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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科5巻10号

1951年10月発行

雑誌目次

綜説

人工放射性同位元素の醫學的應用

著者: 澤崎千秋 ,   藤原幸郞

ページ範囲:P.383 - P.389

1.同位元素とは
 地球上の如何なる物質も化學的分析により92種の元素より構成されている事が明かにされている。その92種の元素は週期律表の上に大體原子量の大小の順に,嚴密に云えば原子構造上原子核の周圍の電子の數の順序に配列されている。しかし同一の元素は總べて同一の質量を有するかと云えばそうではなく,大多數の元素は少しずつ異つた質量を有する數種のものからなり立つている。これ等は週期律表の上で同一の原子番號を持ち,換言すれば原子核の周圍の電子の數は同じであるが,從つて化學的には同一の性質を有するが,原子核を構成する中性子の數に差があるために質量が異なると考えられ,これ等の原子番號の同一な數種の元素を同位元素(Isotope)と呼んでいる。そして同位元素中には核の安定したもの及び核の不安定なもの乃わち放射性同位元素とがあり,放射性同位元素はα線,β線,γ線,又はその中の1,2種を出して崩壞し,その放射能は次第に減衰して行くものである。

原著

サドル麻醉による無痛分娩(第3報)

著者: 森新太郞

ページ範囲:P.390 - P.395

緒言
 著者は第1報(臨産婦第4巻,第9號,昭25)及第2報(臨婦産に掲載豫定)に於て0.3%Per—caminによるサドル麻醉無痛分娩に就いて述べたが,今迄の經驗より無痛分娩の目的にはサドル麻醉の状態(即ち低位腰椎麻醉)と成つた時が一番安全であり分娩に對する條件も良い事が判つたので,然らば如何にすれば毎回失敗なく確實にサドル麻醉となす事が出來るか。本編では此れを實驗的に研究し同時に之れを無痛分娩に應用して其の成績の判定より藥液の改正を行い,注射方法及び要領を規定した。尚文献的觀察を行い最後に全篇の總論を以つて結んだ。

妊婦血清に於けるコリンエステラーゼ活性値の消長について

著者: 石塚壽男

ページ範囲:P.396 - P.405

緒論
 妊娠時に於ける自律神經の状態に關しては,夙に注目され,幾多の研究業績を觀るが,未だ精細なるものに乏しく,從つて一定の結論に達していない。即ちP.Camargo1)(1916)はAschner氏反應竝にアドレナリン,ピロカルピン其の他の藥物的自律神經機能檢査法によつて,妊婦は自律神經の一般的不安定状應にあり,且つ副交感神經的體勢を示す場合が稍々多いことを明らかにした。本邦では谷本2)(1920)が同じく藥物的檢査法に從い,晩期正常妊婦の大多數がワゴトニー状態であることを證明した。N.Lauros3)(1923)も亦,アドレナリン血壓曲線を以て,妊婦は自律神經系の不安定状應にあり,而もより一層副交感神經的であると述べている。Peyser4)(1924)は之を追試して同樣の結果を得た。同年更にL.Seitz5)は「妊娠時に於ける自律神經系統の態度竝に障碍」と題する綜説に於て,妊婦が交感神經緊張性か,將また副交感神經緊張性であるかは,各個體により,各臟器により,又妊娠時期により一定するものでないと記している。

ペニシリン子宮腔内注入法による從業婦に對する治淋成績

著者: 行村正次郞 ,   出口喜男

ページ範囲:P.405 - P.407

緒論
 産婦人科領域に於ける淋疾の治療はあらゆる角度から既に検討し盡されているが,患者の社會的或は個人的生活條件によつては,治療を必ずしも容易に行い得ないことが多い。
 その一つとして席貸業の從業婦をあげることが出來るであろうが,從業婦の治療に就いていさゝか興味ある經驗をした。

症例研究

脛骨轉移を來した子宮腟部癌の1例

著者: 安武豊志男 ,   木多泰正

ページ範囲:P.408 - P.410

緒言
 發癌素因については今日尚解決されていないが婦人の乳腺及子宮が好適の發癌臟器であり癌が發育蔓延する時は局所組織竝に臟器ばかりでなく近接せる結合織リンパ節血管神經腹膜骨組織内に蔓延侵蝕しそれが次第に擴大するにつれて,局所症状から遂には全身症状を發現するに至る。Offerg—eldは健康なる生體に於ては蛋白融解酵素の如きものが血栓を形成する癌細胞を死滅せしめるが惡液質乃至合併症にて生體の抵抗力が減弱した時は之を死滅せしめる事が出來ず癌細胞は増殖を續行するものであると云いBorstは此の關係を傳染性疾患に於ける細菌と被感染體の個人的素質乃至抗菌力との關係に全く等しいとしたのであるがかゝる状態は既に安藤教授が夙に指摘せられた如く癌腫症(Carcinose)と稱すべきものであつて,恰も母草から四散した種子が好適の土壤に落着發芽するか如く原發釜より遊離したる癌細胞は血行或はリンパ行を介し又は接種傳播をする等全身到る處に好發部位を得て増殖蔓延する。故に發癌好適環境にあれば既に原發臟器を手術的に摘出しても再燃し或は再發し恰ら原發臟器を有する場合と合じく轉移を行う。余等は子宮腟部癌の根治手術後6ヵ月にして骨盤結合織内に扁平上皮癌が再燃した上に脛骨轉移を來した症例を經驗したので報告追加しようと思う。

推計學

推計學算法(Ⅹ)

著者: 宮信一

ページ範囲:P.411 - P.417

§分散系列の齊一性の檢定(Bartlett法)
 先に二群の母平均の差異を検定する時,第一段として二群の母分散が同じと見て良いか否かのF—検定を行い,同一と見て良いことがわかつた後t検定に移つたが,此處では順序が逆になるが幾つかの群の母分散が同一と見て良いか否かの検定を學ぶことにしよう。嚴密に云えば分散分析を行う前に此の方法を行うべきである。

座談會

内分泌學的にみた不妊症と不妊法

著者: 安藤晴弘 ,   織田明 ,   藤井久四郞 ,   坂倉啓夫 ,   早津淸二 ,   志田圭三 ,   小林隆 ,   山口哲 ,   松本淸一

ページ範囲:P.418 - P.432

 藤井 今日は『内分泌學的見地からながめた不妊症と不妊法』というテーマで意見をかわすことにいたします。不妊症といえば,いわゆる性ホルモンの全部の知見を集中すべき範圍の廣過ぎる問題になりますので,詳しく盡すわけにも行きませんから,その中から主なものを拾つて論じていただき,またホルモンによる不妊法も,時節柄興味を引く問題なので,これについても討論したいと思います。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻4号(2015年4月発行)

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