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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科49巻8号

1995年08月発行

コラム 新しく始める人へのアドバイス

体外受精治療をめざす方へ

著者: 星和彦1

所属機関: 1福島県立医科大学産科婦人科

ページ範囲:P.954 - P.954

文献概要

 新しい技術が開発されたとき,たとえそれがきわめて専門的なものであっても,次第に普遍的になっていくことは重要である.当初は特殊な機器とテクニックを要した体外受精・胚移植も,近年ではそれほど難しい技術ではなくなってきた.われわれが体外受精を始めた頃は,数回蒸留をくり返した蒸留水で培養液を作製し,試行錯誤をしながらヒトの配偶子に適したマイクロピペットを作り,尿中のLHをおいかけてサージをみつけ,腹腔鏡下に採卵するというのが一般的であった.しかし最近では,そのまま使用できる数多くの培養液が市販されているし,採卵針にしてもETチューブにしても選択するのが困るほど出回っており,これら「体外受精キット」を用意して,GnRHアゴニストとHMG—HCGで卵巣刺激を行えば体外受精が容易に行い得る.驚いたことに先端を熱加工して細くしたガラスピペットまで市販されている.簡便化,普遍化は大事なことであるが,与えられたものだけに頼るのは少し考え物である.受精・初期発生の仕組みを学んだり,成功しなかったときの原因を考えるうえで,毎回とはいわないが一度くらいは自分で調整して培養液を作り,たまには指先に火傷を作りながら自分にあったマイクロピペットを作るということが必要なような気がする.マイクロピペットを一度も作ったことのない者が顕微授精を行うというのは理解できないし,実験動物の卵を扱った経験のない者が即ヒトの卵を操作するということも納得できない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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