今月の臨床 高年婦人科—更年期から老年期へ
治療上の問題点
22.オステオポローシス—治療薬剤の選択と現時点での評価
著者:
太田博明1
牧田和也1
隅田能雄1
池田俊之1
増沢利秀1
野澤志朗1
所属機関:
1慶應義塾大学医学部産婦人科
ページ範囲:P.959 - P.962
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本邦では他国に類をみない急激な人口の高齢化を迎え,65歳以上の老年人口比率は12.5%にも達し,数年後には平均寿命ばかりでなく,老年人口比率も世界一になると推定されている。このような高齢化社会が急速に進むなか,骨粗鬆症が注目されており,国内の推定罹患者もすでに500万人を超えている。本症による骨折は高齢者の寝たきりを招来するために老年性痴呆症と並んで高齢化時代の深刻な社会問題にもなりつつある。骨粗鬆症の診断は骨密度の測定が基本であり,非侵襲的骨密度測定機器の進歩により,比較的容易に精度の高い骨密度測定が可能となってきている。ただし,その診断は確立したとは言いがたく,基準となる骨密度もpeak bone massやage-matchedcontrol,あるいは骨折者等に求めるいくつかの方法があり,また,基準骨密度からどのくらい偏位したら骨粗鬆症と診断するかについてもいくつかの考え方があり,いずれも一長一短である。しかしながら,ガイドライン的なものもできつつあり,厚生省シルバー・サイエンスプロジェクト研究班から「退行期骨粗鬆症診断基準」や早期診断法としての「脊椎骨密度カットオフライン」などが提唱されている。しかし,前者の診断基準も高齢者の骨粗鬆症にはきわめて妥当性が高いが,婦人科医が扱う閉経後や卵巣全摘出(卵摘)後の比較的若年者の場合には若干の問題がある。