文献詳細
臨床研修セミナー 老年期婦人疾患
文献概要
昭和63年度の厚生の指標によれば65歳以上の老年人口の比率は,昭和50年には7.9%,昭和55年には9.1%だったが,昭和60年には10.3%と近年著しく増加している。このように老年人口の増加に伴って老人に対する手術の機会が年々増加の傾向を示している。老人の手術は以前には単に老人だからという理由だけでややもすれば危険視され,外科医,婦人科医,麻酔医もあえて手術を回避し,保存的療法に頼る風潮があったが,近年老人の生理,病態が次第に解明され,特に麻酔法の進歩,手術術式の改良,抗生物質の選択,輸液を中心とした術前,術中,術後の管理の進歩などによって手術の適応は拡大され,安全性も増大している。しかしその反面,老人は概して術前より合併症を有する頻度も高く,全身の生理機能が低下し,手術侵襲に対する予備能も低下しているため,手術,麻酔に伴う危険が高いことも否定できない。老人の手術に際してはその患者の状態を十分把握し,不利な条件があればあらかじめこれを是正し,手術適応,術式の検討,麻酔法の選択を適正に行い,術後の管理も厳重に行って,社会復帰できるようにリハビリテーションまで考慮しなければならない。
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