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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科43巻5号

1989年05月発行

雑誌目次

特集 MATERNAL ADJUSTMENT

胎盤形成のメカニズム

著者: 金沢浩二 ,   本間滋 ,   竹内正七

ページ範囲:P.421 - P.428

 胎生(viviparity)であるヒト妊娠の維持・継続には,胎盤の形成が必須の条件である。すなわち,通常卵管において受精がおこったのち,妊卵は子宮腔内に送りこまれ,子宮内膜に着床して母体から栄養をえなければならないが,さらに妊卵が胎芽・胎児となって発育を続けるためには,それに対応できる様々な機能を備えた胎盤の形成が必要である。その機能としてまず重要なことは,胎芽・胎児のために母体より栄養物を摂取し老廃物を排泄することであり,またガス交換すなわち,母体より酸素を吸収し,二酸化炭素を排出することである。さらにステロイドホルモン,蛋白ホルモン,その他胎芽・胎児と母体との調和に必要な多種多様な物質を産生する点である。
 以上のような胎児育成のための臓器としての胎盤の理解は基本的に重要であるが,移植免疫学的観点に立つと,胎児胎盤系は母体にとって同種移植片であるため,母体免疫系が免疫的拒絶反応を誘起しないような機構が存在していなければならない。

内分泌学的適応

著者: 武谷雄二 ,   水野正彦

ページ範囲:P.429 - P.435

 あらゆる生理現象の中で妊娠によりひき起こされる変化ほど劇的でしかも持続的なものはないといっても過言ではない。このような著しい変化に適応するため母体はさまざまな形で対応するが,就中,内分泌学的機序により遂行される適応は極めて重要である。なぜならば妊娠の起点を着床に求めればそれに引き続いておこる一連の変化は胎児または胎児胎盤系の存在により誘起された液性因子によるところが大きいからである。胎児・胎盤によりもたらされた液性因子は母体の各内分泌臓器の機能を修飾し,その結果母体は妊娠という負荷に対して適応し得るようになり,一方では胎児の生育にとって好適な環境の形成につながることになる。このように胎芽の存在により生じた諸種の変化は母児間で複雑かつ精妙な内分泌学的連鎖反応を起こしつつ妊娠は母児にとって安全に進行してゆく。
 妊娠に伴って生ずる内分泌学的変化は妊娠の合併症の病態生理とも密接に関係するものであり,産婦人科医は母体の内分泌的適応現象を熟知していなければならない。そこで本稿では,妊娠により変化する母体内分泌系を妊娠に対する母体の適応という視点より概説する。なお,胎児または胎児・胎盤系の内分泌は母体内分泌と不可分の関係にあるが,本稿では紙面の都合上割愛する。

循環器系

著者: 寺尾俊彦 ,   朝比奈俊彦

ページ範囲:P.437 - P.443

 母体は妊娠すると,reproductionを行うためのさまざまな適応性変化(maternal adjustment)をおこす。その主題は胎児・胎盤系の調和である。その中でも,血液を含む循環器系のmaternal adjustmentは重要である。
 循環器系の変化とひと口に言っても,解剖学的変化と血液の変化があり,血液の変化も量の変化とその性状の変化がある。さらに血液性状の変化も,血球系,免疫系,血漿蛋白系,血液凝固線溶系などの変化があり,また人体各臓器で産生されたり放出されたりする各種の酵素,ホルモン,電解質などの変化もある。これらがrepro—ductionという1つの目的に向かって調和しながら変動してゆくのである。

帝王切開術における呼吸応答

著者: 菅谷和江 ,   田中亮 ,   野見山

ページ範囲:P.445 - P.447

 従来より,妊娠するとその生理的変化から呼吸機能に影響があることはわかっている。妊娠初期にはプロゲステロンによると思われる変化で,1回換気量・分時換気量の増加が見られ,1回換気量の増加から呼気予備量の減少・機能的残気量の減少がひきおこされている。肺活量は妊娠によっても変化しないとするものと,するとする意見があるが,妊娠末期に横隔膜が挙上して胸郭の前後径が拡大してくると全肺気量が5%ほど低下する1)
 妊婦ではこの分時残気量の増加,機能的残気量の減少のために吸入麻酔薬の導入,覚醒が速くなっている。しかし,至適酸素化は速いという意見もある2)が,機能的残気量減少のために動脈血の酸素化能力が障害され3),容易に動脈血酸素分圧は低下する。言いかえれば,酸素化され易いが,低酸素状態にもなりやすいということである。痛みによる興奮や子宮収縮から酸素消費量が特に増加する分娩時は低酸素血症に陥りやすい。硬膜外麻酔を含め,分娩時の局所麻酔は鎮痛という点からは酸素消費量を減少させ,有利に作用する。

尿路系

著者: 中林正雄 ,   坂元正一 ,   雨宮照子 ,   武田佳彦

ページ範囲:P.449 - P.452

 妊娠により母体においては増大する子宮という変化をはじめ,循環動態や内分泌系の著明な変化がおこることはよく知られている。その影響により腎・尿路系にも解剖学的および機能的変化が生じ,母体は腎・尿路系においても妊娠に対応する適応現象がおこっている。これらの変化は妊娠継続には当然必要なことではあるが,そのために妊娠中に合併しやすい腎・尿路系の疾患もある。これらの妊娠による腎機能や尿路系の変化をよく知ることは,妊娠中に生ずる腎・尿路系の異常を正しく評価し,早期に診断するためには必要なことである。
 本稿では,はじめに妊娠によって生ずる腎・尿路系の解剖学的変化について述べ,ついで母体の適応現象としての腎機能の変化について概説する。

水・塩類代謝

著者: 伊藤昌春 ,   岡村均

ページ範囲:P.453 - P.458

 生体内で,水は細胞内液と細胞外液との間を,塩類とともに移動して浸透圧平衡を維持している。この浸透圧は,内分泌系や自律神経系の複雑な機序によって,狭い範囲内で調節され,細胞の機能が維持されている。妊娠時には,主として胎盤より多量の性ホルモンが分泌されるため,この内分泌系に大きな変化が生じる。estrogenはrenin-angiotensin-aldosterone系を介して水・Naの貯留やCa代謝に影響を与え,progesteroneは抗aldos—terone作用や蛋白異化作用を持っている。また,蛋白同化作用を持つandrogenは,血清中の窒素化合物の増加や水・Na貯留を起こす。
 新しい生命の誕生に伴い,水や塩類が蛋白質,糖質,脂質とともに妊婦に蓄積される。本稿では,妊娠時の水・塩類代謝の生理的変化と,異常な水・塩類代謝を伴う疾患について述べる。

Overview

妊娠の生理的適応

著者: 竹内正七

ページ範囲:P.417 - P.419

 妊娠現象をめぐる病態は,極めて内科的であるといえよう。産科医は内科医でもあらねばならないといわれるゆえんである。妊婦診察にあたって,産科医は妊娠時の母体の生理的適応を良く理解し,その異常の早期発見や,生理的適応のもたらすminor troublesへの患者の指導を適切に行ってゆく必要がある。産科医は妊娠時の母体適応の生理とその病理をもっとも良く理解し,適切な対応の仕方を心得ている内科医でもあるのである。
 さて,生体の調節機構についての総論的な知識を,まず整理しておく必要がある。約10カ月という期間に,1コの妊卵を約3,000gの胎児にまで育てるということは,生体にとってどれほどの大仕事であるかということに思いをはせる必要がある。しかも,母体にとって同種移植片とも見做すことのできる胎児を,母体の子宮のなかで育てている免疫的仕組みにも思いをはせる必要もある。これは卵性生殖から哺乳生殖への生殖形態の進化の過程で,どうしても解決しなければならない免疫的問題でもあったのである。

グラフ 生殖生理と走査電顕

V.精子の卵子透明層への結合

著者: 北井啓勝 ,   大庭三紀子 ,   鈴木秋悦 ,   飯塚理八

ページ範囲:P.408 - P.409

 卵を覆う透明層は,受精において種特異性の決定および多精子受精の抑制などの役割を果たしているが,精子との相互作用については未知の点が多い.最近マウスでは,精子細胞膜上のガラクトシル・トランスフェラーゼが透明層表面の糖鎖のN‐アセチル・グルコサミンと反応し,精子の透明層結合に関与することが明らかにされている。ハムスターの精子と卵子の結合にも同様の酵素が関与しているかを検討した。
 ヒアルロニダーゼにより顆粒膜細胞を除去した排卵卵をm-TAPL培養液にて4時間前培養した精巣上体精子を用いて体外受精し,精子の透明層付着,結合,および貫入について走査電子顕微鏡により観察した。

指標

ヒト精子先体反応の新しい判定法とその応用

著者: 福田勝 ,   高田道夫

ページ範囲:P.411 - P.416

 哺乳動物精子が卵子と受精するためには,あらかじめ受精能獲得1)2)および先体反応3)4)という一連の機能的・形態的変化を行うことがよく知られている。機能的変化である受精能獲得を受けた精子がhyperactivationと呼ばれる特異な尾部運動を示すことが,ハムスターで最初に証明された5)。その後,このhyperactivationはイヌ,モルモット,マウス,ウサギでも証明されているものの,現在のところヒトでは明らかにされていない。受精能獲得を受けた精子は次に形態的変化である先体反応を起こす。先体反応は先体外膜とそれに接している原形質膜が癒合し,次いで胞状化,離脱する。この結果hyaluroni—dase,acrosin,esteraseなどの先体内容物が放出され,先体内膜が露出する(図1)。これら先体反応は精子が卵子の透明帯貫通および形質膜との融合に不可欠な変化である。したがって受精時のヒト精子先体反応の発生を知ることは受精を理解する上で必要かつ重要なことである。
 ヒト精子先体反応は,従来,透過電顕により観察されてきた。これはヒト精子が光学顕微鏡で観察するには小さすぎるためである。したがってヒト精子についての研究は他の哺乳動物よりも遅れていた。1980年代になり光学顕微鏡レベルでのヒト精子先体反応の判定法として,fluoresceinated lectinを使った方法6)(TalbotとChacon,1980),Triple stain法7)(TalbotとChacon,1981),monoclonal antibodyを使ったindirect imrnunofluores-cenceによる方法8)(Wolf et al.,1985)が報告された。本邦では現在多くの研究者がTriple stain法を採用している。しかしながらこれらいずれの方法もいくつかの理由で世界的に広く受け入れられるにはいたっていない。TalbotとChaconによるlectinを使った方法ではlectinにRicinis communis agglutinin-Ⅱ(RCA-Ⅱ)を使用している。RCA-Ⅱは入手が容易で,そして方法も迅速,簡便である一方,非常に毒性が強い。またこの方法には生存精子と死滅精子を区別する手段をもっていない欠点がある。なぜならば死滅精子の多くは変性による先体反応を起こしており,生存精子の生理的先体反応を評価するにはこれら死滅精子は除外しなければならない。1986年,Crossら9)によりflouresceinated lectinとpolyclonal antisperm antiserumを用いた方法が報告された。そこで本欄ではこのCrossらの方法の紹介と,この方法が透明帯除去ハムスター卵子を用いたsperm penetration assay(SPA)時のヒト精子に対して先体反応を知りうるのに有用な方法であるばかりでなく,精子と卵子の相互作用を知る手段となりうることを報告する。

トピックス

更年期以後の婦人に長期間estrogen療法を行う際にはprogestogenの附加的投与を/頻回の帝王切開術と合併症—何回まで帝切は可能か

著者: 広井正彦

ページ範囲:P.420 - P.420

 更年期障害や更年期以後の婦人の老化防止などの治療としてconjuga-ted estrogenなどの長期間投与が有効であることが知られている。しかし,estrogenの量や投与期間が増加するにつれて子宮内膜の癌の発生率が増加することが指摘され注目されるようになった。WHOの報告によると,estrogen療法を5年間以上用いた婦人では用いなかった婦人に比して6〜8倍もこの危険が増大するという1)。このような指摘にも拘らず,estrogenによる子宮内膜癌罹患患者は適切な処置によりむしろ健康婦人よりも長生きするとChuら2)はのべている。この一見した矛盾の原因は完全にはわかっていないが,estrogen投与による子宮内膜癌患者はその後の医療監視が充分行われたことにより死亡率が減少するものと思われる。
 一方,estrogen療法にprogestogenを附加的に投与すると,子宮内膜の分裂活動を抑制するために,adeno—matous hyperplasiaからadenocar—cinomaへの発生を予防出来ることが明らかになって来た3,4)

臨床研修セミナー 外陰疾患—外陰ジストロフィーを中心に

皮膚科からみた外陰ジストロフィー

著者: 池田重雄

ページ範囲:P.464 - P.470

 外陰の前癌病変とは,組織学的には良性病変と異なり,癌ではないが癌に類似した異型(atypia)を示す細胞が表われ,異形成(dys—plasia)が基底層の一部あるいは棘細胞層にかけてみられる上皮性変化を意味する。またこれら所見は臨床的には白色角化性病変(広義白板症)としてみられることが多い。このような広義白板症は,かつてはleukoplakia,leukoplakic vulvitis,lichen sclerosus kraurosis,primary atrophy,sclerotic dermatosis,various types of atrophic and hypertrophic vulvitisなどと種々の名前で呼ばれ,またそれらが前癌病変ないし上皮内癌であるとする一般臨床の固定概念があったため,多くの例でvulvectomyなどを受けてきたようである。しかしながらそれらを組織学的に検討してみると,全くの良性病変から,軽度ないし中等度の異形成が認められるもの,さらには上皮内癌と判定されるものまでの,かなり幅広い病変が含まれていることが分かって来た。

診断

著者: 児玉省二 ,   竹内正七

ページ範囲:P.471 - P.476

 わが国では,婦人科医の外陰疾患に対する関心は少なく,その系統的な研究も乏しいことが指摘されている1)。その理由としては,外陰は皮膚科領域の疾患が少なくなく,その理解が必要なこと,従来より診断名が必ずしも統一されていなかったこと,肉眼診のみで診断と治療がなされる場合が多いこと,など幾つかの要因が考えられる。
 しかし,外陰ジストロフィーの主症状である掻痒感は本人にとっては極めて深刻な問題であり,また悪性疾患より頻度が高いことなど1),今後は従来の感染症,悪性疾患の診断・治療と同様に本疾患への関心と理解を深めることが求められる。

Overview

外陰ジストロフィーおよび異形成

著者: 山辺徹

ページ範囲:P.459 - P.463

 従来より広く用いられてきた白斑症leukoplakiaや外陰萎縮症kraurosis vulvaeなどの語は肉眼的ないし症候的な表現にすぎず,疾患名としては不適当なことから,今日では外陰ジストロフィーvulvar dystrophiesの名称で一括されている。一方,表皮に細胞異型を認めるものは外陰上皮内腫瘍vulvar intraepithelial neoplasia(VIN)と呼ばれ,異形成dysplasiaと表皮内癌carcinoma in situが含まれる。そして外陰ジストロフィーのうちには異形成を伴う例がみられるが,従来,白斑症や外陰萎縮症からの癌化とみなされていたのは,今日では異形成を伴う外陰ジストロフィーからの癌化であることが指摘されている。

私はこうしている

異形成を伴う外陰ジストロフィーの取り扱い

著者: 山辺徹

ページ範囲:P.477 - P.480

 従来,外陰において白斑症,硬化性萎縮性苔癬あるいは外陰萎縮症など多くの名称で呼ばれてきた一群の疾患(主に白色病変)は,今日では,International Society for the Study of Vulvar Diseaseの提唱によって外陰ジストロフィーvulvar dystrophiesの名称に統一されている。そして組織学的所見から,これを増殖性ジストロフィーhyperplastic dystrophy,硬化性苔癬lichen sclerosusおよび両者が共存する混合型ジストロフィーmixed dystrophyに分けている。さらにそれらの増殖性表皮に異形成dysplasia (つまり細胞異型)を伴うか否かによって細分類した。一方,外陰上皮内腫瘍vulvar intraepithelial neoplasia (VIN)の概念を導入し,これをVINⅠ(軽度異形成),VINⅡ(中等度異形成)およびVINⅢ(高度異形成および表皮内癌)の3段階に分けた。
 したがって,異形成のうちには,増殖性ジストロフィーに伴うもの,混合型ジストロフィーに伴うものおよびジストロフィーを伴わない異形成単独のものの3つの場合が存在する。今日では,外陰扁平上皮癌の少なくとも大部分はこれらの異形成の領域から発生すると信じられている。また異形成の病因としてhuman papilloma virus感染との関連も知られており,臨床的には,これらのことを考慮に入れて異形成の管理と治療がなされるべきである。

硬化性苔癬の治療

著者: 杉森甫

ページ範囲:P.481 - P.483

 硬化性苔癬は従来,外陰萎縮症,萎縮性白斑症などと呼ばれていたものに相当する疾患である3,4)。大陰唇,小陰唇,会陰,肛門周囲に白色斑として認められる。辺縁は不規則であり,かつ周囲の皮膚よりやや沈下しているのが特徴的とされる。進行してくると,皮膚は萎縮し皺襞を形成する。さらには小陰唇が消失し,腟口が狭小となる。白斑はしばしば左右対称性にみられ,これらの特異な像から臨床診断は比較的容易である。しかし,同様に白斑を呈してくる疾患に増殖性ジストロフィーがあり,これと本症とが合併した形の混合型ジストロフィーなどもあるので,治療開始前にまず診断を確定しておくことが重要である。

増殖性ジストロフィーおよび異型を伴わない硬化性苔癬の取り扱い

著者: 須川佶 ,   梅咲直彦

ページ範囲:P.484 - P.487

 外陰の腫瘍性疾患は,従来種々の名称で呼ばれ,そのため病態に対する考え方も混乱し,治療法も確立したものはなかった。しかし1976年International Society for the Study of Vulvar Disease(ISSVD)でその名称が定義され,ようやくその病因,治療につき共通した理解に立って検討が可能となってきた。そしてその中から病因に関する種々の新しい治験が報告され,それをもとに新しい治療法が確立されつつある。
 そこで新しい分類をもとにした外陰の増殖性ジストロフィーおよび硬化性苔癬の取り扱い,とくに治療を中心に我々の経験および文献的考察も加え記述する。

外陰疾患—外陰ジストロフイーを中心に 私はこうしている

非異型増殖性ジストロフィーと硬化性苔癬

著者: 荻野満春

ページ範囲:P.488 - P.491

 日常診療の場で外陰疾患は子宮癌や卵巣癌と較べると十分な知識や関心をもって扱われることが少ないのではないだろうか。その多くは掻痒感を主症状とすることから,ややもすると漫然と軟膏やクリーム塗布が長期間行われがちであるが,外陰病変に潜在する癌あるいは前癌病変を看過した場合,問題は重大である。本項では外陰ジストロフィーのうち非異型増殖性ジストロフィーと硬化性苔癬について,その病像,病因,治療についてのべるとともに癌潜在能を含む診断についても言及する。

原著

外性子宮内膜症(チョコレート嚢胞)の電子顕微鏡学的検討

著者: 早田隆 ,   ベルドゥオフランシスコ ,   川島吉良 ,   太田勲 ,   村中祥悟

ページ範囲:P.493 - P.499

1)不妊と関連の深いとされる外性子宮内膜症(チョコレート嚢胞)の5症例につき,電顕的に検討した。
2)5症例の内訳は,37歳から47歳にわたり(平均40.8歳),チョコレート嚢胞の大きさは最大径3〜5cmが4例である。
3)電顕的に,核は5例中4例の異所内膜腺管上皮において,多角形を呈し,核膜不整である。
4)細胞質の細胞内小器官は中等量である。5例中4例に微絨毛を認める。
5)われわれの先の内性子宮内膜症(子宮腺筋症)の電顕像と比較・検討すると,凹凸不整の不規則核膜を有する核の所見が,本症の特徴である。
6)これらの電顕様は,チョコレート嚢胞の発生病理を考える際 Sampsonの子宮内膜移植説よりもむしろ体腔上皮の化生説を支持するものと思われた。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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