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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科43巻12号

1989年12月発行

文献概要

特集 治療最新のトピックス 内分泌・生殖

乏精子症の対策

著者: 繁田実1

所属機関: 1兵庫医科大学産婦人科教室

ページ範囲:P.1146 - P.1147

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Ⅰ.受精能の判定
 不妊症の中で男性側にその原因がある男性不妊症において,いわゆる精液検査で,精子数または精子濃度が正常基準値に満たないものを乏精子症と呼ぶが,未だこの正常基準値については統一されていない。守殿1)らは次のような値を正常男性の95%特異性における閾値として発表している。即ち精子濃度24.9×106/ml,精子運動率33.9%(BPPシステムによる測定値である。従来より行われている直接検鏡法では主観が入るため運動率は高く測定される。)精子奇形率53.3%,精液量1.1ml,総精子数61.5×106,総運動精子数25.8×106,精子運動速度21.5μm/sec,透明帯除去ハムスター卵への精子侵入率(ハムスターテスト)22%である。これらの各種パラメーターのうち,不妊診断率が高いものはハムスターテストにおける精子侵入率と精子運動率であり,総運動精子数及び精子運動速度がこれにつづいている。乏精子症診断の根拠となる精子濃度や総精子数と不妊症との相関性は意外と低く,診断率は20〜30傷にすぎない。即ち,乏精子症と言われているものの中には,運動速度の速い精子が多く,運動率の高いいわゆる妊孕性の高い症例と,速度が遅いかまたは運動率の低い妊孕性の低い症例が含まれているので,まずこれらのパラメーターを測定し,かつハムスターテストを施行して精子侵入率を測定し,正確な精子の受精能を診断しなければならない。このことは乏精子症に限ったものではなく,精子数や精子濃度の正常な場合でも同様である。即ち,精子濃度等が正常閾値以上でも運動率や運動速度の遅いもの,さらに,これらも異常なく一見正常に見える原因不明のものについても精子受精能測定は重要である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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