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今月の臨床 思春期診療 症状とその対応
12.卵巣腫瘍
著者: 泉陸一1 伏木弘1 藤村正樹1
所属機関: 1富山医科薬科大学産科婦人科
ページ範囲:P.1320 - P.1322
文献購入ページに移動思春期すなわち8〜18歳の女性における卵巣腫瘍の疫学的データは少なく,とくにその頻度については皆無に等しい。卵巣腫瘍症例についてその年齢別分布からみた成績では,20歳未満の若年者は全体の1〜3%を占めるといわれる。境界悪性を含めた全悪性腫瘍についてみると,日本の全国調査では,図1のように10〜19歳が約5%を占めている。この数字からはけっして多いとはいえないが,悪件新生物死亡統計部位別死因順位−1984(昭和59)年—(厚生省)をみると,10〜19歳では白血病,骨についで第3位と高く,死亡率は0.3(人口10万対)となっている。
筆者らは,富山県下の短期大学において学生定期健康診断の中に,卵巣腫瘍の検診を組み入れ,超音波方式にて,1982年から行っている。その成績1)から,18,19歳での卵巣腫瘍の発生頻度は内膜症性嚢胞を加えると0.3%(5,066例中16例)であった。16例の組織型は,漿液性腺腫1例,粘液性腺腫6例,成熟嚢胞性奇形腫5例ならびに内膜症性嚢胞4例で,悪性腫瘍はみられなかった。一方,われわれは1982年から県下全施設からの境界悪性・悪性卵巣腫瘍登録を行っているが,1991年度までの10年間に登録された365例中,20歳未満は14例(10歳未満0例,10〜14歳2例,15〜19歳12例)であった。
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