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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科46巻6号

1992年06月発行

文献概要

カラーグラフ 胎盤の生理と病理・6

妊娠中毒症

著者: 中山雅弘1

所属機関: 1大阪府立母子保健総合医療センター病理室

ページ範囲:P.635 - P.637

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 子宮胎盤の血管系は,子宮動脈が子宮筋層,内膜で,細かく分岐し,多くは螺旋血管の状態を示しながら,脱落膜表面に広がり,胎盤の各小分葉のほぼ中央において貫入する.貫入部直前に,内腔は拡大し(口径約30μ),次いで普通の太さになる(口径約15μ).そのため母体血は漏斗状に絨毛間腔内に噴出し,その際の圧は約70-80mmHgといわれている.非妊娠時には,1分間に数mlの血液供給しかうけていなかった子宮は,妊娠末期には毎分0.5Lもの血液供給を要求する.これらの血液の確保のため,妊娠時の子宮胎盤動脈は驚くべき変化を示す.妊娠の初期及び中期(16週−20週)に胎児の栄養膜細胞(migrat—ing trophoblast)は螺旋動脈周囲に遊走し,血管の弾性線維などの支持組織を破壊し,このために血管の拡張を生じる.妊娠中毒症とは上に述べた変化が螺旋動脈に起こらないのが原因であると考えられる.しかもこの血管の拡張が起こらない理由は,妊娠中期に胎児の栄養膜細胞(trophoblast)の螺旋動脈への侵入が起こらなかったためであるという説が有力である1)
 帝王切開時に得られた胎盤床を病理的に観察すると上に述べた仮説がよく当てはまる事実が確認される.胎児発育が正常で前置胎盤や前回帝切の例ではmigrating trophoblastsは正常でそれによる血管筋層の破壊と内腔の拡大(physiologic change)が認められる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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