臨床婦人科産科43巻3号

1989年03月発行

特集 産婦人科と生物活性物質

Endothelinと妊娠中毒症

著者： 佐藤和雄¹ 関博之²

所属機関： ¹埼玉医科大学総合医療センター産婦人科 ²同愛記念病院産婦人科

ページ範囲：P.235 - P.238

文献概要

　妊娠中毒症の病因，病態論に関しては古来より数多くの学説が報告されてきた。その本質は胎児胎盤循環系を中心とした母体，胎児双方の循環不全状態と考えられ，その原因は妊娠によって惹起されるvolume expansionという負荷に対して，血管系が循環血液量を保ち，血圧の上昇を防ぐ恒常性維持機構が破綻したためと考えられている。現在のところ，プロスタグランディン（PG）やrenin-angiotensin-aldosterone系をはじめとする多数の循環調節因子が病因，病態形成になんらかの役割を果たしていることは衆目の一致するところである。しかし，これらの中でどの因子が妊娠中毒症発症の根本に関わっているのか，またそれらの諸因子がどのように関連して妊娠中毒症を発症させ，病態を形成してゆくのか不明な点が多い。このため近年，種々の循環調節因子による妊娠中毒症の仮説が立てられ，その立証が試みられている。