵母細胞の総数は約70万〜200万と推定されるが,思春期のはじめには卵子の大多数が退化し,ほぼ4万の卵子が存在しているに過ぎない。ここで卵子はゴナドトロピン作用を受け,第1減数分裂を終了する。すなわち,卵核胞(GV)の崩壊と第1極体(IPB)の放出である。しかし,実際の臨床上で卵実質の観察は困難なため,卵子‐粒膜‐卵丘細胞層(OCCC)の外形で発育段階(成熟度)が判定される。

指標

hMGの律動的皮下投与法による排卵誘発—多胎妊娠の可能性の少ない排卵誘発法

著者: 中村幸雄 ,   山田春彦 ,   吉田圭子 ,   生方良延 ,   南野智徳

ページ範囲:P.7 - P.19

 下垂体よりのLHの分泌パターンは,図11)に示すごとく,卵胞期,排卵期,黄体期初期には1〜2時間間隔,黄体期中期,末期では4時間間隔にpulse状に分泌され,排卵期には特に振幅が増大する。一方FSHは,その半減期がLHに比し長いため(LH 21分,FSH 3.9時間3)),律動性は明確でないが,間脳からのLHRHが律動的に分泌されている点からみて,LHと同様律動的に分泌されていると推定される。
 従来のhMG-hCG法では,hMGは連日筋注投与し,卵胞の成熟をはかってきたが,上述のデータに従えば,gonadotropinは一定間隔で律動的に投与した方が,より生理的と考えられる。

臨床研修セミナー 多胎

胎児発育

著者: 兼子和彦

ページ範囲:P.55 - P.59

 多胎妊娠における周産期死亡は単胎に比し高率であり,その要因は多発する早産低出生体重児,子宮内発育遅延などがその主因として認められて来ている。
 多胎児管理にあたって単胎と異る本症の変容を知ることは重要である。

妊娠の管理—母体搬送

著者: 池ノ上克

ページ範囲:P.60 - P.63

 各地に周座期センターか設立され始め地域における医療のネットワークが急速に進行している。そのなかでも母体搬送は重要な要素であり,各種ハイリスク妊婦の搬送が活発におこなわれている。
 多胎妊娠はいうまでもなく母児双方の予後に危険性を含んでおり,周産期医療センターに収容される代表的名ハイリスク妊娠の一つである。表1は昭和53年,当院に周産期医療センターを開設以来,昭和62年迄に収容した母体緊急搬送例をその要因別にあげたものである。緊急搬送の理由は母体の救命や処置を目的とした母体要因と,胎児や新生児の救命を目的とした胎児要因とに大別される。母体要因では重症化した妊娠中毒症,母体の異常出血,分娩の遷延などが主なものである。

分娩管理

著者: 末原則幸

ページ範囲:P.64 - P.69

 多胎の頻度は総分娩数に対しおおよそ1%であるのに対して,多胎での周産期死亡率は約10-15倍と極めて高く,ハイリスク因子の一つとされている1)。その要因は早産が多く,未熟児出生となること,母体の合併症が増加すること,胎児の異常や臍帯の付着異常などが多いことがあげられているが,その他に多胎ゆえにおこる双胎間輸血症候群,胎児発育不全,子宮内一児死亡などが多胎でのリスクをさらに高めている。分娩様式の決定に際してもそのときの妊娠週数,推定体重,胎位などが大きく考慮される必要がある。ここでは周産期緊急医療センターとして,またハイリスク妊産婦受け入れ施設としての当センターでの多胎分娩の成績を述べ,多胎の分娩管理について概説する。

多胎と胎児・新生児異常

著者: 藤本征一郎 ,   花谷馨 ,   菅原照夫 ,   田中俊誠

ページ範囲:P.70 - P.76

 本邦における多胎妊娠の頻度は欧米と比較して低いが,近年各種の排卵誘発法の普及によりその頻度は上昇の傾向にある。単胎児に比して,多胎児には周産(生)期における各種の異常(早期産,低出生体重,胎児・新生児仮死,奇形,胎児間輸血症候群,周産期死亡など)の頻度も高い。
 最近では,超音波診断(胎児,胎盤,胎児膜,羊水量などの観察),胎児心拍数陣痛計測(NST,CST,分娩監視),子宮収縮制御,羊水サーファクタント測定などの進歩により多胎妊娠の産科管理は大きな変貌を遂げている。卵性診断は,多胎児の取り扱いにあたり,胎児間輸血症候群,奇形,多胎のうち1児の異常(死亡など),遺伝性疾患,育児指導などの観点からも必要であり,各種血液型,白血球型,血清蛋白,酵素,染色体多形性などの遺伝形質の検査が出生直後より望まれる。とくに胎児膜(1絨毛膜性か,2絨毛膜性か),胎盤血管吻合(とくに胎盤実質内の動静脈吻合)についての検索は,臨床的に最も問題となる胎児(双胎)間輸血症候群の診断・管理のためにも実施されなければならない。

Overview

排卵誘発による多胎

著者: 青野敏博

ページ範囲:P.51 - P.54

 白人における多胎妊娠の頻度はHellinの概算式80n−1(nは胎数)で示され,双胎は80回に1回,品胎は6,400回に1回の割合とされている。多胎妊娠の頻度は人種によって差が大きく,黒人では高く,黄色人種では低く120〜150回に1回の割合である。しかも双胎についてみると,1卵性双胎の頻度は人種間に差がなく,双胎の発生は2卵性双胎の頻度に依存していることが分かっている。
 排卵誘発剤の普及は,これ迄挙児が期待できなかった不妊婦人に,治療により妊娠の喜びを得させることができるようになったが,その副作用として多胎妊娠の増加がもたらされた。

原著

細胞診よりみたHuman papillomavirus感染症について

著者: 楠山洋司 ,   吉田恵 ,   細道太郎

ページ範囲:P.77 - P.79

 細胞診よりみたHuman papillomavirus感染症(HPV症)につき下記の結果を得た。
 1.最近4年間で0.16%の頻度であり,0〜19歳0.90%,20歳台0.27%,30歳台0.14%,40歳台0.17%,50歳以上0%と若年者に多くみられた。
2.4年間の年次変化では,0.20%,0.09%,0.13%,0.20%と横ばいであった。
3.組織診施行例では,15例中11例はkoilocytosis with or without dysplasiaで,残り4例はmild dysplasiaのみであった。
4.経過観察し得た10例では,消失9例,持続1例であった。
5.HPV症検出には,スパーテル法(25/26に陽性)の方が綿棒法(15/26に陽性)よりすぐれていた。
細胞診によるHPV症検出は,検出率は高くはないが,特異性にすぐれていると思われる。

周産期センターでの腎・尿路系奇形の分析

著者: 今井史郎 ,   中山雅弘

ページ範囲:P.81 - P.85

 約6年間に470例の奇形児を経験し,うち46例(9.8%)に腎・尿路系奇形を認めた。この腎・尿路系奇形を3群に分類し,以下の結果を得た。
1)腎・尿路系異常としては臨床的意義が少ない群;腎皮質小嚢胞,馬蹄腎,重複尿管など13例あり,他の理由で死亡し剖検時に見つかることが多かった。
2)腎・尿路系異常として臨床的意義を有するが,多発奇形(奇形症候群)の一部として合併する群;片側の腎欠損4例,両側腎低形成2例,片側ないしは両側の腎異形成4例,水腎症9例の合計19例あり,2例のみ生存した。
3)腎・尿路系異常が主たる臨床的意義をもつ群;14例あり,両側の腎異形成5例はすべて羊水過少を伴い1例のみ生存し,片側の腎異形成は3例あり2例が生存した。

トピックス

閉経婦人の卵巣の容積

著者: 広井正彦

ページ範囲:P.85 - P.85

 出産数の減少に伴い,更年期や老年期への関心が高まって来ている。中でも生殖現象の終わりを意味する閉経の現象は興味ある問題であるが,これは卵巣機能の衰退を意味するものとして注目されている。
 卵巣機能を的確に把握する方法としては血中の卵巣ホルモンを測定することがあるが,必ずしも容易に行うことは出来ない。近年,超音波断層法の普及により外来レベルでも卵巣の大きさを簡単に測定することが出来るようになって来た。

薬の臨床

卵管間質部妊娠,子宮頸管妊娠,および卵巣妊娠に対するMethotrexate (MTX)療法施行症例における臨床経過

著者: 田中俊誠 ,   藤本征一郎 ,   工藤正尊 ,   平畠功二 ,   西谷雅史 ,   相原稔彦 ,   中陳欣也 ,   大久保仁 ,   有賀敏 ,   守谷修而 ,   岩崎寛治

ページ範囲:P.87 - P.95

 昭和54年7月より昭和63年7月までに北大産婦人科ならびにその関連病院において,子宮間質部妊娠;3例,子宮頸管妊娠;5例,および卵巣妊娠;1例の計9例にmethotrexate (MTX)療法が施行された。
 MTX療法中の副作用,MTX療法前後の尿中hCGの変動,MTXの総量,およびMTX療法後の妊娠,などについて検討した。
 現在までに,子宮間質部妊娠症例,子宮頸管妊娠症例において,それぞれ2例(2生児),3例(4生児)にMTX療法後に妊娠が成立している。子宮間質部妊娠1例においてのみ軽度の肝機能障碍が認められた。従って,MTX療法は卵管狭部や卵管膨大部に着床する卵管妊娠以外に対する子宮外妊娠に対しても有効であることが確認された。

子宮内膜症danazol療法の副作用—その対策の評価を含めて

著者: 福田良夫 ,   田村昭蔵

ページ範囲:P.97 - P.102

 Danazolの副作用軽減の一助とすべく,出血軽減を期待し分4投与法を400mg投与例の15例に,体重増加対策として食事指導を25例に試み,また経過を詳細に観察し得た56例を対象に他の副作用についても検討した。
 その結果,多い副作用は,①性器出血(100%),②体重増加(98.2%),③座瘡(51.8%),④浮腫(30.4%),⑤肝機能異常(29.1%)であり,このうち性器出血は投薬日数に伴い分2投与で徐々に減少,一方分4投与では容易に減少せず,投薬日数に対する出血日数の比でも,分2投与13.6%,分4投与29.6%で,分2投与でむしろ少なかった。
 体重は投与20週まで増加率(平均)において対照群4.9%,指導群3.7%と明らかに抑制されたが,投与26週では対照群5.0%,指導群7.1%と指導無効な結果であった。
 座瘡は長く続く症例が多いが,投与終了後3ヵ月までに自然消失した。
 肝機能のうち血清GOT値は投与16週で,血清GPT値は14〜22週で平均値の上で軽度異常値を示したが,一過性であった。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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