総説
免疫学的側面よりみた妊娠中毒症
著者:
近藤泰正1
千島史尚1
早川智1
秋山邦久1
今井一夫1
佐藤和雄1
所属機関:
1日本大学医学部産科婦人科
ページ範囲:P.357 - P.366
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妊孕現象は生物の最も基本的現象であり,生物の進化とその発展の“なぞ”に対する基本的な問題をほぼ包括しており,life dcienceにおける最も基本的問題の一つである。従れよりこれらの問題に対して,さまざまな視点よりする考察,展開がなされてきているが,life scienceの急激な進歩はこれらの問題に画期的な進展をもたらしつつあり,特に,今日の免疫生物学の理論とその技術的側面の進歩はこれらの概念すら変えつつある1〜4)。さらに,これらの状況のもとで,妊孕現象を免疫生物学的に考察した多くの報告をみるが,これらの概念は正常妊娠に止まることなく妊娠中毒症5〜12),流産13,14),子宮内胎児発育不全15,16),不妊症17),子宮内膜症18)など産科婦人科領域の問題に対し新しい展開を示しつつある。
一方,妊娠中毒症は学説の疾患とも言われ,“群盲象を撫でる”の言葉が示すごとく,いまだその本態についてはなお明らかではない。しかし,近年,妊娠中毒症の病態解明に免疫学的概念を導入し,これよりする研究が報告され注目されている。事実,その病態に対してなされた免疫学的考察は,その病態の解釈に対して,いくつかの免疫学的関連性を示唆することが示されている。