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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科44巻5号

1990年05月発行

雑誌目次

特集 中高年の婦人科 Overview

婦人の老化と発癌

著者: 園田隆彦

ページ範囲:P.385 - P.392

 老化と癌化はかなり類似する点もあるが,相異点もあり,現在なお両者を統一的に理解するための十分なデータがないとされている。Pitot(1977)は両者の類似点として,1)長期生存者にみられ,2)飢餓による抑制効果があり,3)抗酸化剤による阻止効果,4)不飽和脂肪酸による促進効果があり,5)内分泌環境による影響があり,6)DNA修復が増進する,7)mRNAの鋳型安定度の変化がある,8)薬物代謝が減退している,以上の8項目,また相異点として,1)細胞の寿命について,老化では寿命があるが,癌化では多くは不死である,2)核型は,老化では安定しているが,癌化では不安定である,3)不活性酵素分子は老化にはあるが癌化にはあるとの証拠がない,以上の3項目をあげた。
 老化と癌化の基礎的研究は遺伝子を中心に急速に展開されているが,臨床的疫学的研究の重要性も変わりはない。本稿では,婦人の老化と発癌について日本における癌罹患状況とくに罹患率を男性と対比しつつ若干考察する。

卵巣のAgeingと中高年婦人の内分泌

著者: 仲野良介

ページ範囲:P.393 - P.400

 わが国の女子の平均寿命が80歳を超えて,世界に冠たる長寿国となった今,閉経からの中高年婦人の暮し(人生)の質quality of lifeが医学的には勿論のこと,社会的にも問い直されている。
 閉経は女性の生涯にとって意味深い出来事であるが,従来,ややもすると閉経をもって女性の性機能の停止を意味する象徴的な事象であるかのごとくに考えられ,人生の墓場に向かうかのごとき印象を与えがちであったことは否めない。

Topics

中高年婦人の性生活

著者: 堀口文

ページ範囲:P.401 - P.404

 中高年婦人の性生活は生殖を伴わない性交である。現在の女性は子供を沢山産まなくなったので,平均30歳で第2子を産みあげ,その後は長い避妊の期間に入る。したがって中年婦人は更年期前期まで避妊が必要となり,また性器の萎縮が始まる更年期婦人では性交障害が起きやすい。これらを心理面からみると前者は避妊の失敗に対し後者は性交の失敗に対し精神的不安を伴いやすい。我が国における中高年婦人の性生活にたいする調査は極めて少ないが,欧米における最近の研究ではsexualityや女性の役割にたいする知識,態度および期待等に変化が起きており,更に避妊薬の発達,性病の種類や感染状況の変動,および婚咽関係における意識の変化などの生物学的,社会的因子の影響により性行動も変化しているので,日常一般の性生活についても産婦人科医が注目しなければならない課題である。

加齢と妊娠・分娩

著者: 末原則幸

ページ範囲:P.405 - P.407

 近年のわが国の出生数は年々減少しているが,その中で高齢出産の占める割合は年々増加している。このことは結婚年齢の高齢化に加え,女性の社会への進出,ことに職業を持つ女性の割合の増加と結婚後も仕事を継続する女性の割合の増加が出産年齢の高齢化の傾向を著しくさせていると考えられる。
 加齢と妊娠分娩を論じるにはまず,加齢そのものによるリスクと,加齢に伴っておこる身体的変化による二次的なリスクにわけて考える必要がある。前者の代表は高齢化に伴う児の染色体異常の発生頻度の上昇などである。後者の代表は加齢にともなう肥満などが妊娠分娩に与える影響などである。

臨床研修セミナー 手術手技 I.子宮単純全摘出術

腹式単純子宮全摘出術—標準術式について

著者: 藤井信吾

ページ範囲:P.409 - P.420

 腹式単純子宮全摘出術は各種婦人科疾患に頻用される婦人科手術の一つであり,婦人科医にとって必須の手術手技である。しかし,単純子宮全摘出術といっても,さまざまな難度の症例があり,子宮頸部に発生した筋腫,frozen pelvisとなった子宮内膜症や骨盤内炎症,後腹膜に進展した卵巣腫瘍や筋腫などは,いずれも難度の高い手術となる。ところが,これらの症例も癒着の剥離を解剖学的に沿って進め,さらに後腹膜に進展した腫瘍は,これを後腹膜の結合組織から剥離するという対応によって,通常の単純全摘術の範囲の手術へと導くことができる。しかし,このような対応を行うためには,解剖学に沿った単純子宮全摘出術の基本原理とその問題点を十分理解しておく必要がある。本稿では単純全摘出術の標準術式を記載することになっているが,著者は標準術式という言葉を,解剖学に沿った単純子宮全摘術という意味に解釈し,さらに,この術式が本質的に抱えた問題点である尿管の走行と手術手技との関係に重点を置いた手術手順の解説をしたいと思う。手術手技にはそれぞれの工夫があって当然であることから,手技自体の詳細についてはあまり言及しない予定である。
 また,腹式単純子宮全摘出術において,良性腫瘍の場合,筋膜内子宮全摘術(Aldridge手術)がしばしば行われているが,子宮を摘出する手術法としての普遍性は筋膜外子宮全摘術にあると考えるのでこの方法について記載する。

腟式単純子宮全摘出術

著者: 工藤隆一 ,   山内修

ページ範囲:P.440 - P.446

 腟式子宮全摘出術はPorges1)の綜説によると1813年Langenbeckが最初に実施している。その後19世紀の後半に多くの実施症例が報告され,1934年にHeaney2)は565例の多数の実施症例を報告している。このように腟式全摘出術の歴史は古いが,一般に本術式は子宮脱のような限定された症例にしか実施してない施設が多い。しかし腟式手術は女性性器が小骨盤内にあることから産婦人科医にとって有利な手術ルートで可能な症例には実施すべき術式と考えられる。
 腟式子宮全摘出術の利点は腹部切開創がないため腹壁瘢痕が欠如する。術後の腸管癒着,腹膜炎あるいはileusは腹式手術より少ない。肥満した婦人にも容易に実施することができる。術後の腹部の術創痛が無いため痛みが軽度で治癒が早いために入院期間が短いことなどがあげられる。腟式子宮全摘出術の術式には若干の改変によって種々の方法が行われているが,本稿ではわれわれが行っている子宮頸部周囲靱帯の無結紮法3〜6)を中心に述べる。

腹式単純子宮全摘出術—私の工夫

子宮傍結合織切断法

著者: 永田一郎

ページ範囲:P.422 - P.427

 筆者が常用している腹式単純子宮全摘術における子宮傍組織(子宮付着靱帯)切断の手法を図説する。本術式は子宮筋腫,Ⅰ期の子宮体癌,0期の子宮頸癌,産科出血などを適応としている。本術式では子宮体部および子宮腟部は全摘可能であるが,術式の安全を期した場合,子宮頸部側壁の一部は残存する可能性がある。子宮の側方では尿管が膀胱子宮靱帯のトンネル内にあり,子宮頸管に接しているから,図1矢印のように少し頸部を削るようにしないと必ずしも常に尿管が安全というわけにはいかないからである。また,ここを少し削ることによって,子宮付着靱帯の結紮糸の滑脱は確実に防止される。この機会に本術式の要である靱帯切断の手順と,その際の留意点を述べ,特殊例に対する独特の手法にも言及する。

逆行性子宮全摘出術

著者: 工藤尚文

ページ範囲:P.429 - P.432

 腹式単純子宮全摘出術(以下AT)は産婦人科臨床においては最も基本的な手術手技であり,ある程度の産婦人科修練を終了した医師であればAT施行にあたって,それぞれが自分なりにベストであると信じている方法を選択,工夫しているものである。
 また通常の子宮全摘症例では,手術にあたって基本的な標準術式の操作に従っていれば,大きなアクシデントもなく子宮全摘をすることが可能である。

簡単で安全な方法

著者: 舘野政也

ページ範囲:P.435 - P.439

 外科系の医師にとって治療法としての手術は真に大切なテクニックであり,手術に対する態度,技術によって医師の評価が決まるといっても過言ではない。手術にあたっては,なぜ手術をしなければならないか厳格な適応がなければならないし,手術方法は一律ではなく臨機応変の手術法の選択が必要である。
 また,患者,家族(特に夫不在ではいけない)に対しては十分な説明が必要であり,説明内容の記載を残しておくことが重要である。

原著

妊娠合併卵巣腫瘍—ルテイン嚢胞と新生物腫瘍との鑑別

著者: 廣田穰 ,   吉村泰典 ,   白木誠 ,   神谷貴之 ,   友松守彦 ,   丸山邦之 ,   多田伸 ,   澤田富夫 ,   河上征治 ,   福島穰

ページ範囲:P.447 - P.452

 最近3年間に経験した妊娠合併卵巣腫瘍87例に関し解析を行い,以下の結果を得た。妊娠合併卵巣腫瘍の82.7%はいわゆる類腫瘍であり,この中の80.5%はルテイン嚢胞(LC)であった。悪性卵巣腫瘍は,全妊娠合併卵巣腫瘍中1.1%,総分娩比では0.1%と決して低い発生頻度ではなかった。LCの平均消失週数は12.8土0.3週であり,その最大腫瘍断面積(MAT)は98%以上の症例が3,000 mm2以下を示した。ところがLC以外の卵巣腫瘍では,逆にMATが3,000 mm2以上のものが52.9%と半数以上を占めており,MATが3,000 mm2以上を示した場合には,積極的にneoplastic tumorを考える必要のあることが示唆された。またルテイン嚢胞とそれ以外の卵巣腫瘍との間に判別分析を適応した結果,両者の判別にはMATと超音波所見を加味した方が判別効率が高く,得られた線形判別式により91.7%の症例が正判別可能であった。

症例

出生前に診断された先天性小腸閉鎖症の1例

著者: 藤下晃 ,   中橋隆次郎 ,   内山章 ,   宮川淳 ,   永末俊郎 ,   山下浩 ,   木田晴海 ,   三根義和 ,   福井滋

ページ範囲:P.453 - P.458

 先天性腸閉鎖症・狭窄症は新生児外科疾患のうち10〜20%を占め,直腸肛門奇形とともに最も多くみられる疾患であり,腸閉鎖症の頻度は出生5,000〜10,000に1程度とされる。このうち十二指腸閉鎖症が約半数を占め,空腸,回腸閉鎖症が1/3程度といわれている。先天性十二指腸閉鎖症の出生前診断の報告は多いが,空腸,回腸閉鎖症の出生前報告もみられるようになってきた。今回私どもは,妊娠42週に施行した超音波断層法で,著明に拡張した腸管像を呈した胎児症例を経験した。出生前には空腸以下のレベルでの消化管閉鎖を疑ったが,生後第1日に行われた開腹手術では,胎便性腹膜炎を伴った先天性小腸閉鎖症であった。

子宮脱の頚部にatypical stromal cellsを伴った1例

著者: 楠山洋司 ,   細道太郎 ,   馬渕義也 ,   横田栄夫

ページ範囲:P.459 - P.461

 子宮脱にleiomyomatosisとatypical stromal cells(ASC)を伴った1例を報告する。
 患者は54歳閉経婦人で,子宮脱のため子宮摘出術を施行した。leiomyomatosis,cystic glan—dular hyperplasia of the endometriumに加え頚部に多数のASCを認めた。酵素抗体法では,筋肉系,リンパおよびhistiocyte系,神経系,上皮系いずれのマーカーとも本例では陰性であった。
 ASCは頚部肉腫の診断時,鑑別疾患に加えなければならない疾患であると考えられる。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

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今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

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今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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