症例
卵巣線維肉腫の1例
著者:
伏木弘1
藤村正樹1
泉陸一1
加藤潔2
所属機関:
1富山医科薬科大学産婦人科
2高岡市民病院産婦人科
ページ範囲:P.895 - P.899
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卵巣線維肉腫はまれな疾患であり,われわれが知り得る文献上より,国外で17例,本邦で4例のみである.好発年齢は40歳以後で,有効な治療法は確立されておらず,予後は非常に不良とされている.今回,われわれは17歳の若年者に発症した卵巣線維肉腫の症例を経験したので報告する.主訴は下腹部痛で,超音波断層法やCTにて充実性卵巣腫瘍を示し,腫瘍マーカーはCA125,CA72-4が陽性であった.FIGO Stageが1a期であり年齢を考慮して左付属器摘除術を施行し,DTIC,VP—16,5—FUによる全身補助化学療法を7クール行った.7か月後にSecond look operationを施行したが再発所見なく,現在術後51か月経過するも健在である.摘出物の病理組織学的検索では,細胞密度がきわめて高い部位と浮腫状で細胞密度の低い部位がみられ,腫瘍細胞は紡錘型や卵円形で,大小不同の円形や楕円形あるいは多形の異型核をもち,核分裂像数は16個/10高倍率視野(HPF)が観察された.さらに特殊染色,免疫組織染色あるいはフローサイトメトリーによる細胞動態の解析などを行った.