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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科5巻1号

1951年01月発行

雑誌目次

論説

自然産道遂娩手術の適應に對する再檢討

著者: 安藤畫一

ページ範囲:P.1 - P.2

緒言
 自然産道からの遂娩手術は,次の3つの適應のもとに行われる。
  1.兒の危險を救うため  2.母の危險を救うため  3.兒體産出を促進するため  この適應に   は(1)または(2)が合併する場合もあるが,   これ等とは無關係で單獨に行われる場合も   少くはない。

綜説

新生兒に於ける骨髓輸血法について

著者: 長谷川敏雄 ,   林基之

ページ範囲:P.3 - P.8

 新生兒に於ける血液注入法は,其の適應症が相當多いに拘らず操作が必ずしも容易でないため,成人の場合の如く汎用されておらぬ。余等は之を遺憾とし,從來知られている方法の二,三を比較檢討した結果骨髓内輸血法が最も簡易且つ確實なことを知つたので,以下主として其の術式を紹介し,併せて實施成績の一端を述べて見たいと思う。

産科手術に於ける麻醉に就いて—アメリカ最近の傾向

著者: 三好敎道

ページ範囲:P.8 - P.12

緒言
 産科手術に於ける麻醉は他領域と異つて迅速に作用し操作容易正確で尚且母兒への惡影響の無いこと等の條件が要るため現在まで種々の麻醉藥麻醉方法が應用されて來たが今日尚眞の理想よりは稍遠い感がして居る。最近米國では局所麻醉法が再認識されて仙骨麻醉Caudal Analgesiaia脊髓麻醉Spinal Anesthesが用いられている。他方我國の現状では未だ尚從來の方法を脱し得ない状態である。

原著

菌核菌(Sclerotonia Libertiana)抽出液の子宮作用に關する研究・1

著者: 糸永健次郞

ページ範囲:P.13 - P.17

緒論
 菌核菌Sclerotinia Libertianaは麥角と同様,眞子嚢菌Euascomycetesに屬する菌種であり,菜種,大豆,人參,大根,馬鈴薯等160餘種の植物に寄生し菌核病を起す。菜種菌核病は,わがくにでは至る所に發生するが,殊に九州地方では平均こ割餘りの被害を起し,菜種の最も恐ろしい病害と見なされている。菌核菌の菌核中に子宮收縮物質が存在する事は,1929年Sokolov,S1)によつて報告された。即ち菌核菌エキスは,ウサギ耳殻血管,カエル下肢血管を擴張し,モルモツト摘出子宮に對して強直性收縮を起し,ウサギ,ネコの摘出腸管に對しては弛緩的に作用し,温血動物の静脈注射に際し血壓は下降し,呼吸は促進され,心運動は抑制されると述べている。わがくににては,1948年,里村2)か該菌を人工的に培養し,子宮收縮物質を抽出した。其の有効成分に關しては,里村,徳富3)の研究によれば,アルカロイド反應陽性麥角アルカロイド反應陽性であるが,鷄冠反應陰性,アドレナリンとの拮抗を認められない點から,麥角アルカロイド,エルゴクミン,エルゴトキシンとは異る物質と考へられている。本實驗に使用した菌核菌抽出液は,菌核菌の菌絲を脱脂糠を原料とした培養基に麹式に培養し,アルコールエキスを作り,鹽酸酸性のもとに五分の一に減壓濃縮し,蛋白等の夾雜物を除去し,中和した液である。

妊娠末期に於ける新生兒の身長及び體重を主とし之等と母體身長,妊娠子宮底の長さ並に最大腹圍との諸種の相關關係並に偏相關に就いて(その1)

著者: 明石政雄

ページ範囲:P.18 - P.22

緒言
 新生兒に關する統計學的觀察は産科學上のみならず,法醫學上極めて重要な事である。而して新生兒の發育状態を判定するには,その身長及び體重が最も主たる標準となる事は云うまでもない。この身長及び體重と母體身長,妊娠子宮底の長さ,並に妊婦の最大腹圍との諸種の關係に關してはその統計學的業績も亦非常に多い。然しながら諸家に依つてはそれらの一部或は數種の關係に就いて報告しその成績も區々である。又これまでの統計學は主として數の統計學であつて例數を澤山集めて物を云わす術として賤められて來た。最近この様な多數例統計學に變つて,少數例統計學が進歩し臨床醫家によつて廣く活用されるようになつて來た。ここに於て著者はこの少數例統計學を活用し妊娠末期に於ける新生兒の身長,體重,母體身長,妊娠子宮底の長さ,妊婦の最大腹圍間に於ける相關關係に就いて追試を試み併せて新生兒の身長及び體重が諸種の要約,例えば在胎日數,男女性,分娩回數,兩親の體格,母體の榮養状態等に依つて影響される事から,母體身長を一定にしてその影響を除外した場合の諸種の關係即ち偏相關を求め,又逆に新生兒の身長,體重を一定にしてその影響を除外した場合の妊婦身長と子宮底の長さ及び最大腹圍との相關關係即ち偏相關を求め聊か見るべき結果を得たので,ここに報告する次第である。

成人子宮圓靱帶の神經分布

著者: 山田千里 ,   和田泰美

ページ範囲:P.22 - P.23

緒言
 著者等の1人(山田)は人胎兒内性器の組織發生學的研究を續けて來たが,たまたま成人圓靱帶の組織像を檢索,特にその神經分布に就いて興味ある所見に接するを得たのでその研究の一端を述べる。本問題は著者等の知る限りでは未だ何人にも研究されなかつたものである。
 材料は非妊時に於ける成人子宮圓靱帶で,手術摘出された子宮から得たものである。從つて本靱帶は子宮附着部に近い部であり,一部は子宮壁にも及んでいる。この部は該靱帶及び子宮の發生學的研究にも有意義な部と思考される。

症例研究

1側肺臟缺損症に就て

著者: 久保良知 ,   木下佐

ページ範囲:P.24 - P.27

 我々は妊娠,分娩經過全く順調であつたにも拘らず娩出後間もなく死亡した新生兒に於て,稀な奇形に屬する一側肺臟缺損を有する1例に遭遇したのでここに報告する。尚本例はその他に兩側拇指三指節症及心臟隔壁缺損を合併している。

妊娠第39週に合併した廻腸に於ける逆行性腸重積症の1例

著者: 小澤五一郞 ,   佐々木壽郞 ,   木村孝

ページ範囲:P.28 - P.29

緒言
 妊娠に合併した腸閉塞の症例は,從來屡々報告せられ比較的稀ではないが,腸重積症の合併は稀である。私等は最近妊娠第39週の6回經産婦に於て,廻腸における逆行性腸重積症を起し,救急手術を行つた1例を經驗したので,興味あるものと考え茲に報告する。

推計學

推計學算法(1)

著者: 宮信一

ページ範囲:P.30 - P.32

 昭和17年頃だつたと思う。ガリ版のテキストで,增山元三郞博士の御講義を數月拜聽したことがあつた。年は流れ,このガリ版のテキストも「小數例の纒め方と實驗計劃の立て方」という御著書となり,我國の研究者への近代統計學の普及導入に大きな役割を果し,研究者の大きな關心を換起させた。そして私共の屬する産婦人科學會でも,「推計學的檢定により,有意性を認めた。」といつた演題が決して耳新しくはなくなつた。これは增山博士其他の先進諸家の功に歸するものであり,事實米國に於ては,F分布表を實用的にまとめられたSnedecor教授の私に與えられた私信によれば,臨床家の實驗の設計は貧弱で,正しく分析されておらないといつた意味のことを述べられていたことから判斷すれば,情況の差異はともかく,臨床家には日本程採用されておらないのではなかろうか。勿論米國で推計學が各分野に亙つて普及していないというのではない。又相對的に推計學的云々の言葉の用いられることの多いであろう我國臨床醫學の領域でも,その普及度に甚しく凹凸のあることを認めねばならない。

檢査室

妊娠診斷法

著者: 古谷博

ページ範囲:P.33 - P.35

緒言
 妊娠は後半期に入れば臨床的な妊娠確徴によつて確診を下し得るが,早期診斷,殊に妊娠8週以内の確診は臨床的には困難な事がある。この樣な場合には補助的な早期診斷法が必要になる。妊娠早期診斷法を生化學的方法,レ線學的方法竝に内分泌學的方法の3種に大別することが出來る。
 生化學的方法は,母體の血液や尿,又は新陳代謝に,妊娠に特有な反應を見ようとするもので,古くから行われているが,必ずしも妊娠に特有ではなく,又適中率も低い。

診療室

産婦人科觸診法の再檢討2題

著者: 安藤畫一

ページ範囲:P.36 - P.36

1.産婦人科腟診の強化法
 觸診,殊に腟診は婦人科に於ける日常檢診法中の主位を占むるものであるが,その檢診的效果は腟及び子宮腟部と腟周園の骨盤結合織とに於ける性状を知り得るに過ぎないとされている。從つてこの不備を補充するために,外診の添加によつて腟腹(双合)診が考按され,尚お進んで視診の擴大強化である,子宮卵管造影法が重要視さるるに至つたのである。然るに今一つ「腟診その者の檢診的效果を強化する法」のあることが,多くの臨牀家から無關心事とされていることは遺憾である。腟診效果を強化するためには,次の2條件を必要とする。
 1.腔診手の指頭を可及的に深く壓入すること 2.腟診上肢の肘を固定することによつて,指   頭の壓込を確保し,以つて指頭の動きを專   ら觸診のみに費すこと

速報

擦過塗抹標本法による子宮癌の發見

著者: 中村實 ,   和田一男

ページ範囲:P.37 - P.38

緒言
 塗抹標本法による子宮癌の斷断法は1929年G.N.Papanicolaouに依つて發表された,その後多數の追試者により有用なる事が認められた。擦過塗抹法はJ.E.Ayreによる改良法である。今や塗抹標本法は子宮癌の早期發見に於て日常産婦人科に於て不可缺の檢査法となりつゝある。私は慶應義塾大學病院産婦人科の入院及び外來患者500人について擦過法を行つた。

蝦蟇腦下垂體部穿刺の排精に及ぼす影響—肝剔除及びAndrogen投與の附帶的意義に就いて

著者: 高木繁夫

ページ範囲:P.38 - P.39

はしがき
 1929 O.M.Wolfの腦下垂體移植による蛙の人工生殖,同年Houssay,Giusti,Lascano-Gonzalezの下垂體剔除後の睾丸變牲の發表に次いで1947年Carlos Galli-Mainniの雄性蝦蟇の精子排出を利用する新妊娠診斷法の發表に到る迄兩棲類の下垂體及び前葉ホと睾丸との關係に就いては幾つかの業績があるが,排精現象に對する實驗動物自體下垂體の役割,就中其の穿刺に依る排精誘發に關する研究は皆無であり,他方排精誘發には下垂體の存否ほ無關係であると主張する者もある(Rugh.1939,Maimimi 1948)。余は下垂體乃至前葉"ホ"に於ける排精誘發機序の一端を解明するため種々な實驗を試み,二,三異味ある成績を得た。

衞生統計

婦人科關係新國際疾病死因分類について

著者: 瀨木三雄

ページ範囲:P.40 - P.40

 1950-59年諸國及び我國にて使用する新「國際疾病傷害及死因統計分類」の中,婦人科關係諸疾患に關する部分をこゝに紹介する。(妊産關係については「産婦人科の世界」2卷3號以下に掲載。)本文に於ては分類の推移を了解するため,關係疾患の1909年以降の變遷を掲げておく,尚各分類項目の内容例示については慈惠醫大樋口教授及び同教室員諸氏によつて我國としての詳細な例示案が作成されたが,本文に於ては紙面の關係上國際基準案として提示されたものを主として紹介するに止める。

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外國文献

著者: 長汐 ,   木下

ページ範囲:P.41 - P.42

黄體の必要性の有無
 妊娠初期の妊娠維持に黄體が必要であると,約50年前Fraekelが言つてから,その事は本當であると思われて來た。其後特にTones等は黄體の必要性は疑問である事を報告した。極く最近Danlapは最終月經第1日より57日目に黄體除去を行い,何らホルモン療法を行う事無しに正常兒を分娩させた。もし妊娠が胎盤形成以前に黄體除去を行つて持續出來るならば,何か他のホルモン分泌源を假定するか,黄體は妊娠繼續に必須のものでないと決定せねばならぬ。したがつて切迫流産患者のホルモン療法にも疑問が出て來る。MelinhoffはAm.J.obst. & Gynec.60:437(1950)に次の1例を報告している。
 患者は白人で1回經産1949年5月27日に左下腹部14に疼痛を訴えて來院した。最終月經は1949年4月21日内診所見は外子宮口は閉鎖,右傾,やゝ大きく柔軟,特に左下腹部に長さ約6cmの抵抗がある。血液及尿檢査異常なし。臨牀診斷は妊娠初期及左側卵巣嚢腫で,一般状態を見てゐたが3日間に次第に左側腹痛が増したので開腹術を行つた。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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