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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科45巻12号

1991年12月発行

雑誌目次

特集 エコー 診療マニュアル 基本手技と適応

1.経腹プローベ

著者: 穂垣正暢

ページ範囲:P.1353 - P.1355

電子走査経腹プローベ
 産婦人科領域の超音波診断装置は,パルス波診断装置,ことに断層像を得ることを目的にしたBモード画像,あるいはパルスドプラ装置(カラードプラを含む)が用いられている。これらの装置はいずれも高速で電子走査を行うのが特徴であり,臨床応用に際しては,リニアあるいはコンベックス型が主流となっている。本稿では紙面の関係でこの基本形を中心に解説を加える(図1)。

2.経腟プローベ

著者: 小林充尚

ページ範囲:P.1356 - P.1358

正常子宮の経腟縦断像(前傾子宮)(図1)
 排尿後に経腟プローベを腟内に挿入して行った縦断スキャンでは,この写真の如く向って右が子宮腟部側,左が体部にあたる位置において,子宮頸部上部から体部1部にかけての経腟縦断像が示されている。プローベの面の傾斜,移動により目的の部分をみることが出来る。正常の排尿後前傾子宮では,プローベが通常は前腟円蓋に位置しているので,このような像が得られる。

3.カラードプラー

著者: 秦利之 ,   秦幸吉 ,   北尾学

ページ範囲:P.1359 - P.1361

 超音波カラードプラー法は,心血管腔内の血流方向,速度および速度の分散の情報をカラーで超音波断層図上に実時間で重ねて表示するため,血流および血管の同定が非常に容易に行えるようになった。そのため,対象となる血管が細く,その走行が複雑な胎児や女性骨盤内血管の血流の同定には非常に有効である。
 本稿では,カラードプラー法の産婦人科領域への応用に際しての必要な基本的な原理などについて解説する。

4.循環動態

著者: 河村堯

ページ範囲:P.1362 - P.1363

パルス・ドプラ法の適応
 胎児循環の異常をもたらす代表的な原因として先天性心奇形,不整脈,胎児水腫,胎盤機能不全にともなう胎児仮死やIUGRなどがある。これらの循環機能異常を知るには超音波断層法,超音波Mモード法や超音波血流計測による評価がよく,一般的にはパルス・ドプラ法やカラー・ドプラ法が一般に用いられる。

婦人科

5.子宮筋腫

著者: 田中善章

ページ範囲:P.1364 - P.1366

子宮筋腫(筋層内筋腫核および漿膜下筋腫核)(図1)
 子宮体部に約10cmの筋層内筋腫核,底部に約4cmの漿膜下筋腫核を証明する。子宮筋腫核は正常子宮筋層とは明瞭な境界によって区別され,その内部は渦巻状,斑紋状のwhorled patternと呼ばれる特有のエコーを示す。このwhorled patternは摘出標本の所見でわかるように,筋腫核内の筋束走行を反映するものである。したがって筋腫核割面が平滑な場合はこのwhorled pat—ternの不規則性が減弱し,びまん性充実部としてとらえられる。子宮底部にみられる漿膜下筋腫核の内部エコーはそのような所見を示している。また漿膜下筋腫核は子宮本体より外方に突出した形で証明され,筋層内筋腫核に比べて子宮本体の形状に与える影響は少ない。`

6.内膜症

著者: 本田育子

ページ範囲:P.1368 - P.1370

卵巣と子宮間の癒着像(図1)
 子宮内膜症Ⅲ,Ⅳ期例では,卵巣は子宮の後方に癒着し,チョコレート嚢胞の存在は卵巣を巻き込み,排卵や卵子のpick-upが障害される。子宮内膜症の超音波診断では,この卵巣の癒着とチョコレート嚢胞の判定がポイントとなる。図1は経腟超音波横断走査で描出された子宮と右卵巣を示している。図1Aは卵巣と子宮の間に腸管の動きが認められ,卵巣と子宮の間に癒着はないと判定される。卵巣にチョコレート嚢胞は認められない。図1Bの右卵巣は子宮側方に接して描出され,経腟プローブを移動させても子宮と卵巣の間にずれは生じす,子宮と卵巣は一緒に動き,卵巣と子宮の間に癒着ありと判定される。卵巣にチョコレート嚢胞は認められない。

7.子宮体癌

著者: 和泉佳彦

ページ範囲:P.1372 - P.1373

症例1 70歳,子宮体癌Ⅰ期(図1)
 子宮はほぼ正常大だが,子宮体部中央に周囲の筋層に比べて高輝度な塊状エコーが認められる。高輝度な塊状エコーは子宮体部にとどまり頸管への浸潤は見られない。健常筋層の厚さは比較的厚く,筋層浸潤が少ないと思われる。摘出標本では,腫瘤は子宮底部の内膜に見られる限局型,外向型の腺癌で,頸管浸潤や筋層浸潤はみられなかった。
 閉経前には月経周期に伴って子宮内膜像の経時的な変化があり,特に分泌期中期には超音波断層法で高輝度な塊状エコーを観察することができる。しかし閉経後の子宮内膜は萎縮しており,超音波断層法でエコーの見られないことが多い。子宮体癌の好発年齢は50歳代の後半であり,患者の約75%は閉経後であるため閉経後に高輝度な塊状エコーが認められる時は精査が必要と思われる。

8.子宮頚癌浸潤度

著者: 赤松信雄

ページ範囲:P.1374 - P.1376

右子宮傍組織浸潤(経直腸ラジアル走査によるほぼ水平断面像)(図1)
 左子宮傍組織はほぼ正常と考えられ,直腸内バルーンの充満により拡張された直腸によって弓状に伸展され,子宮頸に連なる先細りの前側方に凸な三角形エコーとして描出されている。内部は低エコーよりなるが,膀胱側の子宮動静脈の部位は高エコーを示している。子宮癌浸潤により右子宮傍組織は肥厚し,一断面での長さ,幅が増加して描写される。子宮傍組織エコー中央での幅が10mmを超えると,子宮傍組織浸潤が多い。この症例では11mmになっている。また子宮頸の右方偏位も認められる。

9.化学療法中の卵巣癌のフォローアップ

著者: 京哲 ,   井上正樹

ページ範囲:P.1377 - P.1379

卵巣癌の再発像(図1)
 卵巣癌(serous cystadenocarcinoma)stageⅢcにて単純子宮全摘術および両側付属器摘出術施行,肉眼的には病巣はほぼ摘出し,術後約1年半にわたりcyclic PAC療法を行うも,腫瘍マーカー(CA125)の上昇が認められた症例。
 ダグラス窩に腹水が貯留し,腹膜面より腹腔内に突出する境界不整で乳頭状,内部に一部echo free spaceの混在する充実性腫瘤が認められる。この像は画像診断上典型的な悪性所見を呈しており,腹膜面における卵巣癌の再発像と考えられた。

10.卵巣良性腫瘍

著者: 綱脇現

ページ範囲:P.1380 - P.1381

単房性の嚢胞性腫瘍(図1)
 子宮はやや肥大しているが内膜は正確に読影できる。腫瘤は子宮に隣接し単房性の嚢胞性腫瘍である。大きさは57×83×53mm。腫瘍壁(被膜)は肥厚もなく均一で底部輪郭も明瞭である。輝度も低い。嚢胞内への突起や隆起は認めない。腫瘍内容は浮游物もなく均一なエコー像である。多方向より慎重に走査するも乳頭状像や奇異な像は全く認められなかった。従って,超音波断層診断では腫瘍壁,腫瘍隔壁そして内部エコー像のどれをとっても悪性とは言えず,術後組織診も良性であった。

11.皮様嚢腫

著者: 東政弘

ページ範囲:P.1382 - P.1384

症例1:35歳 1回経妊1回経産(図1)
 現病歴:無月経にて近医受診。妊娠12週。超音波検査で充実性卵巣腫瘍を指摘される。
 超音波所見:子宮の右上方に117×106×66mmのsolid partとcysticpartよりなる嚢腫を認める。 solidpartは比較的均一な高輝度エコーで,その表面は平滑であり,複雑な内部構造は認められない。一部は鏡面像に見える。cystic partの中にもやや輝度の高い短い線状エコーをわずかに認める。嚢胞壁は薄く不規則な肥厚は認められない。図には示してないが子宮内に11週4日相当の胎児および胎児心拍を確認する。右卵巣嚢腫の充実部分はone slice CT検査でnegativedensityであった。

12.卵巣癌—嚢胞性

著者: 落合和徳 ,   渡辺明彦

ページ範囲:P.1385 - P.1387

 卵巣腫瘍の病理組織学的分類が改訂され,現在組織発生による分類が使用されている。以前はより臨床病理学的所見を基盤とする旧日産婦分類が用いられ,卵巣腫瘍は割面所見より嚢胞性と充実性に分類されてきた。これは臨床家にとって手術時の肉眼所見から予後を推定する上で都合がよかったが,この分類では腫瘍のほとんどが嚢胞性であっても一部に充実部を有せば充実性として表現したので誤解されやすい一面もあった。本稿では卵巣癌において嚢胞部がdominantなものを嚢胞性,そしてほとんど充実部が占めるものを充実性(次項目)としてその超音波診断の実際について述べる。

13.卵巣癌—充実性

著者: 落合和徳 ,   渡辺明彦

ページ範囲:P.1388 - P.1389

症例 S.I.16歳(図1)
 1ヵ月前より腹部膨満感,嘔気があり,近医受診,腹部腫瘤を認め精査のため来院した。既往歴はなし。臍上に達する腫瘤を触知し,腫瘍マーカーはAFP 16000 ng/ml,CA 125 2200 U/ml,CAM PAS(+)であった。
 超音波像:充実部を主体とした腫瘤で内部に出血,壊死を思わせるecho freeな部分,あるいは嚢胞部分の混在する像を認める。充実部分は不均一であり,それぞれの境界も不整である。付属器領域にこのような腫瘤を認めた場合,卵巣癌を疑わなければならないが,その原発臓器をめぐり鑑別すべき疾患は多数あり,年齢,病歴,身体所見,腫瘍マーカー値,他の画像診断を含め総合的に診断する必要がある。手術診断は右側卵巣に発生したYolk sac tumor,stage IIcで右側付属器摘出術と左卵巣楔状切除,大網部分切除を行い,術後PVB療法を施行した。

14.胞状奇胎

著者: 牧野田知 ,   田畑雅章 ,   田中俊誠 ,   藤本征一郎

ページ範囲:P.1390 - P.1391

全胞状奇胎の子宮矢状断面像(妊娠14週)(図1)
 子宮は外径110mm×93mm,内径95mm×75mmと拡大し,通常のこの週数の胎嚢径(Gesta—tional Sac Diameter=GSD)に比し,ほぼ同等か若干増大している。子宮内腔には羊水・胎児などは認められず,子宮壁を構成する子宮筋層より高輝度(high echogenic)な顆粒状(granular)の部分が左上部2/3を占めており,この高輝度部分の中に直径2.0〜8.0mm程度の超音波透過部分sonolucent area)が多数存在している。これらは奇胎嚢胞の小胞(vesicle)を示していると考えられる。また右下方に数個みられる直径10mm以上の嚢胞状(cystic)の超音波透過部分は奇胎内の出血部分と考えられる。なお,奇胎嚢胞は妊娠の進行にともなって妊娠8.5週で直径約2mm,妊娠18.5週で約10mmへと増大するといわれ1),解像力の悪い超音波装置が主流であった時代には,奇胎嚢胞が大きくなってはじめて子宮内腔に多数の嚢胞の存在を示す吹雪状形態(snowstorm appearance)が認められ,これが胞状奇胎の典型的超音波像といわれてきた。現在では超音波装置の解像力の進歩にともない,妊娠の第1三半期から認められる上図のような所見が胞状奇胎の典型的像といわれている。

15.絨毛癌

著者: 金沢浩二

ページ範囲:P.1392 - P.1393

 症例1 23y/o,0-0−1-0,
診断:組織確認転移性絨毛癌(図1)
 入院時(未治療)の経腹超音波断層像である。尿hCG 4,864,000 iu/day。
 子宮体部後壁の筋層に連続する超手拳大,球状の腫瘤病巣陰影が,子宮腔を前方へ圧排するように描出されている。全体として,high echogenicな充実性陰影で占められており,中に大小不同,不整形,辺縁不規則,echo freeな陰影が混在し,腫瘤内の出血,変性・壊死による組織融解をうかがわせる。一見して,胞状奇胎,とくに出血,変性・壊死を伴う胞状奇胎の断層像に類似しており,鑑別は必ずしも容易でない。なお,本例は両側性卵巣貯留嚢胞をともなっていた。

16.乳癌

著者: 藤倉雄二

ページ範囲:P.1394 - P.1395

症例1 52歳 乳癌T2
 図1は同一症例を異なる周波数で観察したものである。左の腹部用探触子3.5MHzでは何か不整形の低エコー腫瘤があるなという程度であるが右の表在臓器用探触子7.5MHzでは一見して癌とわかる。形状は不整形で辺縁は粗雑,内部エコーも不均一である。いずれも悪性を示唆する所見であり,特に最初に挙げた形状は良悪性の鑑別に最も有用とされている。

17.乳腺症

著者: 藤倉雄二

ページ範囲:P.1396 - P.1396

症例1 35歳 乳腺症
 図1は両側の乳腺症で両側にcystが散在し,solid massこそ認められないが乳腺の内部エコーも不均一である。乳腺症の超音波所見は多彩であるが,この例はよく見られる一つの典型例である。

18.卵胞計測

著者: 久保春海

ページ範囲:P.1397 - P.1400

卵胞計測のための基本画像
 近年,不妊症診療において超音波卵胞計測はますますその重要性が増加してきている。卵胞計測を行う場合,経腹プローブを用いるよりも経腟プローブを用いた方が,画像の鮮明度や操作性において格段に優れている。図1は経腟プローブによって得られる基本的な卵胞計測のための画像を示している。すなわち,経腟プローブを腟内に挿入して,両側腟円蓋部から後腟円蓋部方向にプローブ先端をスキャンしてゆくと,まず太い内腸骨静脈の血流像(V)とそれよりやや細く,拍動する内腸骨動脈像(A)を明瞭にとらえることができる。この2本の血管の走行に沿ってプローブを移動させてゆくと,やがて数個の大小卵胞を含む卵巣像(OV)を認める。この図の卵胞は1個であるが,最大卵胞径(MFD)21mmで性周期D14日目における成熟卵胞(MF)である。この卵胞はD15で自然周期に排卵し,その後,妊娠にいたっている。卵胞計測法としては最大卵胞径のみを計測する場合と2方向,3方向あるいは卵胞面積を求めて,より正確に成熟度を判定しようとする試みがあるが,筆者は臨床上最大卵胞径1方向のみの計測で十分卵胞成熟度は判定し得ると考えている。しかし,卵胞成熟度と卵子の成熟度には排卵刺激を行った場合,多少の差が生じることが報告されている。

19.経腟採卵

著者: 関守利 ,   土屋清志 ,   伊藤理廣 ,   竹内巧 ,   伊藤郁朗 ,   篠崎博光 ,   伊吹令人

ページ範囲:P.1401 - P.1403

子宮動静脈の下降枝に注意(図1)
 採卵時に注意しなければならないのは,血管穿刺による腹腔内出血である。図に示す,子宮動静脈の下行枝は穿刺時に見逃し易い。まず,超音波像で子宮静脈の下行枝を見つけ,それに接する部分に子宮動脈下行枝の拍動を観察することで診断する。穿刺ルートに血管が入らない位置にプローブを動かす必要がある。

20.リング位置の確認と除去

著者: 井上幾雄 ,   宮川勇生

ページ範囲:P.1404 - P.1405

優生リングを装着している症例(図1)
 経腟走査法でプローベを前腟円蓋部に入れ,横断面で子宮を描写している。子宮のほぼ中央部で,音響陰影を伴ったリング状の高輝度エコーが見られる。プローベの角度を変えて得られた断層像より優生リングと確認された。

21.術後腹壁合併症

著者: 坂倉啓一 ,   岩田嘉行

ページ範囲:P.1406 - P.1407

 術後腹壁合併症には,術後,数日から一週間位で症状の出現する早期の合併症と,術後数ヵ月から数年後に見られる合併症がある。前者には創部血腫,創部膿瘍があり,後者には腹壁瘢痕ヘルニア,腹壁癒着がある。

産科

22.妊娠初期の胎児発育—5週

著者: 竹村秀雄

ページ範囲:P.1408 - P.1409

妊娠5週の経腟エコー像(図1)
 経腟エコーによる子宮の縦断面画像である。使用機器は持田社製Sonovista-SLCでメカニカルセクター方式の経腟プローブを用い,使用周波数は7.5MHzである(以下1412ページ図1まで同機種による)。ブラウン管上の表示のまま呈示しているので,実際の子宮位置より90°反時計方向に回転していることに注意して頂きたい。
 子宮体部に11.1×10.3×8.6mm,平均10mmの胎嚢があり,その内面の子宮底側に接して直径2.8mmの卵黄嚢が見えるが,胎芽も心拍動も見えない。胎嚢の周囲を強いエコーを示す部分(white ring)が取り囲んでおり,これは絨毛と脱落膜に相当する。この症例は,最終月経起算5週3日で,基礎体温でも同様と思われた。その後妊娠6週,8週には経腟エコーにより,妊娠10週には経腹エコーにより頭殿長計測を行い週数相当であった。

23.妊娠初期の胎児発育—8週

著者: 竹村秀雄

ページ範囲:P.1410 - P.1411

妊娠8週3日の胎児前額断面像(図1)
 最終月経起算で妊娠8週1日の胎児前額断面像である。経腟エコーでは矢状断面像が得られることは少なく,この図のような前額断面像での観察が中心となることが多い。頭部がやや背側で切れているために第4脳室が大きくみられ,あたかも頭部は一つの脳胞のように見えているが,もう少し腹側で切ると側脳室内に脈絡叢が見えることもある(妊娠6,7週の頭部は単脳胞で占められている)。上,下肢は躯幹から左右に突き出したように見えており,両下肢の間には尾部が突出している。頭殿長は15mmで8週3日と推定した。その後11週で行った経腹エコーでも頭殿長は2日分大きかった。羊膜も良く見えており,羊膜と絨毛膜との間,つまり胚外体腔内に卵黄嚢(直径4.3mm)がくっきりと見えている。

24.妊娠初期の胎児発育—10週

著者: 竹村秀雄

ページ範囲:P.1412 - P.1413

妊娠10週1日の胎児前額断像(図1)
 経腟エコーによる妊娠10週1日の胎児の前額断面像である。大きな頭部の中心には第3脳室が見られ,胞実質が充実してきている。上肢は左右に突出して見えるが,プローブを腹側,背側にずらすと肘で屈曲し手を顔面に近づけていることが分かる。下肢も膝関節で曲げ足面を合わせるようにしているのであるが,この断面では大腿部の断面のみが見えている。大腿部と尾部はほぼ同じレベルとなり,頭殿長は28mmである。羊膜腔は増大して絨毛膜腔内の大部分を占めるようになり,胚外体腔は狭くなっている。

25.週数の修正

著者: 太田孝夫

ページ範囲:P.1414 - P.1415

大横径の描出法と計測法(図1)
 1)児頭の横断走査によりmidline echoを描写する。
 2)超音波ビームがmidlineに直交するようプローブの走査方向(リニア走査のプローブではその長軸方向)の角度を決める(midline echoは画面上,水平となる)。

26.流産

著者: 篠崎百合子 ,   猪俣吉広

ページ範囲:P.1416 - P.1417

妊娠早期の胎芽死亡(図1)
 妊娠8週2日の稽留流産の経腟超音波像である。約2.5cmの胎嚢(gestational sac:GS)の中に7mmの胎芽像を認めたが,その中に心拍動は見られなかった。右画面のMモードで律動的な心拍動が認められないことを確認,記録した。
 この症例は不妊治療後の妊娠例であり,妊娠5週1日で経腟超音波断層法にて胎児心拍が認められた。その後妊娠7週後半より少量の性器出血があり8週2日に来院,再度検査したところ図1のような所見であり,妊娠早期の胎芽死亡と診断できた。子宮内容除去術を3日後に予定していたところその前日に下腹部痛,出血増量をきたし来院した。腟鏡診にて既に腟内に脱落膜の排出が見られた。

27.子宮外妊娠

著者: 本郷基弘

ページ範囲:P.1418 - P.1420

症例1.Y.M.24歳 未妊婦(図1)
 月経遅延ののち,7週0日より暗赤色出血が少量持続し,7週6日に下腹部痛が発症して受診。妊娠反応は50単位(+),1,000単位(−)。経腹法で,子宮腔内にはGSは認められず,子宮内膜は曲玉状に淡くビマン性に肥厚しているが,内部にecho free spaceはなかった。子宮に接してその左側には,高輝度の内部エコーを有する嚢胞性の楕円形エコーとして4.6×3.4cmの卵管断面が描出された。直腸子宮窩には明瞭なecho free spaceが認められ,左卵管妊娠の中絶と診断した。開腹にて左卵管膨大部流産を確認し,左卵管切除術を施行した。腹腔内出血は500mlに及んでいたが,輸血はしなかった。病理組織診で卵管内の絨毛組織を証明した。

28.胎盤血管腫

著者: 高柳真 ,   前川正彦 ,   西田荘哉 ,   林子耕 ,   鎌田正晴

ページ範囲:P.1421 - P.1423

 胎盤絨毛血管腫は絨毛膜の絨毛血管から発生する良性non-trophoblastic tumorである。発生頻度は詳細に胎盤を調べると約1%(Fox)から0.14%2))ぐらいと考えられるが,鶏卵大以上の血管腫は極めてまれである。
 一方,その臨床的意義に関しては,大部分は無症状であるが,大きさや臍帯付着部との位置関係によっては,早産,羊水過多,胎児仮死,胎児水腫,胎児死亡,貧血,血小板減少症,などを合併する事が知られている。

29.胎盤の老化

著者: 畑俊夫 ,   近藤俊吾 ,   平野正子 ,   小倉一仁 ,   富岡康広

ページ範囲:P.1425 - P.1427

胎盤実質内のfallout像(図1)
 患者は28歳初産婦。loss of variabilityが出現し,ラミナリアにて頸管開大後,プロスタグランディンにて陣痛の誘発を行い,陣痛開始後10時間にて自然分娩となった症例。分娩1週間前よりE3が37.3→23.4→20.8mg/day,LAPが3180→2834→2749と低下していた。HPLは11.0μg/mlで変化はなかった。
 胎盤基底板はライン状に認められ,その内側にジュズ球状に最もhigh echoな顆粒が多数付着しており,羊膜膜板もやや厚くはっきりと認められ,胎盤隔膜様の像も見ることができる。特徴的な所見は小さいながらも,胎盤実質内にfallout像ともいうべき,はっきりと周囲を縁取りされたechoが欠損した像が存在している。福田らのⅣ型に一致すると思われる。

30.羊水ポケット

著者: 橋本武次

ページ範囲:P.1428 - P.1429

手技のポイント
 1)羊水深度:最大羊水ポケットの超音波像で,子宮内壁から垂直方向に胎児表面まで一番深い所の距離を測定する。V字形に狭い所は避ける。 羊水過少<1cm

31.切迫早産

著者: 福家義雄 ,   沖津修

ページ範囲:P.1430 - P.1431

絨毛膜下出血後(妊娠24週2日)(図1)
 子宮内の全体像を把握するには経腹法が有用であるが,母体腹壁,胎児の影響する場合は経腟法を併用する。本症例は妊娠14週,外出血があり,超音波断層検査にて絨毛膜下出血と診断し,入院加療を行った。入院時エコーフリースペースは内子宮口を覆っていたが,次第に縮小し,超音波像も凝血塊と思われる高輝度エコーに変化している。経腟法にて内子宮口と凝血塊との距離は約2cmであった。低置胎盤,辺縁前置胎盤などの胎盤片も同様のエコーとしてみられる。胎盤中央部からの連続的な観察および経時的な検査が必要である。胎盤側への出血エコーは胎盤後血腫,胎盤早期剥離への注意が必要だが,辺縁静脈洞との区別を要す。

32.臍帯・臍帯巻絡

著者: 村岡光恵

ページ範囲:P.1432 - P.1434

 ます図1右のように胎児背側の頸部に縦軸方向にプローブをあてると巻絡があれば臍帯の部の皮膚がややくぼんだようにみえ臍帯の横断面は内部のちらちらしたエコーフリースペースにみえる。カラー・ドップラーで確認すると同色の2本の臍帯動脈と異色の1本の臍帯静脈の断面が確認される。つぎに図右のように頸部横断面をみると頸部周辺に取り巻くように臍帯がエコーフリーでみえる。カラードップラーでは赤青の床屋の看板のように巻いてみえる。

33.臍帯穿刺

著者: 村上雅義

ページ範囲:P.1435 - P.1437

 超音波診断装置のリアルタイム性に加え,空間分解能の向上,穿刺用プローベの改善により,超音波ガイド下での臍帯穿刺(cordocentesis)は比較的容易に,安全に,かつ安定してできるようになってきた。胎児血を用いた染色体検査や血液ガス・生化学的検査を行うために,あるいは胎児への直接薬剤投与や輸血目的などで実施されている。

胎児

34.胎児計測値

著者: 竹内久弥

ページ範囲:P.1438 - P.1439

妊娠初期
 胎嚢径計測
 a.手技のポイント:必要にして十分な膀胱充満法。過度の充満は胎嚢形状を変える。子宮縦断像での最大断面と,それに直角の横断像での最大断面を求める。
 b.計測法:胎嚢像の内側で縦径,前後径および横径の3径線を計測。胎嚢が円形に近いときは最大径のみで十分。あまりにも細長い涙滴型の場合には3径線の平均値。

35.頭蓋内出血

著者: 室月淳 ,   岡村州博 ,   矢嶋聰

ページ範囲:P.1440 - P.1441

 頭蓋内出血は未熟児によく認められ,その予後を大きく左右する。多くの場合,胚基質germinal matrixの毛細血管が破綻し上衣下出血となり,しばしば脳室内に広がって脳室内出血intraventricular hemorrhageの形をとる。未熟児に比べるときわめて稀になるが,胎児における頭蓋内出血の報告もときに認める1〜3)。胎内での低酸素状態や血圧の大きな変動,あるいは胎児の出血傾向などが大きく関与しているといわれる。
 胎児頭蓋内出血を,Papileらの報告に準じて以下のように分類する。Grade Ⅲ〜Ⅳの神経学的予後は不良とされる。

36.孔脳症

著者: 今井史郎 ,   中山雅弘

ページ範囲:P.1442 - P.1443

孔脳症の頭部超音波像(図1)
 妊娠31週の胎児頭部横断像であるが児頭大横径の大きさはほぼ週数相当であったが,推定児体重はIUGRであった。羊水は多め。頭蓋骨はやや変形し,頭蓋内では後頭部を主として単房性の嚢胞性病変を認め,その外側には大脳実質の存在もうかがえる。この写真には認められないが小脳の低形成も疑われた。妊娠33週1,526グラムで出生した。単一臍動脈,両小指節欠損,左耳低形成,硬口蓋裂があった。生後2日に呼吸不全にて死亡し,剖検結果から脳梁欠損,透明中隔欠損,心奇形(大動脈縮窄,心房欠損,心室欠損など)も確認された。(大阪厚生年金病院,高木哲先生の御好意による)

37.水頭症

著者: 今井史郎 ,   中山雅弘

ページ範囲:P.1444 - P.1446

水頭症の頭部超音波像(図1)
 妊娠23週の胎児頭部横断像であるが拡大した側脳室と圧迫された大脳実質を示している。児頭大横径の大きさは5.5cmとやや週数に比して小さめであった。側脳室/大脳半球幅の比(LV/HW)は63%であり,妊娠23週の正常平均が36%であることと比較し異常に増加している。CFHD(cere—brofrontal horn distance)は17mmであり,妊娠23週の正常平均の8mmと比較して大きかった。またatrium幅も11mmと正常平均値と比較し大きかった。この症例は腰部髄膜瘤をも合併していたが,レモンサインは認めなかった。

38.小脳奇形

著者: 今井史郎 ,   中山雅弘

ページ範囲:P.1448 - P.1449

小脳低形成を伴った18トリソミーの頭部超音波像(図1)
 妊娠39週,小脳断面をみる角度での胎児頭部横断像であるが,小脳後方の大脳槽の著明な拡大とともに小脳の横径(3.1cm;正常4.5cm),前後径ともに小さいことが認められる。児頭大横径は8.7cmと妊娠39週にしては小さく,また推定児体重も−3.2SDと著明なIUGRであった。羊水量は正常で胎児不整脈があった。染色体結果より18トリソミーであり,生後1日で死亡した。剖検の結果小脳の発育不全,心奇形(両大血管右室起始,心室中隔欠損),食道気管支瘻の合併が確認された。

39.頚部腫瘤

著者: 田中守 ,   名取道也 ,   石本人士 ,   小林俊文 ,   野澤志朗

ページ範囲:P.1450 - P.1451

頸部リンパ嚢腫の胎児頸部の横断面
 図1は,妊娠18週での頸部リンパ嚢腫(cystic hygroma colli)の胎児頸部の横断面を示す。左上角が胎児腹側,右下角が胎児背側となっている。写真中央やや左上の高エコー輝度を示す胎児頸椎の後方に直径4cm程度の大きな嚢胞が2個並んで認められ,隔壁は胎児正中線上に位置する。大きな嚢胞に接して小さな嚢胞が数個認められる。また,この嚢胞は中枢神経系とは連続性がなく,壁は非常に薄い。本症例は,胎児水腫を伴っているため,嚢胞周囲の皮膚は肥厚し皮下浮腫が認められる。

40.肺成熟

著者: 樋口誠一

ページ範囲:P.1452 - P.1453

 従来,肺サーファクタントの羊水移行を利用し,羊水サーファクタント濃度測定による胎児肺の生化学的成熟度(サーファクタント合成能)の出生前診断が行われてきた。ここでは神経系を包括する肺の機能的成熟度の評価法として,胎児呼吸様運動の持続時間を分析する方法について紹介する。
 手技:まず胎児の呼吸様運動をビデオテープに記録する。超音波トランスデューサーを胎児の胸郭および腹部が同時に描出されるように置き,呼吸運動が出現するまで約40分観察する。これは呼吸様運動が胎児のactive sleepの状態で出現頻度は高く,quiet sleepでは低いからであり,また,陣痛時にも減少する。したがって,呼吸運動が全くみられない場合には時間,あるいは日を変えて観察する必要がある。

41.胎児心不全

著者: 宇津正二

ページ範囲:P.1454 - P.1456

症例1 リトドリンによる心拡大(図1)
 妊娠33週4日,切迫流産,リトドリンの長期大量投与(300μg/minで2週間持続点滴)のために持続性の高度頻脈(200bpm以上)となり,著しい心拡大を呈するようになった。

42.心奇形

著者: 秦利之 ,   秦幸吉 ,   北尾学

ページ範囲:P.1457 - P.1459

左心低形成症候群(長軸断面)(図1)
 RA:右心房,RV:右心室,Ao:大動脈,PA:肺動脈,TV:三尖弁
 1)胎児は骨盤位で児背は母体の左側にある。右心房の内側に狭小化した大動脈が描出されている。拡張した右心室より肺動脈が起始している。

43.腹部腫瘤

著者: 高橋通 ,   高木清

ページ範囲:P.1460 - P.1461

胎児腹壁破裂像(図1)
 症例は28歳,0-G,0-P。他院にて腹部腫瘤の疑いで当科紹介となり入院時に超音波検査を施行した。
 図1は胎児腹部横断像である右上方に胎児の体幹を認め,その一部より子宮内腔に向かい肝・腸などの脱出を認める。左上方に肝臓を認め,その下方にcysticなmass状腫瘍像として腸管を認める。他には左下肢の欠損,外性器の形成不全などの多発奇形と羊水過少症を認めた。当科では詳細な検討を加えた結果Limb Body Wall Complexの診断をした症例である。

44.脊椎奇形

著者: 久保隆彦

ページ範囲:P.1462 - P.1463

脊椎の腰仙椎部に膨隆した腫瘤像(図1)
 症例は32歳,妊娠38週,骨盤位で予定帝王切開の術前に超音波検査を実施した。
 図1はオクトソンによる胎児の縦断像である。胎児は母体の背骨に向かいあって位置している。図の左に円形の頭部が,左から右に脊椎が描出されている。胎児腹壁には異常は認められない。しかし,脊椎の腰仙椎部に相当する位置に,脊椎と連続性のある5×7cmの膨隆した腫瘤像か認められる(矢印で示す)。その腫瘤の内側にはエコールーセントな楕円形の陰影即ち液体の貯留を認める。カラードップラーでは血流は認めず,腎臓・膀胱などの泌尿器系との交通を認めず,これらより,貯留した液体は髄液であり,二分脊椎と断診した。

45.四肢の奇形

著者: 坂井昌人 ,   岡井崇 ,   水野正彦

ページ範囲:P.1464 - P.1465

上肢の形成不全の像(図1)
 35歳,初産婦。妊娠31週に高度な子宮内胎児発育遅延,羊水過多を認めたため精査,両上肢の形成不全を伴う胎児多発奇形が認められた。図1は左上肢だが,躯幹から出た上肢には短い長管骨が一本認められるのみで肘関節はみられない。手首〜指は掌屈している。他の方向から観察しても複数の指として認められない。この屈曲位は時間をあけ複数回観察しても常に同一であり,屈曲拘縮と考えられた。肩関節の動きは認められた。右上肢には上腕と前腕が認められたが,手は左と同様に強く掌屈していた。この他,食道閉鎖が疑われ,VSDを含む心奇形,左腎無形成〜低形成,単一臍帯動脈が認められた。経腟分娩が選択され,妊娠35週に死産となった。児には前述した所見がすべて認められ,左上肢短縮,右手は指2本,左手は指1本,両手の屈曲拘縮があり両上肢の形成不全が確認された。また食道閉鎖の他,気管も閉鎖していた。

46.胎児性別の超音波診断

著者: 長町典夫 ,   寺澤晃司 ,   近藤肇

ページ範囲:P.1466 - P.1468

男児の超音波断層法(図1)
 2本の大腿骨と膀胱を確認して,殿部の横断面と前額面を断層し,外性器を診断する。われわれは主に前額面にて診断している。
 図1は殿部の前額断層面で,2本の大腿骨の間に陰嚢と睾丸がみえている。プローベをずらすと陰茎もみられた。

47.胎児水腫

著者: 前田博敬 ,   松本直通 ,   中野仁雄

ページ範囲:P.1469 - P.1471

妊娠29週2日の非免疫性胎児水腫の症例(図1)
 胸部横断像。著明な皮下浮腫と両側の胸水貯留像を認める。両肺は小さく,肺門部に付着しているようにみえる。心臓の拍動にともなって,両側の肺が揺らいで観察される。

48.眼球運動

著者: 上妻志郎

ページ範囲:P.1472 - P.1473

眼窩の水平断面像(図1)
 眼窩を含む頭部の水平断面である。胎児の顔面は母体の腹壁側を向いている。鼻根部を挾み両側の眼窩が円形のecho-free spaceとして描写されている。眼窩内前方に認められる小さな線状エコーがレンズの後面である。眼球運動は,このレンズ後面エコーの眼窩内における移動として観察される。眼球運動は水平方向への運動である場合が多く,その観察には眼窩の水平断面が最も適している。

49.呼吸様運動

著者: 佐川典正

ページ範囲:P.1474 - P.1476

Real time B-scanによる胎児呼吸様運動(FBM)の観察(図1)
 ヒト胎児のFBMは,1971年にBoddyら1)が超音波A-mode法を用いて胸郭の動きとして観察報告した。FBMの胸郭の動きは小さいので,A-mode法による観察では胎動との区別が付きにくく胸郭運動の検出が不正確になり易かった。その後,B-mode法の進歩にともなって,胸郭のみでなく横隔膜や腹壁の一連の動きとしてreal timeに観察できるようになった2)。図1は妊娠35週の正常胎児正中やや右側からみた胸腹部の矢状断面像である。胎児心臓(H)と肝臓(L)の間を仕切るように横隔膜(D)が認められる。FBMは,出生後に空気呼吸を行う場合とは異なり肺胞は拡張しない。したがって,横隔膜の下降運動と胸郭(T)の拡大(胸壁の前方への運動)とは一致せず30〜70cycle/minの速度で逆の動き(paradoxical respiration)をする。また,FBMに伴う胸郭内圧の変化に応じて肺のecho densityが変化するのも認められる。

50.胎動誘発試験

著者: 辰村正人

ページ範囲:P.1477 - P.1479

 胎動誘発試験は胎児触診などの外的刺激法が一般的だが,本稿では純音および閃光胎児刺激による胎動誘発について述べる。本特集号はエコー診療マニュアルであるが,胎動誘発試験では胎動記録が重要なため胎動心拍数図を用いたので,図には超音波診断画像ではなく,胎動心拍数図を呈示する。
 インフォームドコンセントを対象になったすべての妊婦から得たうえで,胎動誘発試験を施行した。胎児反応の指標として,胎動発生と胎児心拍数変動の2現象を用いた。これらの2現象のうち,どちらか1つ以上を刺激後4秒以内に認めた場合を反応陽性とした。すなわち刺激後4秒以内に発生した胎動を誘発胎動と定義した。以上の判定基準で,母体腹壁を通して胎児刺激を行った。

51.Fetal Biophysical Profile Score (FBPS)

著者: 金岡毅

ページ範囲:P.1480 - P.1482

 胎児biophysical profiling score(FBPS)では,まず20分間のnonstress test(NST)を行う。NSTは妊娠後期における優れた胎児評価法であり,偽陰性率は1〜3/1,000である。しかしながら偽陽性率が75%に達するので,それを補うために30分間の胎児超音波観察を併用したのがFBPSである。FBPSは非侵襲的であり,CSTに比べて母児にとって安全である。
 20分間のNSTでは,胎児胎動にともなう,15心拍/分以上の振幅をもち,15秒以上持続する胎児一過性頻脈accelerationが2回以上ある場合(図1a)を2点とする。20分間の胎児心拍数陣痛計測(CTG)のうち,胎児一過性頻脈が存在しないか,1回しかない場合(図1b),すなわちnonreactive NSTの場合を0点とする。右頁最下段に示すように胎児無酸素症の最初の徴候である。しかしながら,胎児がsleep stateであるような場合にもnonreactive NSTとなるので,さらに次の超音波胎児観察を施行する。

カラーグラフ 産婦人科領域におけるレーザー療法・6

腹腔鏡下のレーザー療法—特に有痛性月経患者に対するレーザー治療について

著者: 脇田邦夫 ,   泉貴文 ,   蔵本博行

ページ範囲:P.1350 - P.1351

 前回までは,外来治療室,局所麻酔下で行えるレーザー治療について述べてきた.今回は,手術室,全身麻酔下で行うレーザー腹腔鏡手術を紹介する.われわれの対象としている疾患は以下のごとくで,特に有痛性月経を伴うものには有用と考えられる.
 ①子宮内膜症:特に外性子宮内膜症で,チョコレート嚢胞を伴うものも対象となる.

メルボルン便り

日本食に人気の高いわけ—メルボルンでの暮らし その1

著者: 堀口文

ページ範囲:P.1484 - P.1485

 オーストラリアといえば若い人達にはゴールドコーストのマリンスポーツ,年金生活者にはテニスコートやプールつきの別荘を想像させ,豊富な食料と安い生活費に一度は行ってみたい,あるいは住んでみたいと思うところかも知れません。紺碧の空と200kmも300kmも続く珊瑚礁,オーストラリアにしか住んでいない可愛い,めづらしい動物達との触れあいを求めて世界中から色々な人達がやって来ます。ハワイに堪能した日本人にとってはバラエティに富んだ気候や広大な土地(こちらの人はhugeと表現します),治安の良さも魅力の一つで隣国のニュージーランドと共に新婚旅行にも人気があります。
 オーストラリアは現在でも入国にはビザが必要ですが,大学や研究所などの施設訪問は招待状だけで簡単に許可してくれます。医師の留学も受入れ側が了解すればビザは比較的簡単でメルボルンには数十名の日本人医師がメルボルン大学やモナッシュ大学の関係施設に来ています。

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「臨床婦人科産科」第45巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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