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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科43巻10号

1989年10月発行

雑誌目次

特集 高感度ホルモン測定法と臨床応用

LH,FSHのIRMA法による測定と臨床応用

著者: 苛原稔 ,   安井敏之 ,   漆川敬治 ,   植田敏弘 ,   兼松豊和 ,   東敬次郎 ,   青野敏博

ページ範囲:P.921 - P.929

 1967年頃からLH (Iuteinizing hormone) FSH (fol—licle stimulating hormone)のラジナイムノアッセイが開発され,それらの微量定量が可能になってから1,2),各種内分泌疾患や不妊症患者における視床下部—下垂体—性腺系の病態生理の解明が急速に進み,これらの疾患の研究や日常臨床における管理の上で血中LH・FSHの測定は不可欠になっている3,4,5)
 従来,わが国において血中LH,FSHの測定に繁用されて来たのは,二抗体法を利用したラジオイムノアッセイ(RIA)であるが6,7),最近の免疫学的測定法の進歩,特にイムノラジオメトリックアッセイ(Immunora diometric assay,IRMA)の導入8,9,10)とモノクローナル抗体産生技術の確立により,従来のRIAと比較して,測定感度,特異性,簡便性,迅速性に優れた測定法が開発され,わが国においてもIRMA系の測定法が利用可能になってきた。

プロラクチンのIRMA法による測定と臨床応用

著者: 成田收 ,   菅沼信彦 ,   大沢政己 ,   小栗久典 ,   水谷栄彦

ページ範囲:P.931 - P.936

 プロラクチンは下垂体前葉から分泌されるホルモンで,その存在は古くから知られていたが,ヒトにおいて初めて純化精製されたのは1971年のことである1)
 以来このホルモンの研究は急速に進み,Friesen2)やSinha3)らによるラジオイムノアッセイ系の確立,さらに1977年にはShome4)らによるヒトプロラクチンの全アミノ酸配列の決定と続いた。特にプロラクチン測定法の確立により,プロラクチンと乳汁分泌機構,排卵現象などに関する知見が次々に解明された。

オキシトシン測定の産科的意義

著者: 牧野恒久 ,   元山鎮雄 ,   萩庭一元 ,   永井孝 ,   菅原正人 ,   鈴木英明 ,   中山陽比古 ,   飯塚理八

ページ範囲:P.937 - P.943

 オキシトシンは古くて新しいホルモンといわれる。事実,Dale1)が下垂体後葉の抽出物に子宮収縮作用があることを見出したのは1906年で,以後80年余にわたって幾多の研究が積み上げられてきた。オキシトシンの化学構造そのものはVigneaudら2)によって8種9個のアミノ酸からなる構造式が1953年に決定されている。衆知のようにオキシトシンは子宮収縮作用と乳汁の射出作用が主なものとされ研究されてきたが,近年,再び内分泌学上,注目され直されたのは以下の3点によるものと思われる。すなわち,従来オキシトシンそのものが化学構造上,最終の形と考えられてきたものが,分子量約30,000のneurophysinと呼ばれるprohormoneあるいは蛋白担体と結合して存在することが判明し,この領域の研究に幅ができた。第2にいわゆる異所性オキシトシンの存在があげられる。後葉以外に卵巣,胎盤,胸腺などに同一あるいは類似のペプチドが存在することが報告されて注目されている。第3にその多彩な生理作用である。これまでの3つの作用のほかに,血圧・脈拍への作用,前葉ホルモンや副腎皮質ホルモンへの作用,luteolysisの作用,血糖や遊離脂肪酸への作用,精子移送や記憶への作用などが報告され,古くて新しいホルモンと呼ばれる所以である。
 オキシトシンに関する国際会議は,最近では1984年にカナダのLac Beauportと1988年わが国の箱根で開催されている。これらの会議に出席してみると,オキシトシン研究の裾野の広さに驚かされる。現在,オキシトシンの研究は測定法,生合成,神経内分泌支配による分泌機序,作用機序,行動・情動との関連などさまざまな方向へ発展していることが窺える。本稿ではオキシトシンの測定法と広い意味での生殖生理作用を中心にまとめてみた。

高感度hCG測定法の臨床応用

著者: 丸尾猛 ,   望月眞人

ページ範囲:P.945 - P.951

 トロホブラストが産生,分泌するhuman chorionic gonadotropin (hCG)は,妊娠早期診断や絨毛性疾患管理に不可欠なマーカーである。しかしhCGのアミノ酸構造は下垂体から分泌されるIuteinizing hormone (LH)のそれと極めて類似しているため,従来,低単位hCGの測定に際してはLHの免疫学的交差を除外することが困難であった。
 ところが近年,LHには存在しないβ—subunit-carboxyl terminal peptide (hCGβ—CTP)と特異的に反応する抗hCGβ—CTP抗体の作成により,微量hCGの絶対特異的測定が可能となり,低単位hCG値はいわゆる「下垂体性LHレベル」という不明確な概念で論ずることが無用となった1)。すでに抗hCGβ—CTP抗体を用いたサンドイッチ法Enzyme Immunoassay (EIA)キットが市販され,その超高感度(0.2mIU/ml)という特徴から絨毛性疾患管理に威力を発揮している。しかし,その操作法はかなり煩雑で,発色測定にspectrometerを要し,結果判定に長時間を要することが難点となっている。

インヒビンと排卵機構

著者: 長谷川喜久 ,   五十嵐正雄

ページ範囲:P.953 - P.961

 人の月経周期や他の哺乳動物の性周期に繰り返し起こる排卵は主にFSHとLHによって調節されている。性成熟に達するまでに一定数にまで選別された卵胞が一周期中に成熟し排卵へと至る1)。その排卵数は種により異なるが,その種に固有の排卵数が運命付けられている。このような卵胞の成熟と排卵数の調節機構の解明は生殖生理学の大きな目標であり,多くの研究者により試みられているにもかかわらずまだ不明の点が多い2)
 視床下部—下垂体—性腺系のホルモンの分泌機序とその動態を精査することによりゴナドトロピンの分泌,特にLHRH-LH—性ホルモンのフィードパックシステムの多くが明らかにされた3,4)。しかしながら卵胞の成熟に最も深くかかわるFSHの分泌の調節システムの解明は困難を極めた5)。FSHの分泌はLHのそれとは異なるパターンを示し,またその調節因子がLHのそれと異なっていた。FSHの分泌を調節する因子として視床下部中のFSH-RFの存在が考えられているが,まだその正体は確かめられていない。一方,性腺中に存在し性ホルモンとともにFSHの分泌調節する蛋白性の因子が明らかにされた。それがインヒビンである。性腺から分泌されるインヒビンは,時にはエストラジオール(E2),時にはプロジェステロン(P4)の分泌と重なるため,インヒビン本来の役割が性ホルモンの役割に置き換えられていた。

甲状腺ホルモン(TSH,T3,T4

著者: 和泉元衛

ページ範囲:P.963 - P.966

 近年テクノロジーの目覚しい進歩により,各種血中ホルモンの測定が可能となり,内分泌疾患の診断,治療に大いなる貢献をしている。最近は,さらに高感度ホルモン測定が可能となり,従来,正常と低下の差が判別困難であったものが可能となってきた。
 甲状腺ホルモンにおいても同様で,特にTSHの高感度測定法の開発により,正常者血中値TSHと,TSH分泌が抑制されているバセドウ病患者の血中TSH値とが明瞭に判別可能となった。

ソマトメジン‐C

著者: 武田成正 ,   井上和子

ページ範囲:P.967 - P.970

 ソマトメジン(Somatomedin:Som)に関する研究は比較的古く,1957年SalmonとDaughaday1)らにより成長ホルモン(Somatotropin,Growth hormone:GH)の作用を仲介(mediate)する物質(彼らは,sulfation factorと命名)として,その存在が初めて示された。その後,sulfation factorが,軟骨細胞のDNA合成を促進させるなど,GHの生物学的活性を再現できることが理解されるようになり,GHの活性をmediateする物質としてsomatomedinと命名された2)
 Van WykやFroeshらは,それぞれ独自のbioassay系を用いてGHの生物学的活性物質の精製,純化を行いSomatomedin,Nonsuppresible insulin like activity(NSILA)またはInsulin-like growth factor (IGF)と名付けた。これらの研究の結果,SomにはA,C,IGFにはⅠとⅡが存在し,GHの生物学的活性を仲介する物質が,Som-CとIGF—Ⅰであることが推測された。また,Som-CとIGF—Ⅰが同一物質であることが想像されていたが,1983年になって,Van Wykら3)のグループによってSom-CとIGF—Ⅰが同一物質であることが証明されたのである。

グラフ 目で見る解剖—性器系の血管構築

4.男性性器

著者: 田中啓幹

ページ範囲:P.918 - P.920

 真正胎盤を持つ哺乳類Eutheriaの精巣は,精子形成のためには体腔外,すなわち陰嚢内に下降して体温より低い温度環境に存在する必要がある。そのためには,陰嚢のラヂエーターとしての冷却機構の他に,血管系にも特徴的な構築がみられる。主動脈は被膜内外でコイル状となり,実質に貫通する前に求心性と遠心性分枝に分かれて主流の後者は精巣を取り巻き,白膜を走行するとき扁平化し,精細管間隙や精細管周囲の毛細血管は縄梯子状となって密に結合している。精巣内の静脈は白膜に向かう遠心性静脈と精巣網に向かう求心性静脈があり,前者は鞘膜の静脈に,後者は隔膜を通って精巣網で静脈叢を形成する。精巣を出るとお互いに吻合して静脈叢,すなわち蔓状静脈叢を形成して精索部動脈を包み込んで動脈血の冷却に与っている。
 陰茎は高度に血管に富んだ臓器で,しかも勃起という大切な機能を持っているにもかかわらず,その機序については長い間ベールに包まれていた。最近になって,陰茎のペプタイド神経支配と血管構築の研究が進展し,ヒトの血管構築についても解明されてきた。

トピックス

治療しない場合の高プロラクチン血症のゆくえ

著者: 広井正彦

ページ範囲:P.930 - P.930

 高プロラクチン血症(hyperpro—lactinemia)の場合には,無月経,乳漏症,不妊症などの原因となることが知られており,続発性無月経の1/3にhyperprolactinemiaがみられるという者までいるくらいである1)。近年,脳神経外科の発達により,下垂体腫瘍の摘出術や,dopa—mine agonistの開発による薬物療法によりその治療効果も明らかにされて来ている。しかし,このようなhyperprolactinemiaを放置していた時に如何なる変化を示すかを観察することは,これらの治療法の今後のあり方を知る上で興味ある点である。
 Schlechteら2)は少なくとも2回以上血清prolactinを測定し,25μg/l以上を示し,腎・甲状腺・肝機能などにも異常なく,今までprelactinを上昇させるような薬物を内服したことのない16歳から38歳までの婦人30人について,何らの治療もせずに前方視的に検査して経過を観察した。

臨床メモ

胎児心拍数・陣痛図にみられる2,3の異常所見—ラムダ型心拍数パターン,NST時の変動性徐脈ならびに小子宮収縮波

著者: 貝原学

ページ範囲:P.943 - P.943

 分娩時やNST施行時に種々の異常な心拍数変動パターンや子宮収縮波形が認められることがある。しかし,それらの臨床的な意義については,疑問が抱かれるものの,深く追求されることなく放置されてしまっている場合が多い。本稿ではこのような問題を追求した2,3の論文をとり上げてみたいと思う。

臨床研修セミナー Sexual Medicine

STDと性

著者: 長田尚夫

ページ範囲:P.976 - P.980

 性行為によって感染する病気が性病(venereal discase,VD)より性感染症(sexually transmitted disease,STD)という名称になったのは,性行為によって感染する病原体が多種存在していることが明らかになったからである。以前は梅毒,淋病,軟性下疳,鼠径リンパ肉芽腫症の4種の病気が性病予防法で定められて,性病と呼ばれていた。近年医学の進歩に加え,性に関する認識が変って性行為が多様化し,時代の流れとしてSTDという概念が国際的に定着して,多くの疾患がリストアップされている。

高齢者の性

著者: 石濱淳美

ページ範囲:P.981 - P.985

 人間の性行動は生殖と情緒の二面をもつが,従来とかく生殖行動としての性のみが重視され研究されてきた感がある。しかし人生80年という人類初めての経験によって女性は生殖期間の2倍の人生を生き続けている。この高齢化時代においては,生殖を目的としない人間の情動行動としての性を改めて考えてみる必要がある。

婦人科術後患者の性

著者: 武田秀雄

ページ範囲:P.986 - P.988

 婦人科手術後に何らかの性生活の変化が起きることは1950年にHuffmanが報告して以来注目されており,性生活の改善より悪化したとする性障害の頻度が高い。婦人科手術を受ける患者の年齢,適応疾患,術前の病状,術式,摘除範囲,術後経過,心理状態,夫や家庭内での立場によって,術後の患者の訴えが様々に異なってくるのは当然考えられる。手術を行う婦人科医としてはその点を充分配慮して,術前,術後に患者とその夫を教育し,インフォームドコンセントを得ておかねばならない。

妊娠中の性

著者: 伊藤博之

ページ範囲:P.989 - P.992

 妊娠中の性の問題についての客観的評価は非常に難しい。その理由として,妊娠中に性交を継続するのは人間だけであるため動物実験ができないこと,古くから性がタブー視されていたこと,妊婦の性欲は身体的なものより,多分に心理的要因が強いことなどが考えられる。しかし,妊娠中の性生活は若いカップルにとっては食生活にも匹敵する重大関心事で,決して避けて通れぬ問題である。それにもかかわらず,実際の指導現場や成書では,ほとんど通り一遍の指導や記述に終始し,できれば触れずに済ませたいの感が強い。
 最近になり,わが国でもようやくこの問題に関心が持たれ始め,その実態調査なども散見されるが,まだまだ十分とはいえない現状である。

カウンセリング(セックス・セラピー)の実際と問題点

著者: 山崎高明

ページ範囲:P.993 - P.996

 カウンセリングとは患者と治療者との信頼関係にもとづく全人的なふれ合いを通じて,患者の心の深層に根ざした悩みから起こった問題の解決を見出す方法であり,特に性に関する悩みを取り扱うものがセックス・カウンセリングである。
 最近女性の権利が次第に向上し,性の面においても男女同権が叫ばれ出すにいたり,女性の不感症もようやくとり上げられだした感があるものの,泌尿器科を訪れる男性のインポテンス患者の数に比べてまだまだ少ないのが現状である。不感症を女性の広範囲の性機能障害として取り上げ,これに対するセックス・セラピーについて述べたい。

Overview

Sexual Medicineの現状と問題点

著者: 大島清

ページ範囲:P.972 - P.975

 セクソロジーは複眼的構造をもつ科学である。胎児から高齢者まで,医学はもちろん,心の問題,社会的視野,さらにはその時代背景をふまえて全地球的な規模にまで及ぶものである。本稿では欧米の現状なども交えつつこの問題を考えてみたい。

原著

若年者の類内膜嚢腫(子宮内膜症性卵巣嚢腫)の臨床病理学的特性

著者: 舟山幸 ,   滝沢憲 ,   井口登美子 ,   武田佳彦

ページ範囲:P.997 - P.1001

 1985年1月から1988年8月の間に手術が行われ病理組織学的に類内膜嚢腫(子宮内膜症性卵巣嚢腫endometrial cyst)と診断された30歳未満の若年者52例を検討し,以下の成績を得た。
1)10代,20代の若年者子宮内膜症では子宮腺筋症を伴わない類内膜嚢腫として発見する場合が多い。
2)自覚症状は月経困難症が多く,月経量や周期の異常は少ない。症状自覚から手術までには数年を要している。
3)月経困難症の程度と術前血清CA125値,癒着の有無とは相関していない。
4)少数ではあるが,50例中8例に癒着のない症例を認めた。それらの嚢腫の大きさは手拳大以上のものが多く,術前血清CA125値陽性率も高かった。
以上から,若年者類内膜嚢腫は卵巣表層上皮の化生により発生するものが少なくないと推察された。

症例

高血圧合併慢性腎炎患者の1妊娠症例—少量アスピリン療法の試み

著者: 山崎一郎 ,   高桑好一 ,   長谷川功 ,   立川千恵子 ,   吉沢浩志 ,   佐藤芳昭 ,   金沢浩二 ,   竹内正七 ,   追手巍 ,   清水不二雄 ,   斎藤隆生 ,   成田一衛 ,   吉田和清 ,   荒川正昭

ページ範囲:P.1003 - P.1006

 高血圧を合併した慢性腎炎患者(Ccr 50-70 ml/min)の高年初産例を経験したので報告した。妊娠中毒症発症の確率が高いと予測され,その発症予防の試みとして降圧剤とともにaspirinを妊娠15週から服用させた。血中のthromboxane B2/6—keto-PGFlα比の変動を観察したところ,aspirin服用前の2.42から服用後2週で2.07,服用後10週には0.83と6—keto-PGFlαが優位となった。母体は妊娠中毒症になり妊娠33週に胎児仮死のため帝王切開術を施行したが,分娩後腎炎の著しい増悪もなかった。胎児はAFDの下限で奇形もなく,胎盤の病理所見もほぼ正常だった。
 以上より,aspirin投与が,血小板由来のthromboxane A 2産生を血管由来のprostacyclin産生に比べ有意に抑制することにより,胎盤での梗塞とそれに起因するIUGRを予防した可能性が考えられた。

薬の臨床

子宮腟部円錐切除後に用いたアルギン酸ナトリウム(アルト®)の止血ならびに創傷治癒効果

著者: 本多静香 ,   会田都美子 ,   佐々木宏子 ,   遠藤力 ,   星和彦 ,   佐藤章

ページ範囲:P.1007 - P.1010

 子宮頸上皮内腫瘍に対して行ったcold knife Conizationならびにlaser coniza—tionの手術時にアルギン酸ナトリウム粉末(アルト®)を用い,止血効果および創傷治癒効果を検討した。
 cold knife conizationでは,止血効果は対照薬剤使用群(酸化セルロース綿)と差は認められなかったが,創傷治癒は促進された。
 laser conizationでは,非使用群と止血効果,創傷治癒効果ともに差は認められなかった。しかし,アルト使用群で,術後全く出血のない症例が多く認められた。
 副作用も認められず,操作性・有効性からみて本治療へのアルト使用は有用であると思われた。

追悼

故長谷川敏雄先生を偲んで

著者: 竹内正七

ページ範囲:P.1012 - P.1013

 先生の御逝去を悼み,先生に捧げる追悼号を出すにあたり,本誌の現編集委員の一人として,また,先生の御薫陶を戴いたものの一人として,ここに思い出の一端を記して,先生の御冥福をお祈り申し上げたいと存じます。先生は本誌の生みの親であり,創刊の時より,編集委員を勤めてこられ,編集顧問になられてからも,本誌の英文目次を90歳を越えられる最後の時まで担当してこられました。本誌が本号を追悼号として心から先生の御霊にお届け申し上げる所以であります。
 先生は第2次大戦後の荒廃した東大産科婦人科学教室に主任教授として熊本大学より昭和22年御着任され,教室の再建に文字通り獅子奮迅の御努力をなされ,多数の優秀な御弟子を養成され,立派な教室にされました。小生は先生から卒業試験を受けましたが,筆記試験と口答試験の両方を行われ,後者では問題を書かれたカードを引かせ,しばらく構想を練る時間を与えられたあと,グループの一人ずつ順次答えさせるというやり方でした。私は「横位分娩」という問題があたり,しどろもどろ答えたのでしたが,「山があたったのか,良くできた」と御ほめの御言葉をいただき感激したのを,今でも良く覚えております。私は卒業試験を受けるまで,内科志望でしたが,試験勉強をしている時,性ホルモンの神秘的な働きに興味をもち,産婦人科に入局する気になりましたが,最終的に決断させたのは口答試験の時の先生の御一言であったような気がします。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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