臨床婦人科産科46巻12号

1992年12月発行

Current Research

妊娠の成立機構と細胞成長因子

著者： 多賀理吉¹

所属機関： ¹横浜市立大学医学部産婦人科

ページ範囲：P.1485 - P.1494

　妊娠の成立機構を明らかにすることは，生殖医学研究の原点であり，生殖医学の研究に携わっている産婦人科医にとって中心的課題の1つである。受精から着床までの妊娠の成立過程に関する研究は，体外受精の臨床応用を契機に急速に発展し，現在なお膨大なデータの蓄積がなされている。このような臨床応用を支える基礎研究の成果も，最近の分子生物学を中心としたさまざまな新しいテクノロジーの発展によるところが大きい。妊娠成立の構成要件である1個の卵，精子，初期胚，あるいは着床部位の子宮内微小環境における，細胞の形態や機能の調節機構やそれらの遺伝子制御が次第に明らかにされつつある。
　本稿では妊娠の成立機構の中で，受精後着床までの着床前初期胚（Preimplantation embryo）の発育過程，着床過程，および着床後の脱落膜化過程のそれぞれのステップにおける細胞成長因子の役割について概説する。