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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科44巻12号

1990年12月発行

雑誌目次

特集 最新治療薬ガイド1990 Ⅰ.腫瘍治療剤

1.卵巣癌治療薬

著者: 平林光司

ページ範囲:P.1048 - P.1049

□CAP
1.対象と処方例
 上皮性卵巣悪性腫瘍に対する化学療法剤の中で最も普及している代表的処方である。特に70%を占める漿液性腺癌に対する有効率は85%を超えるが,類中腎癌では殆ど無効であり,粘液性腺癌では30%程度の有効率である。初回投与で有効であった症例では再発時にもほぼその半数において有効である。

2.子宮頸癌治療薬

著者: 清水敬生 ,   荷見勝彦 ,   増淵一正

ページ範囲:P.1049 - P.1052

 子宮頸癌には,扁平上皮癌と腺癌があるが,本稿では頻度の高い前者に対する化学療法について述べる。扁平上皮癌は放射線に対する感受性が強く,局所再発に対しては放射線療法を優先するのが一般的である。その後の再発,あるいは全身転移に対しては化療が適応となる。1979年にBM(プレオマイシンとマイトマイシンの併用)療法の有効性が認められ,さらに1981年にCDDPが単独でも奏効することが報告されて以来,プレオマイシンとCDDPを中心に化療が展開されてきた。以下に主なプロトコールについて述べる。

3.子宮体癌治療薬

著者: 玉舎輝彦

ページ範囲:P.1052 - P.1054

□CAP
1.対象と処方例
 進行期体癌(手術ならびに放射線療法で残存腫瘍の考えられる〜明らかな症例,手術ならびに放射線療法の対象とならない症例)や再発体癌で,第1選択療法として用いる。すなわち寛解導入に用いる。また黄体ホルモン剤との併用として用いることも可能であり,黄体ホルモン剤に無効例や黄体ホルモン剤投与が禁忌となる患者に用いる。

4.絨毛性疾患治療薬

著者: 石塚隆夫

ページ範囲:P.1054 - P.1056

 絨毛性疾患症例を治療する際には,絨毛癌診断スコアにより侵入奇胎スコア(4点以下)群と絨毛癌スコア(5点以上)群に鑑別し,治療方針を決定する必要がある。化学療法の種類を決定する際にも,侵入奇胎と絨毛癌を分けて考える必要がある。

5.子宮筋腫のホルモン療法

著者: 堂地勉

ページ範囲:P.1056 - P.1057

 子宮筋腫は婦人疾患の中でもっともポピュラーな疾患である。その治療は手術療法が一般的であり,子宮全摘術が最も広く行われている。しかし,未婚の症例や不妊症を合併した症例,あるいは手術ができない症例では取扱いが難しい。
 子宮筋腫がなぜ発生するかは必ずしも明確でないが,閉経になると子宮筋腫が縮小するという事実や,妊娠やpillの服用により逆に増大するという事実からエストロゲンの関与があることは確実である。このことから最近,子宮内膜症患者に臨床応用されているGnRHagonist や Danazolを子宮筋腫に応用する試みがなされている。

子宮筋腫の漢方療法

著者: 福島峰子

ページ範囲:P.1057 - P.1058

1.対象と処方例
 子宮筋腫では手拳大以下のものは積極的,外科的治療の対象にしない。しかし月経異常すなわち過多月経,頻発月経や月経困難症,さらには貧血など随伴症状が見られる場合,薬物療法や手術療法を考慮する。薬物療法のうち,漢方薬では筋腫そのものの縮小効果は期待出来ないが随伴症状の改善には有効である。
 主として駆瘀血剤が選択される。したがって実証には桃核承気湯,中間証には桂枝茯苓丸,虚証には当帰芍薬散の応用が多い。

6.抗癌剤副作用防止用薬

著者: 波多江正紀

ページ範囲:P.1058 - P.1060

□次硝酸ビスマス(BSN)
1.対象と処方例
 シスプラチン(CDDP)を中心とした癌化学療法が広く実施されるようになり,嘔吐対策と並んで腎毒性防御が重要となってきた。従来より大量の補液によりCDDPが惹起する腎機能低下は防止し得ると考えられて来た。より安全,より少ない補液,患者拘束の短縮化,さらに可能であればより多量のCDDPを投与する目的のために次硝酸ビスマスが投与される場合がある。

7.抗癌剤一覧表

著者: 清水敬生 ,   荷見勝彦 ,   増淵一正

ページ範囲:P.1062 - P.1064

Ⅱ.婦人科一般用の治療剤

1.子宮外妊娠治療薬

著者: 櫻木範明 ,   田中俊誠 ,   藤本征一郎

ページ範囲:P.1066 - P.1066

□メソトレキセートMTX
1.子宮外妊娠治療におけるMTX療法の役割
 子宮外妊娠(卵管妊娠および非卵管性子宮外妊娠)に対しては通常手術療法が施行される。妊孕能の温存が問題とならない場合には,卵管妊娠に対しては卵管切除術が施行される。妊孕能温存が求められる場合には妊娠内容圧出法,卵管部分切除法あるいは卵管切開法などにより妊娠内容を除去し卵管の温存を計る1)。しかし手術療法はしばしば術後の付属器周囲の癒着のために子宮外妊娠をくりかえしたり,医原性の不妊症の原因となることが指摘されている。
 近年注目されている保存療法としてMTX(methotrexate,メソトレキセート®)療法がある2,3)。MTXは1956年Li, Hertzらにより絨毛性疾患に対する臨床効果が発表されて以来,絨毛性疾患治療の中心に位置づけられ用いられてきた薬剤である。

2.尿失禁,頻尿治療薬

著者: 斉藤政彦 ,   近藤厚生

ページ範囲:P.1067 - P.1068

□オキシブチニン
1.対象と処方例
 近年,高齢化に伴い頻尿,尿失禁が大きな社会問題になってきている。尿失禁のうち膀胱の過敏性が原因で発生する尿失禁に対しては薬物治療が中心となる。オキシブチニンは神経因性膀胱や不安定膀胱などの膀胱の過活動性が原因で発生する頻尿,尿失禁の治療薬として優れた効果を発揮する。

3.術後排尿障害治療薬

著者: 佐長俊昭

ページ範囲:P.1068 - P.1068

□臭化ジスチグミン
1.対象と処方例
 日常診療において,広汎性子宮全摘除術および直腸切断術をうけた患者の神経因性膀胱に伴う排尿障害には,しばしば経験することがある。
 この神経因性膀胱による排尿障害はさけることの出来ない合併症であるが,これを軽減するには,骨盤神経叢を膀胱枝まで温存する必要がある。不幸にして,術後神経因性膀胱を合併した場合,泌尿器科的諸検査の上で,臭化ジスチグミン(ウブレチド)が,効果をあげることがある。

4.特発性血小板減少症治療薬

著者: 松本隆史 ,   伊東雅純

ページ範囲:P.1069 - P.1070

□副腎皮質ホルモン
1.対象と処方例
 妊娠の継続にともない特発性血小板減少症が増悪し,出血傾向が出現してきた症例や,妊娠後,新たに発見された症例が治療の対象となる。第1選択薬として副腎皮質ホルモンがよく使用される。

5.栄養補給

著者: 金岡毅

ページ範囲:P.1070 - P.1071

□高カロリー輸液
 栄養輸液(total parenteral nutrition,TPN)は,①手術などの侵襲による異化作用の軽減,②術後合併症の予防および治療,③長期絶食期間中の栄養管理などを目的とする。

6.麻痺性イレウス治療薬

著者: 立川勲

ページ範囲:P.1071 - P.1072

 成因 麻痺性イレウスの原因としては大きく3つに分けられている。①急性化膿性腹膜炎,②開腹手術後;これは手術によって腹膜に作用した機械的刺激によって起こってくると考えられ,通常は術後2〜3日経過すると自然に回復するものであって,生理的イレウスと呼ばれるものである。③その他の原因として,腹部打撲,卵巣嚢腫の茎捻転,急性膵炎,胆石,腎結石の発作時,腸間膜血管閉塞症,脊髄損傷などが挙げられる。
 対象 以上挙げた麻痺性イレウスの治療の原則は原因治療にあることは言うまでもない。したがって本稿の意図するところの疾患対象としては主として開腹手術後に出現する遷延したイレウス状況の治療について,如何に対処するかを述べる。

7.更年期の腰痛治療薬

著者: 苛原稔 ,   青野敏博

ページ範囲:P.1075 - P.1076

 更年期の婦人では,女性ホルモン分泌の急激な低下に伴って自律神経が失調し,のぼせ・ほてり,発汗などの血管運動神経症状の他に,腰痛をはじめ肩凝り,関節痛などの運動器神経症状を中心とした疼痛を伴う不定愁訴を訴えることが多い。
 更年期婦人の不定愁訴としての腰痛を取り扱う際には,性器の炎症,腹部の良性腫瘍(子宮筋腫,卵巣嚢腫など)や悪性腫瘍(子宮癌,卵巣癌など),尿路系の疾患,さらには骨粗鬆症をはじめとした骨疾患など,器質的な疾患を原因とする腰痛が含まれている可能性があるので,十分な検索を行って,これらの疾患を除外する必要がある。また,更年期の腰痛の発症には女性の解剖学的特質も関与する部分が多く,治療にあたっては薬剤の投与とともに姿勢や生活習慣の改善,運動療法の導入なども考慮する必要がある。

8.外陰掻痒症治療薬

著者: 猪原照夫

ページ範囲:P.1076 - P.1077

□抗ヒスタミン剤
 症候性・非症候性を問わず,ひろく用いられる。鎮痒作用の強いのは,エタノールアミン系(レスタミン,ベナ等),その他(ヒスタクール,オイラックス)などである。内服,外用で投与する。

9.ケロイド予防薬

著者: 武田克之 ,   中西秀樹

ページ範囲:P.1077 - P.1078

 熱傷,外傷,手術創,痤瘡などの皮膚損傷に基づく真皮の炎症に続発する皮膚の盛り上がりをケロイドとよぶ。ほとんどは損傷後の瘢痕上に生じた瘢痕性ケロイドであるが,先行する瘢痕を気付かぬか全く正常な皮膚から生ずる特発性ケロイドもあるという。しかし,後者では軽微な損傷が気付かれぬのみで,両者を区別すべきではないとの説も強い。また白人より黒人,東洋人種に好発し,乳児,老人で発症し難い特異な創傷治癒反応との見方もある。他方,家族的発生も想定され,1個人においても体部,年齢により変動する。したがって,患者のケロイド体質を的確に知りえないので,狭義のケロイドの予防は困難である。本稿では予防を含めた治療について,局所療法のうちステロイドテープ,ステロイド外用剤を中心に記述する。

10.外陰パピローマ治療薬

著者: 己斐澄子

ページ範囲:P.1078 - P.1079

 外陰パピローマすなわち尖圭コンジロームは,HPV(Human Papillomavirus)の主として6型・11型の感染により生じる。HPV関連疾患に対する治療としては,表1に示す種々の方法がある。外陰の尖圭コンジロームに対する薬物療法として,Podophyllin,Idoxuridine+Aclarubicin hydrochloride合剤軟膏,Interferonの3剤をとりあげる。

Ⅲ.抗菌剤

新しい抗菌剤の特徴と使用上の問題点

著者: 松田静治

ページ範囲:P.1082 - P.1083

 感染症治療のための化学療法の主流はβ‐ラクタム剤が占めているが,最近はこれに新しいキノロン剤が加わりつつある。特にキノロン剤についていえば従来尿路感染症に用いられていたナリジクス酸(ウィントマイロン,NA)を初めとする旧キノロン剤に次いで抗菌スペクトルおよび抗菌力の増強された新キノロン剤がオフロキサシン(タリビット,OFLX)ほかぞくぞくと登場した。ここに述べる塩酸ロメフロキサシン(ロメバクト,LFLX),トシル酸トスフロキサシン(オゼックス,TFLX)は最も新しい薬剤である。β‐ラクタム剤ではセフェム剤の経口,注射剤の2,3が登場した。

Ⅳ.周産期用薬剤

1.妊娠中毒症の予防・治療薬

著者: 日高敦夫

ページ範囲:P.1087 - P.1089

□カルシウム
1.対象と処方例
 Ca摂取量の多い地域では高血圧症発症頻度が低く,逆に少ない地域ほど発症し易い事が言われている。そして最近では,Ca摂取不足と高血圧発症に関する疫学的因果関係が明らかとなって来た。さらに妊娠高血圧発症にもCa摂取不足が関与している可能性が強く示唆されるようになった。
 日本人のCa摂取量は不足勝であり,厚生省は,1日600mgのCa摂取量が必要,としている。しかし最近では体格向上に伴い700mgは必要,とする研究者が多い。そして妊娠後期ならびに産褥期では,少なくとも1g以上のCa摂取量が要求される。さらに妊娠中毒症発症予防には1日1.5g以上の摂取量が必要であろう。

妊娠中毒症に対する漢方治療

著者: 相羽早百合

ページ範囲:P.1089 - P.1090

1.対象と処方例
 妊娠中毒症は,妊産婦管理の進歩,および妊婦の自覚等により発症頻度は減少してきている。しかし,その本態あるいは原因については未だ明らかでない。また,近年児に対する影響が考慮され始めて以来,薬物療法より従来から行われている減塩,安静療法を中心とした保存的療法が主となっている。そこで登場するのが安全性が高い漢方薬である。
 中毒症に対する代表的なものに当帰芍薬散,五苓散,柴苓湯などがあげられる。

2.流産治療薬

著者: 岡田清 ,   篠崎百合子

ページ範囲:P.1090 - P.1092

□イソクスプリン
1.対象と処方例
 切迫流産の中でも妊娠12週から24週までの後期切迫流産は,子宮収縮等,切迫早産に準じて考えるべきであり,治療法もそれに準じたものとなる。すなわち臨床症状として下腹部緊満感,下腹部痛や性器出血の訴えがあり,また診察で切迫流産を認めた場合には,超音波断層法で胎盤の位置,胎児生存などの確認を必ず行ってから切迫流産の治療を行う。治療は先ず安静臥床が必要である。それと同時に子宮収縮抑制剤としてイソクスプリンを投与する。以下に処方例を示す。

3.子宮筋収縮緩和剤

著者: 本郷基弘

ページ範囲:P.1092 - P.1094

□イソクスプリン
1.対象と処方例
 交感神経受容体刺激剤に子宮収縮抑制作用が見出され,α作用を除いて臨床応用可能な薬剤として最初に開発されたβ受容体刺激剤である。しかし,β2作用のみならず,β1作用も不快な副作用として出現することが多いので,β1作用が少なくβ2作用が選択的に強い誘導体へと引き継がれて行っている。対象は切迫流早産患者全般である。

子宮収縮抑制用漢方薬

著者: 千村哲朗

ページ範囲:P.1094 - P.1094

□当帰芍薬散1.対象と処方例
 切迫早産における子宮収縮抑制剤を東洋医学の面から考察すると安胎薬の概念のなかに求めることができる。安胎薬とは金匱要略に記載されているごとく「婦人懐妊,腹中瘀痛,当帰散主之」に代表されるが,婦人が妊娠し激しい腹痛を訴える場合に当帰散を処方する意義は,現代産科学での子宮収縮抑制剤に相当する。当帰散は現代漢方では,当帰芍薬散がその組成が類似し,トコライシスとしての効果が期待できる。

4.分娩誘発と陣痛促進用薬剤

著者: 兼子和彦

ページ範囲:P.1096 - P.1097

□プロスタグランディンF,PGF
1.対象と処方例
 対象は妊娠末期における分娩誘発と陣痛促進である。
 分娩誘発の適応は妊娠中毒症,前期破水,糖尿病・腎疾患などの合併症妊娠,過期妊娠,子宮内発育遅延,Rh不適合妊娠,絨毛・羊膜炎など母・児の危険が疑われるとき,子宮内胎児死亡のほか社会的適応であり,陣痛促進の適応は微弱陣痛に限られる。相対的禁忌として前置胎盤,胎位異常,臍帯下垂・脱出,帝王切開・筋腫核出既往例,子宮壁過度伸展(多胎妊娠・羊水過多症),頻産婦,先進部が骨盤入口に嵌入していないときなどがあげられる。

5.頸管熟化薬

著者: 西島正博 ,   巽英樹

ページ範囲:P.1098 - P.1099

□DHA-S
1.対象と処方例
 妊娠38〜41週の頸管熟化不良例,つまりビショップスコアでは4点以下の妊婦に対して用いられる。多くは初産婦が対象となる。しかし投与の際には分娩予定日の再確認を行い,妊娠週数の明らかな例に使用する。

頸管の熟化と漢方薬

著者: 相羽早百合

ページ範囲:P.1099 - P.1100

1.対象と処方例
 妊娠中,便秘,貧血,妊娠中毒症などの合併症例に,当帰芍薬散を投与した結果,これらの患者は妊娠末期に頸管の熟化がよく,また分娩時間の短縮もみられたため,妊娠8カ月以降の妊娠にルーチンに当帰芍薬散を投与した。

6.産科DIC治療剤

著者: 中林正雄 ,   曽我賢次

ページ範囲:P.1101 - P.1104

□ウリナスタチン(多価タンパク分解酵素阻害剤)
1.対象と処方例
 DICではショックを伴うことが多い。ショックになると末梢循環不全により,アシドーシス,血液粘度の上昇,血流停滞,slugging,血栓形成となり,DICは悪化してくる。ウリナスタチンには抗ショック作用があるためDICでショックを伴う循環不全に使用される。また,タンパク分解酵素の活性化を抑制する効果もあるため循環状態も改善される。但し,抗凝固作用はないので他の抗凝固薬剤(ATⅢ等)を併用する必要がある。

7.降圧剤

著者: 飯沼博朗

ページ範囲:P.1105 - P.1106

□アプレゾリン
1.対象と処方例
 一般名はヒドララジンで,チバガイギー社の商品名である。
 妊娠中毒症(中毒症)の高血圧に対して汎用されている。症例や状況によって経口・筋注・静注と各種の投与法が行なわれる。

8.乳汁分泌の促進と抑制用薬剤

著者: 青野敏博

ページ範囲:P.1106 - P.1107

□スルピリド
1.対象と処方例
 近年母乳哺育の重要性が再認識されているが,乳汁分泌不全に悩む母親もよくみられる。この際にはまず哺乳の励行,乳腺の空虚化,精神的安静などの分泌促進策を講じる。それでも乳汁の産生が不十分な褥婦に対してスルピリドを投与する。

9.RDSの治療薬

著者: 藤原哲郎

ページ範囲:P.1107 - P.1108

□サーファクテン
 サーファクテン(surfactant-TA)は世界に先駆け,わが国で研究開発された唯一の新生児呼吸窮迫症候群(RDS)の治療薬である。RDSは肺表面活性物質(肺サーファクタント)欠乏のため肺胞の拡張が困難で,生後間もなくより呼吸不全に陥る。人工的に陽圧で肺を膨らませてもサーファクタント欠乏状態では呼気時には再びつぶれてしまう。サーファクタントで被覆されていない肺胞および肺胞管上皮細胞は剥離し,血液成分の肺胞腔への漏出,出血などがおこり,硝子膜形成に至る。サーファクタントを経気道的に投与し肺胞壁を被覆してやると,その表面活性により肺胞の安定性が確保され,人工換気に要する圧と酸素濃度を低く保つことが出来る。

10.新生児救急薬

著者: 藤村正哲

ページ範囲:P.1108 - P.1110

□トラゾリン
 新生児のケアでは,おもに肺血管の拡張作用を適応として使用されている。これを必要とするのは重い低酸素血症を主訴とする疾患であり,NICUでケアされるべきものである。

11.B型肝炎の垂直感染防止薬剤

著者: 矢野右人 ,   八橋弘

ページ範囲:P.1110 - P.1111

□HBIG,HBワクチン
1.対象と処方例
 昭和61年1月1日より出生する児に対し国家事業としてHBV母子感染予防が公費で行われている。対象はHBe抗原陽性の母親より出生した児とし,妊婦検診時に受診表を受理し,HBs抗原検査を他の妊婦検診項目とともに受ける。この際,妊婦手帳にHBs抗原の欄が設けられる。HBs抗原陽性妊婦は,保健指導でHBe抗原の検査を受け,HBe抗原陽性者は,保健所へ予防票を申請する。分娩予防票を提出し,出生時にHBIG(200単位以上)1mlを筋肉内に投与する。以降,出生後2カ月目に第2回目のHBIGを同量筋注し,同時に第1回目のHBワクチンを0.25ml投与する。さらに生後3カ月目と5カ月目に同量のHBワクチンを接種して予防法を完了する。HBワクチンは,ヒト血液よりHBs抗原を精製しアジュバントを加え沈降ワクチンとした血液由来ワクチン(PHBワクチン)と,遺伝子組換え技術によるHBs抗原部分を酵母菌で増殖させ精製後アジュバントを加えワクチンとした酵母由来組換えHBワクチン(YHBワクチン)が現在市販されている。YHBワクチンは,PHBワクチンの半量で同等の効果が得られるため,HBワクチンの1回量である0.25mlに含有されるHBs抗原量は,PHBワクチンは10μg,YHBワクチンは5μgに調整されている。PHBワクチンは皮下接種に限られていたが,YHBワクチンは皮下または筋肉内投与が可能である。皮下接種と比べ筋肉内接種がはるかに良好な抗体価が得られるため,筋肉内接種が推奨される。

12.Rh不適合妊娠における母体感作予防薬剤

著者: 浮田昌彦

ページ範囲:P.1111 - P.1111

抗Dグロブリン
1.対象と投与方法
 Rho(D)血液型不適合妊娠における母体の感作予防に用いられる。
 1)分娩時の感作予防:未感作D陰性妊婦がD陽性児を分娩した場合,母体の抗D抗体陰性,児の直接クームス試験陰性(陽性の場合に赤血球抗体溶出試験で抗D抗体陰性)であれば,分娩後72時間以内に抗D人免疫グロブリンーミドリ(以下RhIgと略す)250μgを母体に筋注する。

13.妊婦梅毒治療剤

著者: 長南薫

ページ範囲:P.1112 - P.1112

□ペニシリン系,セフェム系,マクロライド系抗生剤
 梅毒の病原体Treponema pallidumが胎盤を介して胎児に感染するのは胎盤が完成されてからである。したがって,妊婦梅毒の治療は,早期診断,早期治療が大切で,妊娠18週以前に開始するのが理想である。18週以前は胎児感染は起りにくいとされている。妊娠早期に十分な治療が行われれば,先天梅毒は予防できる。もちろん,妊娠中期ないし末期でも見つけ次第,治療を開始することはいうまでもない。妊娠末期6週以内の母体感染では,産道にTreponemaがたくさんいて,胎児の産道通過時に感染するのでない限り,胎児への感染はないとされている。

14.IUGRの輸液療法剤

著者: 荒木勤 ,   岩下光利

ページ範囲:P.1113 - P.1114

□マルトース・ヘパリン
1.対象と処方例
 マルトース・ヘパリン療法は胎児への栄養補給を改善することによりIUGR児の発育促進を促すために考え出された出生前治療である。適応は胎児への栄養障害が原因と考えられるIUGR症例で,妊娠中毒症やその他の母体疾患にIUGRを合併する症例を対象とする。従って,胎児の染色体異常や多発奇形によるIUGRは対象とならない。また,胎児の発育期間と体外治療の利点から考えて,妊娠36週以降は対象としない。

15.催奇薬剤一覧

著者: 穴井孝信 ,   宮川勇生

ページ範囲:P.1115 - P.1120

 汎用される薬剤で胎芽期,胎児期(臨界期)に投与された場合,催奇性のあるため禁忌または慎重投与の薬剤について収録した。なお,抗悪性腫瘍剤,放射性医薬品については省略した。

Ⅴ.内分泌・生殖領域の治療剤

1.ゴナドトロピン療法薬

著者: 矢野哲 ,   水野正彦

ページ範囲:P.1123 - P.1123

□pure FSH-hCG
1.対象と処方例
 hMGによるゴナドトロピン療法は,1960年のLunen—feldによる初の臨床応用以来,排卵障害の治療法として現在広く普及している。しかし,その優れた効果の反面,多胎妊娠や卵巣過剰刺激(OHSS)などの発生率が高く,特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では,OHSSが重症化しやすいことが知られている。これは,従来のhMG製剤にはFSH活性以外にLH活性がほぼ同量含有されているためと考えられる。最近hMGを高度に精製し混在するLH活性をほとんど除去したpure FSHが開発された。中枢性無月経,無排卵周期症あるいはPCOSにおいて,従来のゴナドトロピン療法によりOHSSを反復する症例は,pure FSH-hCG療法の最もよい適応である。

2.子宮内膜症治療薬

著者: 植村次雄 ,   北井啓勝

ページ範囲:P.1125 - P.1126

□LHRHアゴニスト(スプレキュア)
 1.対象と処方例
 子宮内膜症は月経時の下腹痛,腰痛や性交痛をもたらし,また,不妊症の原因ともなる。この疾患の治療には薬物療法と手術療法があり,患者の年齢,疾患の進行度,挙児希望の有無などの因子によりその治療方針を決める。①挙児希望の無い場合に腫瘍形成がなければ薬物療法の適応となる。腫瘤形成がある場合には卵巣腫瘍に準じて手術療法を行う。②挙児希望のある場合軽症例では薬物療法や腹腔鏡下の焼灼が有用である。腫瘤形成を伴う重症例では薬物療法単独では治療効果は少なく,保存的手術が必要である。この際,術前に薬物療法を行うと,病巣を縮小し,手術操作を容易にする。近年,レーザーを用いての腹腔鏡手術が行われてきており,この際も薬物との併用療法の有用性が認められている。
 薬物療法でもスプレキュアは作用機序が異なるのでダナゾールが無効であった症例や副作用の強かった症例も本剤の適応となる。

3.経口避妊薬

著者: 川越慎之助

ページ範囲:P.1126 - P.1127

□ピル(三相性)
 低用量ピルのうち,1投与周期中にホルモン含有量の異なる錠剤を三段階に分けて用いるのが三相性ピルである。ホルモンの低用量化によって生ずる副作用,たとえば点状出血,破綻出血などの防止や避妊効果の向上などを目的としている。日本でも治験が行われ,将来発売される予定の三相性ピルを表に掲げた。

4.不育症(妊娠中期)治療薬

著者: 安達知子

ページ範囲:P.1128 - P.1129

 妊娠中期の反復する流早死産などの不育症と病的自己抗体の1つである抗リン脂質抗体との関連が注目されている。本疾患に対し自己抗体の産生や活性を抑える免疫抑制剤に加え,病態の中心と考えられる胎盤血流障害に対する抗凝固療法が有効であるとする報告が相次いでいる。しかし,未だ一般標準化された治療のregimeがないのが現状である。

5.更年期障害治療薬

著者: 村田高明

ページ範囲:P.1129 - P.1131

□漢方
1.対象と処方例
 更年期障害の症状を頻度の多い順にあげると,肩こり,頭痛,頭重,物忘れ,冷え性,気分不安定,憂うつ,逆上感,動悸,下腹部痛やめまいなどである。しかし,更年期当初の症状は肩こり,顔面紅潮,熱感,額の発汗,胸内苦悶などの自律神経失調症状で始まるといわれる。症状の現れ方には個人差があり,複合的な症状を呈し,その経過も多彩である場合が多い。治療には病態像に適した漢方薬を選択する必要がある。臨床的には更年期障害に用いる漢方薬も他の疾患の場合と同様,当帰芍薬散,桂枝茯苓丸および加味逍遙散の3種の中から選ばれているのが現状である。これらの漢方薬で十分でない場合は,当然のことながら他剤に替える。始めに血管運動神経症状のぼせ症状(気の病,血の病)に対する漢方薬をあげる。

6.骨粗鬆症治療薬

著者: 本庄英雄

ページ範囲:P.1133 - P.1135

□エストロゲン
1.対象と処方例
 閉経後の骨粗鬆症,あるいは若年婦人においても卵巣摘出後,無月経,稀発月経など低エストロゲン状態から骨塩の低下している症例が対象となる。骨粗鬆症はtype Ⅰとtype Ⅱとにわけられることが多い1)。閉経後骨粗鬆症はtype Ⅰに属する。卵巣の機能停止→エストロゲンの急減→海綿骨を主とした骨塩の急速な低下がおこる。ちなみにtype Ⅱは75歳以上の老人にみられ,加齢,老化を主因とした,海綿骨と皮質骨の緩徐な骨塩減少を言う。エストロゲンの投与はこの前者の急速な骨塩減少に有効である。
 さらに腰痛は骨粗鬆症の前駆症状でもあり,基礎に低エストロゲン状態が考えられれば,骨塩減少が未だ著明でなくても,腰痛症例などにエストロゲンを投与し,骨粗鬆症を予防する事も臨床的意義がある事と考えられる。

7.高プロラクチン血症治療薬

著者: 武谷雄二 ,   水野正彦

ページ範囲:P.1135 - P.1136

□ブロモクリプチンMR(ブロモクリプチン徐放性カプセル)
 本剤はブロモクリプチンの徐放剤であり,ブロモクリプチン(パーロデル®)と比較して投与後の最高血中濃度は35〜40%に低下しているが最高血中濃度への到達時間は投与後約5.4時間とパーロデル®の約2倍に延長している。しかし血中プロラクチン値の抑制効果はパーロデル®とほぼ同等である。
 従来よりパーロデル®服用時には悪心嘔吐などの消化器症状が問題となっていたが,これは主にパーロデル服用後に一過性にみられる血中のブロモクリプチン値の上昇によるところが大きかった。従ってそれを徐放化した本剤は投与後の血中濃度が平坦化されるため臨床効果は劣ることなく副作用のみが軽減されることが予想される。このことは本邦における全国規模の臨床治験ですでに確認されている。

8.LHRHパルス状投与療法

著者: 中村幸雄

ページ範囲:P.1136 - P.1137

□ヒポクライン
1.対象と処方例
 無排卵症,無月経における視床下部・下垂体・卵巣系機能のなかで,下垂体以下の機能が正常に保たれている症例,すなわち視床下部性無排卵症が本療法の適応となる。軽症の視床下部機能障害例ではclomiphene療法により排卵誘発可能であり,clomiphene療法を反復して行っても無効な症例が対象となる。さらに排卵障害以外に不妊原因のない挙児希望者であることが重要である。長期間の視床下部障害による二次的な下垂体機能不全も本法により高率に排卵誘発可能であり,また正常月経周期への回復が期待される。しかし,多嚢胞性卵巣症候群(PCO)における本法の治療効果は低い。

9.機能性出血治療薬

著者: 林方也

ページ範囲:P.1137 - P.1138

□ピル
1.対象と処方例
 月経および器質的疾患による出血を除いた子宮内膜からの内分泌異常による出血であり,組織診では腺性増殖症,増殖期内膜が約70%,分泌期および萎縮性内膜が30%にみられる。前者は無排卵性でEの消退ないし破綻性出血,後者はE,Pの不足によると考えられる。治療として排卵周期の充実が必要となるが,まず第1に止血が重要である。内膜掻爬術,止血剤,ホルモン剤投与が行なわれ,そのためEP合剤であるピルが有用であるが,現在市販されているものは下表の如くである。
 症状,病態によって投与期間および用量が異なるが,ソフィアC 1-2錠/日 7〜14日間 プラノバール 1-2錠/日 7〜14日間などが投与され,norgestrelはnorethisteroneよりP作用が約2.5倍など薬剤の性質を考慮に入れ,原則的に無排卵性についてはE優位の,排卵性の症例にはP優位のピル投与が適当である。

10.無月経症治療薬/無月経治療用漢方薬

著者: 相良祐輔 ,   村田高明

ページ範囲:P.1139 - P.1140

□性ステロイド
 婦人科領域における性ステロイドホルモンによる治療には,主としてエストロゲン製剤,ゲスターゲン製剤,アンドロゲン製剤が使用される。
 無月経症に関しては,前二者が使われる。

 

□漢方治療薬
 1.対象と処方例
 漢方医学では,婦人を治療する場合,先ず経を調えることを重要視する。婦人の聖薬や妙薬と呼ぶ漢方薬がある。これらは女性の内分泌機能に何らかの作用をおよぼすであろうと推測されていた。10年程前に不妊症治療に当帰芍薬散や桂枝茯苓丸を投与したところ,第Ⅱ度無月経患者が妊娠した報告があり,無月経患者にも漢方薬が有効であることが立証された。しかし,両漢方薬の構成生薬について分析した結果では,ホルモン活性物質は確認されておらず,従って,現代医学での内分泌学的解明は未だなされていない。最近,産婦人科領域では臨床的にも漢方療法が応用され,さらに,現代医学による研究も行われるようになり,2〜3の漢方薬の作用機序は解明されつつある。無月経は月経異常の一分症であり,漢方医学では経を調うことでは同じ治療法で行う。

11.卵巣機能補充療法

著者: 宮川勇生

ページ範囲:P.1140 - P.1141

□エストロジェン
1.対象と処方例
 近年,更年期障害,骨粗鬆症,卵巣摘出後の卵巣ホルモン欠落症状に対するエストロジェン補充療法に関心が高まっている。
 エストロジェン剤にはそれぞれエストロン,エストラダイオール,エストライオールを主成分とした内服剤や注射剤があり,対象や症状によって使い分けられている。

12.造精機能低下症治療薬

著者: 佐々木宏子 ,   星和彦

ページ範囲:P.1141 - P.1142

□ビタミンB12
1.対象と処方例
 乏精子症を合併した悪性貧血患者にビタミンB12を投与すると,貧血とともに精液所見が改善されるというSharpらの報告があり,その後ビタミンB12は精子数・運動率の低下がみられる特発性男性不妊症の治療薬として注目されるようになった。

造精機能低下症漢方治療薬

著者: 太田博孝

ページ範囲:P.1145 - P.1145

□補中益気湯
1.対象と処方例
 補中益気湯は精子濃度が比較的保たれているが,精子運動率の低い精子無力症の例に用いられる。さらに元気がなく,疲れ易いなどの虚証の例に用いると,その効果が高まる。

13.肥満とるいそう治療薬

著者: 村田高明

ページ範囲:P.1146 - P.1147

□漢方薬
1.対象と処方例
 肥満やるいそうの基準は国民栄養調査にもとづく判定表の「太り過ぎ」や「やせ過ぎ」の区域であり,概ね標準体重の+20%以上や−20%以上である。肥満やるいそうは原因疾患(内分泌性,視床下部性,遺伝性など)に伴う症候性の場合もあるが,一般には,単純性肥満や単に痩せている場合が多い。症候性の場合は原因が治癒すれば体重の増減は改善される。外見上,肥満やるいそう状態であっても,諸検査で何ら異常徴候を認めない場合も多い。肥満者は思い込みである場合が多いという。肥満やるいそうが産婦人科領域で臨床的に問題になるのは,性機能障害,とくに月経異常,不妊症,妊娠合併症が多いなどである。また,ホルモン治療中(ダナゾールやピル常用),ステロイド治療中,タモキシフェンやフェリチアジンなどの薬剤性肥満もしばしばみられる。るいそうでは神経性食思不振症,体重減少性月経異常,シーハン症候群などがあり,最近とくに思春期に多いダイエットによる無月経が目立つ。成人病や老人病対策としての肥満やるいそうは,とくに心血管系疾患,糖尿病,子宮体癌,骨粗鬆症への養生や健康指導が必要である。
 漢方医学からみた肥満は水毒,瘀血,食毒に関係している。るいそうは脾胃虚,気虚,血虚,不食病による消痩である。病態像を見極め,適応する漢方薬を投与する。現代医学におけると同様に難治性であることは否めない。

14.多毛治療薬

著者: 仲野良介

ページ範囲:P.1147 - P.1149

 多毛(症)はhypertrichosis,あるいはhirsutismの訳語として用いられている。多毛は体毛の量的過剰を示す状態であるが,その本態は毛包の増生ではなく,軟毛の肥大あるいは硬毛化による。hypertrichosisはホルモンの影響を受けない多毛を,hirsutismはアンドロゲン作用により生じた女性や小児にみられる多毛を意味することが多い。しかし,両者の区別は不明瞭な点もあり,後者は前者の一部として包含されるとする見解もある。また,hypertrichosisは人種的,遺伝的,体質的な多毛を指し,hirsutismは病的状態における多毛を指すとする意見もある。
 女子にみられる多毛はfemale hirsutismと記されることが多く,その患者はhirsute femaleと呼ばれる。(人種的にみて,日本人女子では白人女子に比べて発毛が薄く,多毛を呈する例は稀であるといわれている。たとえば,多嚢胞卵巣症候群でも日本人女子では多毛を示す症例は少ないとされている。)

15.PCO症候群治療薬

著者: 木下俊彦

ページ範囲:P.1149 - P.1150

□クロミフェン
1.対象と処方例
 PCOのcriteriaは幅広く認識されており,クロミフェンに対して排卵効果が認められる例は除外するむきもあるが,ここでは排卵誘発剤に対しての反応性にかかわらず,LH/FSH比上昇に代表される内分泌的特徴と排卵障害を有したものを対象とする。
 PCOに対しての排卵誘発剤の第一選択としてクロミフェンを投与する。

16.内服排卵誘発剤

著者: 北井啓勝 ,   鈴木秋悦

ページ範囲:P.1150 - P.1151

□クエン酸クロミフェン
1.対象と処方例
 最も多く用いられている排卵誘発剤である。排卵障害に基づく不妊症の排卵誘発に用いる。プロゲステロンの投与により消退性出血の起こる第一度無月経,無排卵周期症,視床下部性無月経,および多嚢胞性卵巣による無排卵が対象になる。
 投与前に血中LH,FSH,プロラクチンを測定する。LHおよびFSHの高値となる卵巣性無月経,LHおよびFSHの低値となる下垂体性無月経,プロラクチンが高値となる視床下部のドパミン代謝異常はクロミフェンの適応ではない。

17.ホルモン剤一覧

著者: 村田博久 ,   宮川勇生

ページ範囲:P.1152 - P.1157

 産婦人科領域で汎用されるホルモン剤についてのみ収録した。当該薬剤に対し過敏症の既往のある患者には投与禁忌であり,また妊婦に対しては原則として投与しない。

薬品名索引

ページ範囲:P.1158 - P.1161

 本索引には抗癌剤一覧,催奇薬剤一覧,ホルモン剤一覧からは引き出しておりません。

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「臨床婦人科産科」第44巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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