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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科43巻10号

1989年10月発行

特集 高感度ホルモン測定法と臨床応用

オキシトシン測定の産科的意義

著者: 牧野恒久1 元山鎮雄1 萩庭一元1 永井孝1 菅原正人1 鈴木英明1 中山陽比古1 飯塚理八1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室

ページ範囲:P.937 - P.943

文献概要

 オキシトシンは古くて新しいホルモンといわれる。事実,Dale1)が下垂体後葉の抽出物に子宮収縮作用があることを見出したのは1906年で,以後80年余にわたって幾多の研究が積み上げられてきた。オキシトシンの化学構造そのものはVigneaudら2)によって8種9個のアミノ酸からなる構造式が1953年に決定されている。衆知のようにオキシトシンは子宮収縮作用と乳汁の射出作用が主なものとされ研究されてきたが,近年,再び内分泌学上,注目され直されたのは以下の3点によるものと思われる。すなわち,従来オキシトシンそのものが化学構造上,最終の形と考えられてきたものが,分子量約30,000のneurophysinと呼ばれるprohormoneあるいは蛋白担体と結合して存在することが判明し,この領域の研究に幅ができた。第2にいわゆる異所性オキシトシンの存在があげられる。後葉以外に卵巣,胎盤,胸腺などに同一あるいは類似のペプチドが存在することが報告されて注目されている。第3にその多彩な生理作用である。これまでの3つの作用のほかに,血圧・脈拍への作用,前葉ホルモンや副腎皮質ホルモンへの作用,luteolysisの作用,血糖や遊離脂肪酸への作用,精子移送や記憶への作用などが報告され,古くて新しいホルモンと呼ばれる所以である。
 オキシトシンに関する国際会議は,最近では1984年にカナダのLac Beauportと1988年わが国の箱根で開催されている。これらの会議に出席してみると,オキシトシン研究の裾野の広さに驚かされる。現在,オキシトシンの研究は測定法,生合成,神経内分泌支配による分泌機序,作用機序,行動・情動との関連などさまざまな方向へ発展していることが窺える。本稿ではオキシトシンの測定法と広い意味での生殖生理作用を中心にまとめてみた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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