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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科49巻1号

1995年01月発行

雑誌目次

今月の臨床 CTかMRIか—婦人科腫瘍読影のポイント 基礎

1.CTスキャンの原理と特性

著者: 井筒睦 ,   川口修 ,   長谷川市郎 ,   森徹 ,   平松京一

ページ範囲:P.10 - P.16

 はじめに 婦人科領域の疾患の診断に対するX線CT(CT)の果たす役割は大きく,超音波検査(US)とともに非侵襲的検査法として普及してきた.
 しかし,近年X線被曝の心配がなく,任意の方向の断面が自由に撮像できる磁気共鳴画像(MRI)が開発され,普及するにつれて,CTに課せられていた役割が変遷しつつある.

2.MRIの原理と特性

著者: 杉村和朗

ページ範囲:P.18 - P.23

 はじめに X線CTは長年馴染んだX線画像の延長線上にある.その濃度はX線画像と同様,骨は白く,空気は黒く描出されるため理解しやすい.一方,MRIは同じ物質でも,撮像方法によっては,まったく異なる濃度として描出される.これはX線CTと異なり,MRI信号を決定する因子が複数個あることに起因している.
 本項では婦人科疾患のMRIを読影するにあたって,信号強度からどのような病変,組織を考えるべきかについて解説する.

3.超音波,CT, MRIの有効な使い方

著者: 富樫かおり

ページ範囲:P.24 - P.32

 はじめに 婦人科領域における画像診断の進歩は著しく,これらのもたらす情報は現在の婦人科診療においてかくべからざるものとなっている.ただし,最適の検査法にて必要最小限の検査を行うということは,検索方法が多彩であるだけに難しい.各疾患に最適の検査方法を選ぶためにはまず各検査方法の長所と欠点を知る必要がある.超音波,CT, MRIともに,急激な進歩を示すため一概に論じることは困難であるが各々の基本的な特性,および正常構造がどの程度描出されるかという点についてまず簡単にまとめる.

子宮腫瘍

4.頸癌浸潤度(側方,膀胱直腸浸潤)

著者: 高橋康一 ,   吉岡増夫 ,   中村幸雄

ページ範囲:P.34 - P.41

CTかMRIか
 CTとMRIが,ともに子宮頸癌の浸潤度の評価において有用であることはすでに報告してきた1,2).しかしながら,CTでは頸癌組織と正常頸部筋層の間にdensityの差がなく,両者の識別を行い得ないのに対し,MRIではT2強調画像において,low intensityな正常頸部筋層とhigh intensityな癌組織を明瞭に識別し得,この違いが診断に決定的な影響を及ぼしていると言える(図1)3)
 本稿では具体的な症例を提示する一方,われわれのCTとMRIによる側方浸潤,膀胱浸潤の正診率を示す.その結果は後に述べるように,癌が子宮頸部を越えて広がった場合の進行度評価においては,予想されたほどの差が,CTとMRIの間にないことを示していたが,経験から言って,診断の信頼度という点に関しては,MRIの方がかなり高いと言わざるをえない.

5.体癌浸潤度(壁内浸潤)

著者: 牧野田知 ,   半田康 ,   晴山仁志 ,   藤本征一郎

ページ範囲:P.42 - P.48

 近年の生活様式の欧米化や人口構成の高齢化によって,婦人科悪性腫瘍のうちでも子宮体癌の占める割合が増加してきている.当科での最近10年間の統計(表)をみても,体癌の絶対数そのものも基本的にやや増加傾向にあり,子宮頸癌が細胞診の普及によって早期発見症例が増加していることを考えると,今後婦人科悪性腫瘍のうちでは卵巣悪性腫瘍とならんでますます重要度が増加すると考えられている.
 子宮体癌の特徴としては,表でも116例中62例(53.4%)が臨床進行期I期であるように,I期の占める割合が多いにもかかわらず,頸癌などに比べてI期の亜分類別の予後がよくないことがあげられる.

6.子宮癌の転移

著者: 伏木弘 ,   泉陸一

ページ範囲:P.50 - P.57

CTかMRIか
 子宮癌,すなわち頸癌と体癌のリンパ節,肺および肝への転移に関して,より確実な判断を行うためにCTとMRIのどちらが有用かについて症例を提示して比較検討した.
 リンパ節では,CTおよびMRIの横断面像はともに同程度有用であるが,MRIでは矢状断面像および冠状断面像が得られるため症例によってはCTより有用な場合もあると考えられた.

7.子宮筋腫

著者: 小口治 ,   藤井信吾

ページ範囲:P.58 - P.64

 はじめに 子宮筋腫の画像診断を行う上でたいせつなポイントは,筋腫結節をいかに明瞭に描出できるかにあり,このことが診断精度を向上させることにつながる.子宮筋腫は子宮平滑筋に囲まれた,境界明瞭な結節を形成する良性腫瘍であることから,「周囲の子宮平滑筋との区別が明瞭に描出でき,さらに結節内部の変化までも描出できる」ことが期待される,とくに,子宮筋腫に対し薬物療法が選択される機会が多くなってきている状況の中では,子宮筋腫の診断には正確な結節の大きさ,局在,肉腫との鑑別,薬物療法に対する反応(例えばLH-RHanalogue)などが要求されつつある.

8.子宮腺筋症・子宮内膜症

著者: 石川元春 ,   星合昊

ページ範囲:P.66 - P.72

 はじめに かつては異所性の子宮内膜による病態を「子宮内膜症」と総称し,子宮内にあるものを内性子宮内膜症,子宮外のものを外性子宮内膜症と呼んでいた.しかし,両者は異なった発生機序を持つ病態であるとの観点から,1993年に子宮内膜症取扱い規約1)が発表され,内性子宮内膜症(旧)を子宮腺筋症,外性子宮内膜症(旧)を子宮内膜症とそれぞれ表現することになり,混乱していた用語の統一が行われた.また,これに伴い卵巣子宮内膜症の中で嚢胞を形成したものを「卵巣チョコレート嚢胞(ovarian chocolate cyst)」と呼び,タール嚢胞(tarry cyst)や卵巣子宮内膜嚢胞(ovarian endometrioma)などの用語は用いないことになった(ただし,欧米の論文ではendometriomaという表現が一般的であり,chocolate cystという表現はあまり見られない).
 子宮内膜症の直視的所見分類は子宮内膜症によって直接引き起こされる所見(一時所見)と間接的に生じた所見(二次所見)とに分類されている(表11)).この多彩な病変の中で,ある程度画像診断で子宮内膜症と推測し得るものは卵巣チョコレート嚢胞のみであり,その他の病変に対しては画像診断の限界を超えている.

卵巣腫瘍

9.嚢胞性腫瘍の診断と鑑別

著者: 喜多恒和 ,   菊池義公 ,   入江俊之

ページ範囲:P.74 - P.79

 はじめに 一般的に卵巣腫瘍を疑う患者に対しては,問診・内診に加え画像診断として超音波検査が通常の外来診療において施行可能であり,さらに血清学的腫瘍マーカーの測定により卵巣腫瘍の診断はおおむね可能と考えられる.しかし良性・悪性の鑑別,進行期診断および組織型の推定は困難なことが多い.CTやMRIは実際の腫瘍割面の肉眼的形態をよく反映する点で卵巣腫瘍の術前診断に有用であり,早期治療の必要性の有無や術式の決定に有力な根拠となり得る.
 本稿では卵巣嚢胞性腫瘍に対するCTおよびMRIの有用性について,各々の腫瘍解析能の特性を中心に自験例を提示し解説するが,典型例の提示は文献1〜4)等を参照していただくとして,ここでは症例ごとに手術所見と比較しCTおよびMRIの長所・短所を検討することによって、今後の臨床上でのCTかMRIかの選択の個別化に役だてたいと考えている.

10.充実性腫瘍の診断と鑑別

著者: 西田敬 ,   今石清久

ページ範囲:P.80 - P.87

 はじめに 婦人科領域における画像診断法は,主として超音波断層法,CT, MRIが用いられている.とくに近年施行され始めたMRIは,子宮筋腫と腺筋症の鑑別や血液成分同定による内膜症性嚢胞の診断,子宮癌の画像的臨床進行期診断などに威力を発揮し,今後ますます応用範囲の拡大が期待されている.しかし,該当する充実性腫瘍の良・悪性の鑑別や進行期の判断,組織型の推定はMRIなどの新しい撮像技術を用いてもいまだ確立された方法はないと思われる.
 実地臨床における卵巣腫瘍の診断の第一歩は、内診および超音波断層法といえよう.とくに超音波法における経腟プローブの普及はより小さな卵巣腫瘍の発見率を飛躍的に向上しつつある,しかし,われわれが遭遇する症例の多くは,自覚症状を欠くため初診時にはすでに大きな腫瘤を形成しており,依然としてsilent killerと呼称されている腫瘍であるゆえんでもあろう.

11.卵巣癌の診断と進展度

著者: 早田隆 ,   廣田佳子 ,   宮川勇生

ページ範囲:P.88 - P.98

CTかMRIか
 画像診断が婦人科腫瘍学に及ぼした影響は大きい.なかでも人体の横断面(例えばCT)による画像は腫瘍のマクロ的全体像を教えてくれる.縦断像(例えばMRI)は全身における腫瘍の位置および臨床への更なるインパクトを与えてくれた.
 超音波診断の発達した今日でも,CT, MRIに頼る場合が少なくない.われわれは原則としてCT, MRIの両画像を検討し卵巣腫瘍の診断と進展度を検討している.できればエンハンス前後のCTを検討し,必要に応じMRIはT1,T2,プロトン密度強調画像(PD),時に造影像,を用意する.その際,診断にはCT横断像を重視するが,進展度にはMRI矢状断,冠状断像が有用である感がある.いずれにせよ,腫瘍充実部断面の濃度変化の度合いは嚢胞部位液体の診断ほど便利でない.嚢胞壁の不整や肥厚はCTが得意で,膀胱,直腸などの周囲臓器との関連はMRIがよいようである.また,リンパ節の同定はCT造影血管を参考にするとよい.

12.腹膜偽粘液腫の診断

著者: 柏村正道

ページ範囲:P.100 - P.104

CTかMRIか
 卵巣原発の腹膜偽粘液腫は,卵巣粘液性腫瘍の特殊型で,上皮の異型が乏しいにもかかわらず,粘液の浸潤が腹腔内に広範囲に認められ,緩徐な進行を示すまれな疾患である.卵巣の粘液性腫瘍そのものを診断する場合,CTとMRIの診断学的優位差はつけ難い.粘液性腫瘍は主として多房性の嚢腫を形成し,各小房内の信号は,CTでは+20単位程度に,MRIではT1で低信号,T2で高信号に描出される(図1,2).腹膜偽粘液腫では腹腔内への粘液の貯留が主となるために必ずしも上記の所見を呈さないと思われるが,まれな疾患であるため画像診断の報告はほとんどない.自験例を供覧するが,初発症状から12年が経過している典形的な腹膜偽粘液腫の症例である.
 図3は1984年4月(開腹前)のCT像であるが,+30〜40単位程度のCT値を有する均一な物質(粘液と思われる)が腹腔内全体に充満しているのが認められる.粘液性腫瘍のような多房性の所見は認められない.

その他

13.後腹膜腫瘍の診断と鑑別

著者: 加藤友康

ページ範囲:P.106 - P.110

CTかMRIか
 後腹膜腫瘍には,脂肪肉腫,平滑筋肉腫,悪性線維性組織球腫,神経鞘腫,胚細胞腫瘍などがある.まれに,上皮性卵巣腫瘍と同じ組織型の原発性腫瘍もみられる.
 後腹膜腫瘍の診断には,一般に超音波,CT, MRIが用いられる.MRIは,①撮断面の任意性,②T1, T2強調像での腫瘍内部の信号強度の差異,③Gd—DTPA造影による変化など,後腹膜腫瘍の存在・質的診断に必要な情報量が多い.したがって現時点ではMRIが最も優れている点に異論はない.しかし,石灰化病変の描出能については,MRIはCTに遥かに劣る.軟部腫瘍の多くは石灰化を生じるので,その描出は,診断の有力な手がかりとなる.よって,CTも不可欠と考えられよう.CTとMRIの優劣を競うのではなく,相補的に診断に用いることが肝要である.

カラーグラフ 遺伝講座・7

遺伝子診断の実際・1

著者: 鈴森薫

ページ範囲:P.5 - P.7

遺伝子診断の進め方
 現在では.遺伝子解析の方法で述べたように,いくつかの遺伝子診断手技が利用できるようになっている.遺伝子診断をすすめるに際して重要なことは,対象となる疾患についてどのような手技が最適であるかをあらかじめ確認しておくことである.
 図1に考えられる状況での遺伝子解析の進め方を示す.遺伝子診断を始めるにあたって,産科領域では,まず症状および検査から遺伝子疾患が疑われる子どもを出産した女性が受診する.最初になすべきことは詳細な家系図の作成である.症状や検査結果からまず特定の疾患遺伝子を想定できるが,患児から責任遺伝子を取り出して,その変異を同定することはかなりの労力となるので,まず,その遺伝子プローブあるいはDNAマーカーを入手するよう努力する.できるだけ大規模の家系構成員から血液を採取,DNAを抽出し,各種の制限酵素で切断,電気泳動後,遺伝子プローブあるいはDNAマーカーとハイブリダイズし,その結果得られるバンドの多型を比較して患児と正常者と識別できるかどうかを確かめる(サザン・ブロット法による多型分析(RFLP)).限られた遺伝子マーカーと強い連鎖傾向があるようであれば,責任遺伝子を同定し,変異部位の確認も可能である.また,既知の遺伝子であれば,いくつかの領域をPCR法で増幅し,SSCP法で変異部分の存在の有無を確かめ,集中的にその領域の塩基配列を解析し変異を確認する.

座談会

顕微授精の展望

著者: 鈴木秋悦 ,   星和彦 ,   加藤修 ,   青野敏博

ページ範囲:P.111 - P.120

 青野 本日は座談会にお集まりいただきまして,どうもありがとうございます.高度の精子異常に対する不妊治療の切札として顕微授精が登場してまいりました.1992(平成4)年の1月には日本産科婦人科学会から顕微授精に関するガイドラインが出まして,早速,1992年度分の日本産科婦人科学会の倫理委員会の集計報告によりますと,26施設で963周期の治療が行われて,35例の児が生まれています.
 本日はその顕微授精のご専門の鈴木秋悦助教授,星和彦助教授,加藤修先生のお三方にお集まりいただきまして,現状と将来の展望についてお話を承りたいと思います.

Q&A

前回帝切創の超音波検査の有用性

著者: 福田操男 ,   福田清美

ページ範囲:P.121 - P.122

Q 前回帝王切開妊婦の妊娠中の超音波による切開創の検査は有用なのでしょうか?(千葉市TT生)
 A 結論から申しますと,現在までのところ前回帝切創の超音波検査の有用性は確認されておりません.ただし筆者らは次のような経験から有用性はあるのではないかと考えています.

産婦人科クリニカルテクニック ワンポイントレッスン

腹式帝王切開術中の子宮下部横切開手技

著者: 島田信宏

ページ範囲:P.124 - P.124

 腹式帝王切開術では,腹膜内であれ,腹膜外の手法であれ子宮筋層には下部横切開術が用いられ,胎児を娩出する.その切開創によって帝切時の出血量の多い少ないが弛緩出血でもない限りは決まってしまう.つまり,胎児が娩出される容積の最小限を,筋層の大きなダメージなしに切開していれば,あとの縫合も少なくてすみ,出血量も少ないが,横に裂傷のように子宮筋層がさけたりすると子宮動脈からの出血も加わって多量になってしまう.そこで,子宮の下部横切開のとき,切開する部位がきまったら,まず,その部位にうすく,厚さ2mmぐらいにメスの腹で切るというより,しるしをつけるぐらいの感じで切開創をつくる.ついで,長ペアン鉗子(コッヘル鉗子でもよい)をもち,先端を子宮筋に対してななめに,先のメスの切開創の中央部にあてて,少し圧力を加えて先端を子宮筋層のなかへめり込ませる.そして,卵膜の軽い抵抗が感じられるところで進入をとめる.このごく軽い卵膜の抵抗感がわかるように慣れることが大切で,それより先へ鉗子をすすめると破水してしまう.この破水の前で,鉗子の進入をとめて,鉗子の先を開く.すると,子宮筋層は横に開大し,その切開・拡大創から卵膜が突出してくる.この突出してきた卵膜の圧力で子宮切開創からの出血を止められ,胎児娩出に不必要なほど創も拡大しない.

郭清の困難な転移リンパ節について

著者: 望月眞人

ページ範囲:P.125 - P.125

 進行期の子宮頸癌,体癌の手術において,系統的骨盤内リンパ節郭清術は欠くべからざる手技である.私のリンパ節郭清術は(1)外腸骨節,(2)外鼠径上節,(3)内鼠径上節,(4)閉鎖節,(5)総腸骨節(外側鎖と内側鎖),(6)内腸骨節,(7)仙骨節,(8)基靱帯節,の順で行い,できるだけ一塊として郭清することにしている.
 最近の広汎全摘術症例のうち,リンパ節転移が陽性であった症例の比率は頸癌がIb期6.2%,IIa期13.8%,IIb期21.1%,III期70%,体癌がII期17.5%,III期55.6%である.また,郭清した骨盤内リンパ節のうち,癌の転移は内腸骨節こ最も多く(44%),ついで閉鎖節(23%),基靱帯節(14%),総腸骨節(11%),外腸骨節(5%)の順である.このように内腸骨節と閉鎖節に転移が多いのであるが,周知のようにこれらリンパ節の場所は骨盤底に近く操作が難しく,また内腸骨や閉鎖動静脈,閉鎖神経などを損傷する危険性がある.特に内腸骨静脈およびその周辺の静脈の損傷は,致命的な出血をきたす危険性を含んでいる.このような理由で,従来はこの部のリンパ節に特に大きい癌転移がある場合,三林術式が行われることが多かったが,この術式もまた相当の危険性を有するものである.

連載 産科外来超音波診断・7

Fetal Biophysical Profile Scoring—その1

著者: 清水卓 ,   伊原由幸

ページ範囲:P.129 - P.134

 超音波診断装置の発展により,胎児の解剖のみならず胎児の行動まで詳細に検索することが可能となってきた.
 とくに,胎児のbiophysical profile scoring(BPS)は,1980年にManningらにより報告されて以来,分娩前の胎児管理試験の1つとして北米から世界へと拡がってきた.

CURRENT CLINIC

産婦人科医における乳房検診—乳癌を見落とさないために

著者: 荻野雅弘

ページ範囲:P.135 - P.142

 戦後の社会構造は急速に変化し産婦人科医にも大きな影響を与えた.多産多死から少産少死へと分娩数は激変し,性器癌は先人の努力により手術や放射線療法による治療成績が向上したこと,啓蒙運動により早期癌の発見頻度が高くなり死亡率は減少した.また内分泌分野では体外受精の成功は不妊症の人々には福音となったが,この社会環境の流れは産婦人科医に斜陽化を招いた.産婦人科医の活性化を考えた故荒井教授は,日本の医学はドイツ医学を学び現にドイツの産婦人科医が乳癌を取り扱っているにもかかわらず何故日本の産婦人科医が取り組まなかったのかの疑問,また乳癌がホルモンの標的臓器で増加の一途を辿る疾患であることから,1986年教室員に国内研鑽さらにドイツ留学を命じられ,種を蒔かれた.その後教室を継がれた森教授の指導により乳腺腫瘍は治療まで行っている.これまで外科医に受診できなかった乳腺の女性の悩みを診て,乳腺診療は産婦人科の活性化の明るい材料につながるものと確信している.

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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