文献詳細
原著
切迫早産とChorioamnionitis
著者: 有澤正義1 今井史郎1 末原則幸1 竹村喬1 藤田富雄1 林昭1 中山雅弘1
所属機関: 1大阪府立母子保健総合医療センター
ページ範囲:P.681 - P.685
文献概要
当センター開院以来6年間で32週未満の切迫早産は703例であった。そのうち,早産管理に強い影響を及ぼす母体異常としては常位胎盤早期剥離,前置胎盤,合併症の悪化による早産,前期破水,胎児異常としては胎児仮死,胎児奇形,胎児死亡,多胎などがあるが,これらを除いた母体・胎児異常の認められなかった106例についてchorioamnionitisと入院時の感染マーカーとの関係を検討した。chorioamnionitisは胎盤の病理組織学的検査によりBlanc分類のstage Ⅰ以上とした。
今回調査の106例の切迫早産の中に42例(39.6%)のchorioamnionitisが認められた。chorioamnionitisの出生前診断には入院時の体温,白血球の上昇より, C−reactive protein(以下CRPと略す), fibrinogen(以下FBGと略す)の上昇の方が有用であった。入院時のCRPやFBGを組み合わせることによりpositive predictive valueは69・2%,negative predictivc valueは89.3%と上昇し,感染マーカーとして有用であった。入院時にCRPやFBGの上昇が認められたものや,病理的にchori・amnionitisが証明されたものは入院から分娩までの平均日数が短かった。
また,病理的にchorioamnionitiSが証明されないものの中にCRPやFBGの上昇しているものが認められた。このことは病理的には証明されないchorioamnionitisの中に切迫早産に関係した子宮内感染があり,入院時のCRPやFBGでそれらを推測することも可能であろうということが示された。よって,切迫早産にとって入院時のCRPやFBGが重要な検査であることが明らかになった。
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