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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科44巻6号

1990年06月発行

雑誌目次

特集 抗癌剤の使い方

[Overview]婦人科癌の化学療法—新しい抗癌剤の知識

著者: 牧野浩充 ,   伊藤潔 ,   佐藤信二 ,   矢嶋聰

ページ範囲:P.465 - P.472

 婦人科悪性腫瘍は,大別すると子宮頸癌・体癌,卵巣癌,腟・外陰癌,絨毛癌等に分けられる。これらの悪性腫瘍の治療は,絨毛癌を除けば第一選択は手術療法であり,さらに組織型,臨床進行期,年齢,全身状態,合併症の有無等によっては,放射線療法,化学療法,免疫療法,その他の補助療法を併用しているのが現状である。
 本稿では卵巣癌,絨毛癌,子宮頸癌,体癌に対する化学療法の概説を行った。

Topics

婦人科癌に対するNeo-adjuvant Chemotherapy

著者: 薬師寺道明 ,   西田敬

ページ範囲:P.473 - P.475

 薬剤のみによる根治療法の確立が癌化学療法の最終ゴールと考えられる。婦人科領域における抗癌剤治療の現況をみると,このことがあながち荒唐無稽な夢とは思えないくらい高い奏効率が報告され始めている。薬剤の有効性の向上は抗癌剤治療そのものにも変革をもたらし,従来まで主として術後に用いられてきた抗癌剤療法を手術前に応用することでそれに続く手術・放射線などの根治的治療を更に効果的なものにしようとするneo-adju—vant chemotherapyの概念が近年では導入されてきている。
 本稿では婦人科癌に対するneo-adjuvant chemothera—pyについて若干の自験例を紹介すると共に,その利点や問題点について概述したい。

腹腔内投与

著者: 平林光司

ページ範囲:P.477 - P.479

 1988年2月San Diego,Californiaにて第2回Interna—tional conference on intracavitary chemotherapyが開催された。このことは,たんに腹水抑制のために抗癌剤を注入するという姑息的考え方から,腹腔内投与によって治癒をめざす考え方に大きく進歩したことを如実にものがたっている。即ち,腹腔内投与法が経動脈,静脈投与法と並んで治癒を目的とした投与経路として検討され始めたのである。このような背景をふまえて臨床に即した腹腔内投与法について述べたい。

Hyperthermia

著者: 滝沢憲

ページ範囲:P.481 - P.484

 卵巣癌の化学療法に温熱療法を併用することは魅力的で有望な試みと思われる。本稿では温熱療法の腫瘍細胞・組織に与える効果,化学療法との併用効果をレビューする。また,胃癌患者の癌性腹膜炎予防に持続温熱化学療法が有効であったとする成績や,肺癌などにより多臓器転移をきたした症例に全身的温熱化学療法が鎮痛作用,延命効果を示した成績を紹介する。最後に卵巣癌患者術後にCDDPを腹腔内投与する際にラジオ波による局所温熱療法を併用した私共の成績を報告する。

動注療法

著者: 清水敬生 ,   荷見勝彦 ,   増淵一正

ページ範囲:P.485 - P.488

 動注化学療法は,抗癌剤を腫瘍の栄養動脈に直接投与することにより,腫瘍内の薬剤濃度を上昇させ抗腫瘍効果を最大限に高め,同時に全身循環系への流出を少なくして副作用を最小限にとどめようとする局所投与法である。1950年にKloppにより創始された1)。婦人科悪性腫瘍は主病巣が骨盤腔内に存在し,その適応が見出されて以来,急速に普及している。わが国は世界的にも動注の盛んな国であり,本稿では日本のデータを中心に現況を概説する。

臨床研修セミナー 手術手技 II.子宮頸癌の手術

準広汎性子宮全摘出術

著者: 塚本直樹

ページ範囲:P.489 - P.495

 わが国においては手術可能なⅠ〜Ⅱ期の子宮頸癌に対しては広汎性子宮全摘出術(以下,広汎全摘と略)が行われてきた。頸癌の自然史がよく理解されていなかった時代には,上皮内癌や微小浸潤癌などの初期癌に対しても広汎全摘が行われていたようである。しかし,近年子宮頸癌の自然史が判明してくるにつれて,また頸癌の診断技術の進歩と検診の普及により多くの初期頸癌が発見されるようになってくると,広汎全摘よりも合併症や後遺症の少ない縮小術式が考案されるようになってきた。準広汎性子宮全摘出術(以下,準広汎全摘と略)は,この模索の過程の中から生まれてきた術式であると思われる。
 しかし,準広汎全摘の術式は術者によりその解釈に差があり,また,術式の理論的根拠にもややあいまいな点があるようである。従って,一時は多数の症例に行われていた準広汎全摘が,最近では以前ほどには行われなくなってきているようである。

広汎性子宮全摘出術

著者: 関場香

ページ範囲:P.497 - P.506

 広汎子宮全摘出術の術式は昔から国内でも,また諸外国においてもいろいろの術式が行われてきたが,最近では国内国外を問わず,ほぼ似たような術式の手術が行われているのが現状といえる。術者それぞれの工夫により術式の名称も異なるが,結果的には岡林術式に近いもののように思われる。
 私も岡林術式を私なりにmodifyした術式を行っている。以下その概要を述べる。

広汎子宮全摘出術—骨盤神経叢温存をめぐって

著者: 野田起一郎

ページ範囲:P.507 - P.513

 子宮頸癌根治手術(広汎子宮全摘出術)は,頸癌に対して良好な5年治癒成績をあげることができるので,現時点ではⅡb期までの頸癌に対してはこの手術がその治療の主流をなしている。しかし,術後その殆どの患者に排尿困難,尿失禁,尿意鈍麻などの排尿障害や便秘などの直腸障害を残し,日常生活に重大な影響をおよぼしている。また,長年の排尿障害による上部尿路への逆流現象や感染による腎機能の低下は患者の予後を悪くする要因ともなる。これらは従来,根治手術に随伴する当然の現象,すなわち,癌の根治性の確保のためには止むを得ない犠牲と考えられていた。しかし,近年の進行期あるいはその拡がりに対する的確な診断法の確立によって,頸癌の治療法の個別化をもたらしつつある。つまり癌の拡がりに応じて手術の根治性に抵触しない範囲で,できる限り生理的な機能を保存する治療法(function retaining operation)を選択しようというのである。
 頸癌根治手術後に多少なりとも必発する排尿障害は広範な膀胱の剥離,膀胱の位置変化,栄養血管の切断などの因子も加味されるが,第一義的には骨盤内植物神経の切断によって神経因性膀胱に陥ることによって起こることは周知の事実である。ここでは頸癌根治手術の術後障害として代表的な尿路系の障害をとりあげ,それを防止するための配慮と対策について述べたいと思う。

原著

早産例における分娩時の胎児心拍数モニタリング所見の評価について

著者: 安達信博 ,   小笠原敏浩 ,   西島光茂

ページ範囲:P.515 - P.519

 早期産分娩時の胎児心拍数モニタリング所見(CTG)評価が正期産時と同じで良いか否かについて検討するため,頭位自然分娩例(24〜31週27例,32〜36週23例,37〜41週124例)のCTGと臍動脈血ガス分析値との関係について比較し,以下の結果を得た。
 (1)早期産例においてもFD Index(前田の胎児仮死指数)は特に臍動脈血pH値と有意な負の相関を示した。(2)在胎週数別に臍動脈血pH値を(Y),FD Indexを(X)としたときの単回帰分析直線より,24〜31週群と他の2群との間には,傾きに著明な差を認めた。(3)酸血症症例(pH<7.25)と非酸血症症例(pH≧7.25)とのFD Indexの各因子(基準心拍教:BASE,最小心拍数:HR,最大振幅:AMP,持続時間:DUR,回復時間:REC,遅延時間:LAG,W型一過性徐脈:W-DIP,基線細変動消失:LOSS)とpH値との重回帰分析より,24〜31週群ではBASE,LAG,HRが,37〜41週群ではHR,REC,AMPが特に重要な因子と考えられた。

症例

Rokitansky-Küster-Hauser症候群の二症例

著者: 小林三津子 ,   曽和正憲 ,   仲野良介 ,   永井祐吾 ,   谷村弘

ページ範囲:P.521 - P.523

 先天性腟閉鎖は出生4,000〜5,000例に対して1例の比較的稀な疾患であり,Müller管の発達障害であるRokitansky—Küster—Hauser症候群はその約19%を占めると言われている。今回,われわれは経直腸超音波診断法を使用し,非侵襲的に内性器の状態を知ることにより診断し得たRokitansky—Küster—Hauser症候群の2例を経験したので報告する。
 症例1,2ともに原発性無月経を主訴として当科を受診し,経直腸的超音波診断法で索状の子宮を確認した。2例ともに染色体,および卵巣の内分泌機能には異常はなく,Ro—kitanskv—Küster—Hauser症候群と診断した。

薬の臨床

患者自己判定によるLHカラーを用いた排卵予知の検討

著者: 亀田隆 ,   加藤宗寛 ,   谷口武 ,   徳川吉弘 ,   木村正 ,   脇本昭憲 ,   東千尋 ,   松崎昇 ,   佐治文隆 ,   谷澤修

ページ範囲:P.525 - P.529

 尿中LH簡易測定試薬であるLHカラーを用いて尿中LHサージを検出することにより,排卵予知への有用性および患者自身による自己判定の可能性について検討した。6名の正常排卵周期婦人において,尿中LHをRIAとLHカラーとで比較した結果(cut off値は50IU/l),LHカラーの特異性(RIA>50IU/lかつLHカラー陰性)の率は83.2%であり,感受性(RIA≧50IU/lかつLHカラー陽性の率)においても85.3%と優れていた。10名の不妊患者において,LHカラー判定を熟練者と患者自身による2者とで比較した結果,10名中2名はその判定が熟練者と患者自身で異なっていたが,残る8名はすべて判定結果が一致し,RIAによる尿中LHの値とも相関が認められた。以上のことより,LHカラーは尿中LHサージ検出に優れ,排卵予知への有用性が確認された。また操作の簡便性より,患者自身による自己判定の応用も可能と考えられた。

Menfegol含有潤滑剤を用いた新型Medicated Condomの臨床的検討—特に使用感と副作用について

著者: 西島光茂 ,   斉藤怜 ,   山高毅久 ,   安達信博 ,   小笠原敏浩 ,   西谷巌 ,   石浜淳美

ページ範囲:P.531 - P.534

 殺精子剤であるMenfegolがAIDSウイルスを不活化することが明かとなったので,市販されているCondomにMenfegolを含有した潤滑剤を用いたMedicated Condomを試作し,その使用感と副作用について,避妊中の男女50組を被験者として臨床的検討を行った。
 総合的使用感では,男女とも約85%が従来のコンドームと同じか,それ以上の評価が与えられたが,外観の印象が使用感に影響していると思われた。副作用について男性1名が一時的なかゆみ,女性2名が一時的な熱感を訴えたが,2カ月にわたる本試験期間中に中止した被験者はいなかった。
 以上より,新型Medicated Condomは色,潤滑剤の量,ラテックス表面の加工など改善すべき点があるが,従来のものと比較しても遜色なく,今後避妊効果の増強のみでなく性行為感染症の予防という付加価値を持ったCondomとして注目に値すると考えられる。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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